GOOD ON THE REEL、史上最大のピンチに生まれた音楽への挑戦心 嘘のない言葉でバンドの現状綴った『P.S. モノローグ』

「伊丸岡がいない状態でツアーのは未知な部分が多い」

ーー今回のアルバム、言葉のふり幅の広さを感じる歌詞が多いです。千野さん、ヤバいわって(笑)。

千野:ありがとうございます(笑)。「ファンファーレ」に限らずなんですけど、曲の中で、言葉の配置のバランスはすごく考えますね。サビ頭はわかりやすい方がいいなと思ったり。〈光のパイプオルガン〉とかは、奇跡的にメロディにのって出て来た言葉ですね。宮沢賢治のある作品にも出てくるフレーズで、その中で描かれていた光景が、曲とメロディを聴いていて、僕の中にフラッシュバックしたみたいに浮かんだんです。

ーー次は、5曲目の「シネマスコープ」について。さっきおっしゃっていた、シティポップみたいな曲は、この曲を指すのかなと思いました。これはサウンド的にはどういうものを目指したんですか?

岡﨑:ミッドテンポで、かつ跳ねたビート。ちょっとR&Bみたいな要素があってもいいかなと思って作った曲です。

ーーR&Bといっても、90年代後半~2000年代頭以降のブラックコンテンポラリーが入って、一段落した以降ですかね。オーセンティックな古いR&Bって意味ではないですよね。

岡﨑:そうですね、古い感じじゃない。僕の意識の中では、日本人でいうと宇多田ヒカルさんとかが出て来た2000年代以降のサウンドを元にしてると思う。好きで聴いていたものだから、ほとんど無意識で出てくるところでもあったり。で、この曲は、ギターのアレンジでは、オクターブを入れて、今風なアプローチをしたりして作りましたね。

ーートレンドの音色やアプローチを取り入れる際、自分はどんどん取り入れていこうってタイプだと思う?

岡﨑:いや……むしろ慎重だと思いますね。あまり率先して入れたいと思うタイプではない。ただ、この曲の場合、僕が元々シティポップが好きだったのもあり、自分的には自然にこういうことをやってみた感じなんですよね。シンセの音ひとつとっても、やっぱりこう……時代感がすごく出ます。だから、音色は結構こだわりましたね。この曲はエレピを入れてるんですけど、その音色も6種類くらい自分で試して、それをエンジニアの方と相談して、本番はエレピにさらにそこにエフェクトをかけて、揺らしているんですよね。ぶわっーって。その方が生感が出て、面白くなるんですよね。さっきも同じこと言いましたけど、生っぽさが出る。

ーー今回の作品の中で、サウンドメイキングという視点からみると、シンセサイザーが大切な要素になっていると思います?

岡﨑:そうですね。なっていると思いますし、上ものはやっぱりバリエーションが出た方が、音楽的に面白いと思うんですよ。僕はギターを弾きますけど、まったく弾かない曲があってもいいんじゃない?という考えなので、自分の中でいいなと思った音色を重ねていく感じ。この曲もギターより先にエレピがあったんです。それでそこにアコギをつけていった。

高橋:僕、「シネマスコープ」好きなんですよ。最初に聴いたときからすごく好きだった。こういうリズムがはねてる感じが、結構好きで。デモの段階でもう完成されていたんです。ドラムもほぼ決まっていて。早く叩きたいみたいな気持ちになりました。

ーーでは、今回のアルバムの中で、レコーディングでドラムを叩いて、早くライブで叩きたいと思った曲は?

高橋:甲乙つけがたいですが……「WonderWant」ですかね。黙々とフロアとタムとキックを叩き続けて、最後に爆発する曲なんで。ロックらしいので、早くライブで叩きたいです。

ーー「シネマスコープ」の歌詞は岡﨑さんですよね。〈カーテンを開けず〉というフレーズは、千野さん作詞の「ファンファーレ」にも似たような一節が出てきますが、ここは図らずして、こうなった?

