中国で日本のアニソンはどう親しまれている? ビリビリ動画インフルエンサー2名に聞く
もうひとり、日本のアニソンのカバー動画などを投稿しているUP主に話を聞いた。約64万人のファンを抱える櫻萍Appleだ。もともと、浜崎あゆみの大ファンで、自分でも日本語の歌を歌いたいと、日本語歌詞のオリジナル楽曲をリリースするなど、歌手としても活動している。すでにアルバムやシングルもリリースしている。ビリビリ動画では主に、日本語でカバーした日本のアニソンのライブ動画を多数投稿。ソロライブでの動画もあれば、路上ライブの動画もある。
「日本のアニソンには、それまで聴いていたJ-POPとはまた違う勢いを感じます」。初めて聴いたアニソンは、藍井エイルが歌うアニメ『ソードアート・オンライン』 フェアリィ・ダンス編オープニングテーマ「INNOCENCE」とアニメ『Fate/Zero』エンディングテーマ「MEMORIA」だ。ライブで日本のアニソンを歌うと、ファンはペンライトを持って曲に合わせてのってくれる。そのファンとのインタラクティブなやりとりがあるのも、アニソンならではでいいと語る。
櫻萍Appleもまた、日本の関係者との交流がある。音楽ユニット・fripSideのメンバーであり、音楽プロデューサーでもある八木沼悟志とは、いまでは友人のような関係性で繋がっている。
ビリビリ動画がスタートして、すでに10年以上。いまでは、ビリビリ動画だけでなくTikTok中国版の「抖音」など、中国には動画共有プラットフォームが複数あり、ユーザーも増えている。各プラットフォームを見ても、アニソンに関する動画をあげているユーザーやインフルエンサーは多い印象だ。
10年ほど前からビリビリ動画でアニソンを歌い、動画を発信してきた上述の祈Inoryは、この10年の変化に対し、こう語ってくれた。
「10年前は、いまのように、“バズってほしい”とか“ファンを増やしたい”ということに比重を置いて発信する人は少なかったと思います。純粋に“みんなにシェアしたい”、“いいね”って共感してくれる人が一人でもいたらそれで嬉しかったんです。私自身は、いまでもその気持ちは変わりません」
今回、もうひとり話を聞いた日本のアニソンファンの大学生の一言が印象に残っている。「中国はここ数年、あらゆる物事がハイスピードで進み、目まぐるしい日常になっています。心の拠り所がないというか。そんななか、僕らが子供のころに聴いていた日本のアニソンを聞くと、昔をとても懐かしく感じるんです」
目まぐるしく変化を繰り返す中国では、日本のアニソンが若者の青春であり、ゆったりとした時間の流れの中で過ごした子供時代の思い出の象徴になっていた。中国では、国を越えて、エンターテインメントを越えて、心の拠り所になっている日本のアニソンの姿も垣間見られた。