ハロー!プロジェクトOGファンクラブ「M-line club」 アイドル卒業後の活躍も見守る仕組み作り
高橋愛や道重さゆみ、鈴木愛理などのハロー!プロジェクトのグループを卒業したOGが所属するファンクラブ「M-line club」をご存じだろうか。「M-line club」は今、現役とOGの歌唱やパフォーマンスのコラボレーションなど、さまざまな垣根を超える活動を活発化させて注目を集めている。
女性アイドルグループを卒業したメンバーで構成されるファンクラブの設立は珍しい取り組みだ。本稿では、女性アイドルはセカンドキャリアを築く難しさもあると言われる中で、老舗アイドル事務所のアップフロントグループが「M-line club」を持つ意義を考えてみたいと思う。
OG全体でファンクラブを形成する「M-line Club」
「M-line club」はハロー!プロジェクトの各グループで活躍したOGのファンクラブで、2009年に設立された。中澤裕子や矢口真里、高橋愛、田中れいな、道重さゆみといったモーニング娘。のOGや元Berryz工房の夏焼雅、元℃-uteの鈴木愛理、元Juice=Juiceの宮本佳林などが所属し、最近ではモーニング娘。を卒業した佐藤優樹の加入が話題となった。
活動としては各OGのソロ活動に加え、会員向けの情報発信やグッズ販売、ファンクラブ限定イベントなどのほか、2021年からはYouTubeの公式番組『M-line music』やコンサートツアー『M-line Special』なども行っている。最近は特に現役とのコラボやOG同士のコラボも活発で、8月に公開されたYouTube動画「COVERS -One on One-」では元モーニング娘。の佐藤優樹と田中れいなの歌唱が話題となった。
冒頭にも書いたが、このようなOGに特化したファンクラブを持つ事務所は珍しい。AKB48グループの場合は卒業後、各個人が所属する事務所での活動継続や事務所を移籍することが多いほか、乃木坂46は卒業後も「乃木坂46合同会社」に継続して所属するもののファンクラブは各個人で形成しており、OG全体でファンクラブ形成を行い活動する事務所はほとんど例がないと言っていい。
「M-line Club」が示す新しいアイドルのセカンドキャリア
アップフロントがこのようなファンクラブの形態をつくったのは、やはりハロー!プロジェクトの元総合プロデューサー・つんく♂の考え方も影響しているのではないだろうか。つんく♂はアイドルをプロデュースするにあたり、各メンバーの「今」だけでなく、「人生そのもの」を大切にしている様子が随所で見られる。
例えば、元アンジュルムの和田彩花も現役時代のブログの中に、このような言葉を記している。
「前からつんく♂さんがよく言ってた言葉を思い出します!ハロー!プロジェクトでデビューして踊って歌って。それがゴールではない。と。ハローを卒業してからどうするのか。その先を考えていくことも大事だとおっしゃっていました」(※1)
女性アイドルのセカンドキャリア形成はまだ過渡期にあるからこそ、元AKB48の島田晴香や元SDN48の大木亜希子がインタビューや著書で語っているように(※2、3、4)、さまざまな苦労や難しさが伴っている現状がある。だからこそ、卒業後に学業や別の職業への転換という道だけでなく、事務所として芸能活動を継続する選択肢を用意しているのは、業界の今後にも影響を与えうる意義のある取り組みだと言える。