千野:図らずしてですね。そこは本当に……面白いですよね。

ーー「当たり前」って曲について。詞曲が千野さん。

千野:これは登場人物としては、1番と2番が全然違う人なんです。1番は学生の女の子。で、自分が起きているのにお父さんはいびきをかいている。自分は当たり前だと思って起きているけど、お父さんにとっては当たり前じゃない。2番は、男子学生ですね。デートで彼女に会ってカフェに行って、そしたら愚痴ばっかり聞くことになって。なんで休日にデートして愚痴ばっかり聞かなくちゃいけないんだろう、と。でも、こういう風に一緒にいれることって、当たり前じゃないかもしれない、だから幸せなのかも……みたいな。で、サビは1番と2番、共通させてまとめたんです。

ーー1番と2番で主人公変えた理由は?

千野:すべての人に当てはまるように、いろんな人について書いてみたいなと思って。だからこの曲はもう……何番までも書けます(笑)。何人出しても書けるので。

ーー“当たり前”という言葉をここまで使ってみようと思ったのは?

千野:言葉遊びで思い付いて。この曲はわりと前からデモがあったんですよ。その時から〈当たり前の前の〉は使っていました。言葉遊びと、あと「当たり」と「前」ってわけると面白いなと。だから「当たり前に」なる前の「当たり」とも言えない生活っていうイメージで浮かんで。でも、はずれなんて誰にも言って欲しくない。そういう思いがあって書き始めた曲ですね。

ーーこの曲、例えばライブで歌うとき、大変じゃないですか? 例えば「てにをは」を覚えるのだけでも大変そう。

千野:めっちゃくちゃ覚えずらいです。覚えずらいのに、そういう歌詞を書いちゃうんです、僕は(笑)。

ーー書きたいんですよね、そういう言葉を。文字として見て面白さが出てくるというか。

千野:書きながら、ちょっと言い回しを変えたり。変えたくなるんですよ。で、ライブで歌う時に必ず後悔するんですよね。“あぁ「てにをは」揃えておけばよかったな”って。次「は」だっけ「に」だっけ、「が」だっけみたいな(笑)。

ーーでは最後に。9月4日からスタートする全国ツアー『HAVE A ”GOOD" NIGHT vol.112-119 ~P.S. ダイアローグ~』について、今の気持ちを教えてください。

千野:今回『P.S. モノローグ』は、今までのGOOD ON THE REELではあまり前面に出て来ていない部分が、サウンドにも歌詞にも出てるアルバムになりました。伊丸岡がいない状態でレコーディングした作品を持って、伊丸岡がいない状態でツアーを回るんで、僕らとしても未知な部分が多いんですけど、今回のアルバムがすごく僕ら自身も大好きで、このバラエティ豊かな楽曲をライブでどう表現できるのか、どう伝わるのか……今から楽しみなんですね。楽曲で会場の皆さんと対話できるような……そんなツアーにしたいと思ってます。

『P.S. モノローグ』

■リリース情報
5th オリジナル・フルアルバム『P.S. モノローグ』(読み:ピーエス モノローグ)
2022年8月31日(水) 発売

【UINVERSAL MUSIC STORE限定盤】2CD
¥4,950(税込)
DISC2:結成15周年記念ライブ『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.100 ~十五夜のうさぎ、何見て跳ねる?~』のLIVE音源を11曲収録

【通常盤】1CD  POCE-12186 ¥3,000(税抜)/¥3,300(税込) 

<収録曲>
01. WonderWant 作詞・作曲  岡﨑広平
02. ファンファーレ   作詞 千野隆尋 / 作曲 宇佐美友啓
03. ナツメロ       作詞・作曲  岡﨑広平
04. Dreamer    作詞・作曲  千野隆尋    
05. シネマスコープ    作詞・作曲  岡﨑広平 
06. 同じ空の下で     作詞・作曲  千野隆尋 
07. Fade out       作詞・作曲  岡﨑広平 
08. 当たり前       作詞・作曲  千野隆尋
09. ダンス        作詞・作曲  千野隆尋
10. 0            作詞 千野隆尋 / 作曲 岡﨑広平

【UINVERSAL MUSIC STORE限定盤】 DISC 2 LIVE CD
『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.100 ~十五夜のうさぎ、何見て跳ねる?〜』
Live at USEN STUDIO COAST 10.16.2021

01.砂漠
02.交換日記
03.YOU & I
04.素晴らしき今日の始まり
05.サーチライト
06.灯火
07.月祭
08.ハッピーエンド
09.私へ
10.手と手
11.より

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