サラ・オレイン、10周年を記念したステージで名カバー披露 歌とバイオリンに乗せて届けられた安らかな時間

サラ・オレイン、10周年記念ライブレポ

 第2部は、Queenの代表曲「Bohemian Rhapsody」からスタート。ループマシンを駆使して自分の声をリアルタイムで重ね、その多重コーラスをバックに朗々と歌い上げたかと思えば、エレクトリックバイオリンを弓でかき鳴らしブライアン・メイばりのソロを披露した。

 「10年の月日を経て、デビューアルバムからは圧倒的に違う力強さを新作『One』では出したいと思っていました。『Bohemian Rhapsody』の歌い出し、『これは現実なのか、ファンタジーなのか?』という哲学的な問いは、このアルバムのテーマでもあります。今は本当に生きづらい世の中で、人々は音楽やゲーム、映画など心を休めるための『安全な場所=ファンタジー』が求められているのだと思う」と、第1部でも話したことを繰り返し強調した。続く「Speechless」はディズニー映画『アラジン』の実写版挿入歌。この曲を選んだことについて、自身の信念を交えながら彼女はこう語る。

「ディズニープリンセスも、今は力強い女性像として描かれるようになってきました。昔のように白馬の王子様をただ待っているのではなく自立した存在だし、肌の色も様々。それを見た世界中の女の子たちが『希望』を抱いているのだと思います。今、アメリカでは中絶問題や人権問題が大きな話題になっているけど、同じ女性として他人事には思えないんです。たった一人しかいない、唯一無二の存在である人間同士が支え合うこと、それが大事なんじゃないかと思っています」

 フィギュアスケート・アイスショーのテーマ曲「Fantasy On Ice」を経て、映画『フィフスエレメント』の挿入歌「Diva Dance」や荒井由実の代表曲「ひこうき雲」、そしてスティーヴン・スピルバーグ監督作『シンドラーのリスト』のテーマ曲など、アルバム『One』に収録されたカバー曲を披露。ステージ後方のスクリーンには、オスカー・シンドラーが労働者として雇っていたユダヤ人がかつて暮らしていたゲットーのあった、ポーランドの古都クラクフの映像が流れ、サラ自身も赤い衣装に着替えるなど(映画の中で、赤いワンピースを着た少女が印象的に描かれていた)、『シンドラーのリスト』に対する彼女の並々ならぬ想いをオマージュと共に伝えていた。

 大島渚の監督作 『戦場のメリー・クリスマス』より、坂本龍一が作曲した「Merry Christmas Mr. Lawrence」は、英国のメゾソプラノ歌手キャサリン・ジェンキンスもメロディ付きで歌ったバージョンである「Merry Christmas Mr. Lawrence (Somewhere Far Away)」をカバー。遠い戦地で命を賭す人々への思いを歌った歌詞を、情感を込めて歌い上げた。

 さらに、彼女のライブでは恒例の「My Way」を歌って本編は終了し、アンコールでは全世界で大ヒットを記録している人気ゲーム『モンスターハンターライズ:サンブレイク』のエンディングテーマ「SUNBREAK」を世界初披露、そしてアルバム『One』でもラストを飾る歌劇 《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ(Nessun Dorma)」を朗々と歌い上げ、スタンディングオベーションでフロアが沸き立つなか、この日のコンサートは幕を閉じた。

 「10周年を迎え、11年目からはまた新たな表現をしていきたいと思いますし、音楽のジャンルとしても、また違ったことをやっていきたいと思います」とアンコールで挨拶したサラ。混迷する世界に『安心できる場所』を作りたいと話していた彼女の歌声は、これからも多くの人たちの心を癒し続けるだろう。

※1:https://realsound.jp/2022/05/post-1028146.html

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