ORANGE RANGE、多彩なタイアップ曲と現在のモード詰め込んだ4年ぶりフルアルバム 全国ツアーへの意気込みも
ORANGE RANGEからニューアルバム『Double Circle』が届けられた。約4年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作は、「キリサイテ 風」(ドラマ『脚本芸人』主題歌)、“パンツ” をテーマにしたサマーチューン「Pantyna feat.ソイソース」など2022年に制作された楽曲によるDisc1、そして、前作『ELEVEN PIECE』以降に配信リリースされた楽曲によるDisc2の2枚組(各7曲収録)。2021年の結成20周年を経た、ORANGE RANGEの新たな進化と変わらない“らしさ”がバランスよく感じられる作品となっている。リアルサウンドでは、NAOTO、RYOにインタビュー。本作『Double Circle』の制作についてじっくりと語ってもらった。(森朋之)
コロナ期間中における研究の成果
ーー約4年ぶりのニューアルバム『Double Circle』がリリースされましたが、まずは前作『ELEVEN PIECE』以降の活動について聞かせてもらえますか?
RYO:予定していたツアーが2020年2月に止まって。最初は延期だったんですけど、6月くらいから中止になりはじめて、夏以降は制作モードに切り替えたんですよね。リーダー(NAOTO)にループを作ってもらって、それに歌詞を乗せて。練習というか、遊びみたいなところもあったんだけど、音から離れないような状態を保ちたかったんですよ。何曲かYouTubeにアップしたり、とにかく刺激をなくしたくなくて。
ーービートメイカーとラッパーみたいな感じですね。
NAOTO:そうですね。かなりラフな感じでやってました。
RYO:歌を録るときだけ、一人ずつリーダーの家に行って。
NAOTO:僕だけそれぞれと会ってました(笑)。
RYO:人が集まるのが難しかったですからね。あとは月に1回くらいリモートでミーティングしてました。コロナがどうなるかもまったくわからなかったし、みんなで次に何をやるか話すことで、メンタルを保っていたというか。そうしないと不安に押しつぶされそうだったので。
NAOTO:僕は意外と早い段階で切り替えてました。以前からやろうと思っていたことがあったので、それに手をつけて。
ーー何をやってたんですか?
NAOTO:シンセサイザーを触ってました。その前から使いこなしてるつもりではあったんですけど、もっと研究して、使い倒してみたくて。曲作りではなく、楽器のポテンシャルを引き出すという感じですね。1日中シンセをいじって、「こんなこともできるな」とか、いろいろ見つけて。一つ終わると、次のシンセ……という感じで片っ端からやってました。コロナ禍は大変でしたけど、いい機会でしたね。曲作りがはじまると、そういうことはできないので。「コロナ禍で料理をはじめた」とか「釣りにハマった」というのと同じなんですけどね、感覚としては。
ーー研究の成果は、その後の制作にも活かせてますか?
NAOTO:活かせてると思いたいです(笑)。あれだけ時間をかけたので。
RYO:リーダーのトラックはもともとすごいですからね。制作のスピードも速いし、常に俺たちの考える範疇を遥かに超えていて。ついていくのが精いっぱいっていうのは、以前からずっと変わらないです。今回のアルバムの制作もおもしろかったですね。たとえば「Pantyna feat.ソイソース」をヘッドフォンで聴くと、低音の広がりがすごくあって。あれも研究の成果?
NAOTO:どちらかというとミックスの成果かな。時間があったから、何パターンか作って、聴き比べることができたんですよ。3バージョンくらい作って「この路線かな」と決めて、そっちの方向でさらに作り直したり。遊びというか実験というか、ミックスでもかなりいろいろやれて。楽曲のミックスは以前からやってるんですけど、そこを見つめ直せたという意味でも、いい機会だったと思います。
ーーRYOさんはコロナ期間中、どんなことをやってました?
RYO:ラップに関しては、3連(符)ですね。ちょうどコロナで学校が休みになってた時期に、息子がYouTubeでフリースタイルラップの動画を見ていて。後ろから覗いたら、みんな3連のラップだったんですよ。それがきっかけで、自分も3連で日本語を入れる練習をはじめて。あと、ピアノもはじめました。ライブができるようになったときに、1曲でいいからピアノを弾いてみたくて。お客さんが「成長して戻ってきたな」と思ってくれるようなことをしたかったんですよね。
ーーなるほど。特に3連符や6連符のラップの話は興味深いです。今の主流ですからね。
RYO:自分たちももうちょっと現代に寄せてみたくて(笑)。ORANGE RANGE(の音楽性)は幅が広いから、すべてを深めるまではいかなくても、ある程度は聴いてる人が「こういうこともできるんだ!?」とか「このあたりのジャンルもわかってるんだな」みたいに思ってほしくて。
NAOTO:うん。ラップが変化すると、音にも影響がありますね。
ーーNAOTOさんもトレンドはチェックしてますか?
