声優、俳優、アーティスト……宮野真守が多方面で活躍できる理由とは? それぞれに共通するスタンス
そのキャラクターがどういう人物なのか、背景まで汲み取っていくような解像度の高い役作りを思わせる宮野の声優としての演技だが、そのスタンスは音楽活動にも通じているように感じられる。これまで様々な楽曲を幅広く歌いこなしており、最新シングルの「EVERLASTING」はミドルバラードの曲調に乗せて伸び伸びとふくよかな歌声を聴かせ、「ジャーニー」では突き抜けるような高音を響かせながら軽やかにスタイリッシュな歌声を紡いだ。存在感のある華やかな歌声は楽曲によって表情を変え、楽曲で描かれる人物に入り込むかのような説得力を感じさせる。特に背中を押すような歌詞を歌う「EVERLASTING」では、〈暗いこの世界でも 諦めないで〉〈涙も、痛みも 僕が引き受けるから〉といった歌詞で、歌としての存在を越えて宮野自身から語りかけられるような説得力が感じられる。
そのような表現力は、役柄に没入して言葉を発する声優の演技と通じる部分もあるのではないだろうか。ふくよかで伸びのいい歌声はもちろんだが、丁寧で説得力のある表現もリスナーを惹きつける要素なのだろう。
また、ダンスパフォーマンスを取り入れたライブの評価も高い。華やかなステージ上での振る舞いは、俳優としての演技経験に裏打ちされたものでもある。「透明」のMVに見られるような、自然な動きにも関わらず存在感のある佇まいや細やかな表現からもそれを感じ取ることができる。演技経験をさらに歌手としてブラッシュアップしたのが、宮野のライブや映像での振る舞いなのではないだろうか。
このように、俳優と声優、そして歌手活動で培ったものが相互に強く影響し合っていることによる実力の高さが、彼の織り成す表現の魅力であると考えられる。今後も、星野源とともに声優を務める、12月18日発売の『女の園の星』単行本第3巻Blu-ray Disc付き特装版に収録されるアニメ作品のほか、11月には7thアルバムのリリース、そしてツアーの開催も控えている。多忙を極める宮野だが、それらの経験も他の活動に影響しあいながら、今後もさらに緻密で説得力のある表現を作り出していくことだろう。
(※1)https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_627dbd62e4b0eb0f070fcc11