Candy Boy、表情豊かな演技と歌声で描いた温かく優しい物語 結成7周年公演「カヌレに恋した王様」レポート
Candy Boy7周年公演が9月10、11日に行われた。普段はカフェで行われる定期公演「Candy Boy CAFE」を中心に、歌や踊り、芝居を届けているCandy Boy。この日は結成7周年を記念する公演ということで、普段と異なる会場となるClub eX品川プリンスホテルにて、とある小国・アンドレ王国を舞台にした壮大な物語「カヌレに恋した王様」を上演した。
舞台となるのは金を生み出すロバ「ルチル」を頼りに隣国と渡り合ってきたアンドレ王国。その新たな国王フランソワ(奥谷知弘)が物語の中心人物だ。愛妻、ジョゼフィーヌを大戦によって亡くした彼にとっての癒しのひとときは、幼馴染である料理人ピノ(福留瞬)との昔話と彼の作るカヌレ。亡き妻を忘れられない国王に対し、臣下たちや弟のフレール(前田大翔)は王妃を新たに迎えようと姫を集め舞踏会を開くが、フランソワは乗り気ではない様子。だがとある肖像画を目にしたフランソワは考えを変え、ただちにその肖像画に描かれる女性を連れてくるよう命じる。しかし侍従長のアルマン(安孫子宏輔)はその女性がすでに亡くなっていることを臣下のオネット(山本大智)とマントゥール(川島寛隆)に明かす。誰もそのことをフランソワには言い出せないまま、国王にその女性を諦めてもらおうと無理難題を重ねるが、王は宮廷に仕える人物の協力でそれを次々に突破していく。いよいよ国の富を背負うルチルの毛皮を巡る難題になったとき、物語は大きく展開する。愛する者を失う悲しみ、残された者の痛み、そして友情や家族愛を描いたファンタジー作品だ。
Candy Boyの7人はそれぞれ魅力的なキャラクターを演じた。物語は解決に向かう後半まで優しい嘘とそれによる悲しいすれ違いを連鎖させていくが、山本演じる正直者の臣下オネットと、川島演じるその同僚で嘘つきのマントゥールの2人は物語のテーマを象徴する存在でもあった。「嘘はよくない」「優しい嘘はついてもいい」。2人のリズムのいい掛け合いにはユーモアが溢れ、ステージに笑いをもたらした。そんな2人の上司・侍従長のアルマンを演じたのは安孫子。国王には一切逆らわない侍従としての完璧な態度を、安孫子が隙のない板についた振舞いで表現した。前田演じるフレールは、兄であるフランソワに頼れない寂しさや、のちに王代理となるも他国に相手にされない悔しさを募らせる努力家の王子。フレールとアルマンは主従関係にあるものの、アルマンがフレールを叱り、励まし、慰める場面は家族愛を色濃く映し出していた。
そして宮廷神父を始め、風水師、雪の妖精、道化師など宮廷のあらゆる人物をすべて演じた宮城光輝の活躍も欠かせない。出番が短いながら鮮烈な印象を与える役も多かったが、持ち前の対応力で幅広い表情と声色、キャラクターを使い分けながら多役を演じた。
そして物語を進める重要人物、料理人のピノは福留が演じた。ピノはのちにルチルを毛皮にした大罪人となり逃亡することとなるが、その裏で国王を想う苦悩と葛藤、覚悟といった多彩な表情と声色は見る者に訴えかけるものがあった。孤独の中、6人のコーラスを背に回想するように歌った「星降る想い」は寂しさや優しさ、強さのないまぜになった声色で1人メインボーカルを務めた。
新たに国を支えていくフランソワを演じた奥谷も、表情豊かな演技を見せた。序盤は王として威厳ある表情と通る声で堂々たる姿を、そして中盤では憔悴しきった弱弱しい姿と両極を見せ、フランソワの強さと弱さを表現していた。
彼らの演技力はもちろんのこと、物語の中に差し込まれる楽曲パフォーマンスもストーリーに合った選曲で既存曲の新たな魅力を引き出した。
再婚に前向きになった王への喜びとともに弾むように歌われたのは「Oh!シンデレラ」。バレエモチーフの振りも多いCandy Boyのダンスだが、そんな優雅な身のこなしが今回の宮廷を舞台にした物語の雰囲気にぴったりだ。
王の探す女性が実在しないと知り、諦めてもらおうと臣下たちが無理難題を頼むシーンでも数々の楽曲を披露。世界中の花束を集めドレスを作る場面では「この気持ち花束に込めて」を華やかに披露し、雪のドレスを求めるシーンでは「雪のフェアリー」を雪の手触りを彷彿とさせる柔らかい振りとともに、星のドレスの場面では「冬空ラプソディー」を披露。それぞれのモチーフにぴったりな選曲は、聴く者に花畑や一面の雪、星降る夜を想起させ、物語へのさらなる没入に導いた。