NAOTO:してます。海に遊びに行くときは、軍(在日米軍)のTOP40系のラジオを聴いていて。いい曲があると、サブスクでチェックしてます。ヒップホップ、R&Bが多いですけど、今もカントリーが強いんですよ。
ーーでは、ニューアルバム『Double Circle』について。2022年に制作した楽曲を収めたDisc1、前作『ELEVEN PIECE』以降に発表した楽曲をまとめたDisc2の2枚組ですが、2枚に分けたのはどうしてなんですか?
NAOTO:Disc1はキャラが立っている曲が多くて、Disc2はわかりやすくてポップな曲が中心なんですけど、両方を混ぜてしまうと浮くか埋もれるか、とにかくあまり良い影響がなさそうだなと思って。あと、CDという形でリリースできる状況がいつまで続くかわからないじゃないですか。今回もせっかくCDで出せるので、2枚にして“モノ”として面白いものにしたかったんですよね。
RYO:自分らはCD世代なので、CDを残したい気持ちはすごく強いんですけどね。でも、レコードからCDに変わったように、これも時代の変化なのかなと。さみしいですけどね。
NAOTO:うん。2枚組にしたことで『Double Circle』というタイトルにもつながって。
ーー“ダブル円盤”ですからね。
NAOTO:漢字は違いますけど、“縁”という意味もあるんですよ。コロナ禍になってから、人と人の縁だったり、お客さんとバンドの縁をさらに感じるようになって。あとは20周年を超えて、そろそろ“円”熟味も出てきたのかなとか。20年も“〇”が二つですからね。ダジャレみたいですけど(笑)。
ーー(笑)。まずDisc2のことから聞きたいんですけど、アニメやバラエティ番組などタイアップ曲が中心。タイアップがある場合、オファーがあってから制作することが多いんですか?
NAOTO:そうですね。曲によっても違いますが、ワンコーラス分を2〜3曲くらい作って、先方に選んでもらったものをブラッシュアップしていくことが多いです。どんな曲がいいかは、あらかじめ聞きますね。「なんでもいいですよ」と言われて、曲を作った後から「やっぱりこうしてください」みたいになるのが嫌なので(笑)。
ーーしかもタイアップの幅が広いですよね。(健康総合企業の)タニタとコラボした「HEALTH」は、ステイホーム生活が続く今の時期に“ゆるく適当に運動ができる曲”として制作されたそうですが、このテーマに沿った曲を作れるバンドはORANGE RANGEだけじゃないかなと……。
NAOTO:タニタの企業イメージを崩してしまうんじゃないかって、ちょっと心配だったんですけどね(笑)。でも、社長がすごく個性的な方で。
RYO:こっち側の人でした(笑)。
NAOTO:面白かったですね。真面目なフィールドでユーモアのある曲を作るのは楽しいので。ミスマッチというか、イレギュラーというか。
RYO:そのほうが刺激が強いよね。
ーー「ラビリンス」はTVアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』オープニングテーマ、「あの世のANTHEM 〜天国と地獄〜」は同じアニメの挿入歌。この2曲もアニメの世界観に沿っているんですよね?
NAOTO:はい。アニメ自体がめちゃくちゃ面白かったんですよ。ブッ飛んでいるし、支離滅裂で「これ、大丈夫かな?」と思うくらい大好きで。
RYO:ハハハ。
NAOTO:なので2曲ともアニメの世界観にめちゃくちゃ寄り添って作りました。楽しかったですね。
ーー10代の頃にORANGE RANGEを聴いていた人たちが大人になって、「ORANGE RANGEにお願いしたい!」というケースが増えてるのかもしれません。
NAOTO:確かにそういうことも多いですね。ディレクターやプロデューサーみたいな立場の人に「ずっと聴いてました」と言われたり。
RYO:映画監督とかね。
NAOTO:そうそう。アルバムには入ってないんですけど、『ミラクルシティコザ』という映画の主題歌(「エバーグリーン」)をやらせてもらって。平一紘監督は、中学の後輩なんですよ。
ーーNHK『みんなのうた』でオンエアされた「Family」は家族愛をテーマにした温かい曲。これもORANGE RANGEの表現の一つですよね。
RYO:そういう曲はHIROKIが得意なんですよ。
NAOTO:うん。先方が送ってくれた資料もしっかり読み込むし、求めているものに応えつつ、ORANGE RANGEらしい歌詞を書いてくれて。
RYO:それぞれ得意なところが違いますからね。ORANGE RANGEはデビュー当初からいろんなタイアップの話をもらってきたバンドで。そこで広がったところもあるし、(タイアップに対して)ネガティブな考えはまったくないです。最初の頃はだいぶ苦労しましたけど(笑)。
NAOTO:それこそ後から「ここを直してください」って言われたり(笑)。
RYO:今は「たぶんこういうことを求められてるんだな」とか、「この段階では作り込まず、ある程度ハンドルを切れるようにしておこう」みたいなこともわかってきて。要領が良くなったというか。
NAOTO:ノウハウがわかってきたよね。いろんなキャラの曲が作れるのは、強みだと思います。