神はサイコロを振らない、全国ツアーを完走して芽生えたファンに対する思い 「みんなで一緒に歌える未来がきたら泣いてしまう」

神はサイコロを振らないインタビュー

『アオアシ』と自分自身を重ね合わせて制作した新曲「カラー・リリィの恋文」

──さて、そのツアーで披露した新曲「カラー・リリィの恋文」は、TVアニメ『アオアシ』の第2クールのエンディングテーマとして書き下ろされたものです。今回オファーを受けたときにはどう思いましたか?

柳田:僕、サッカーのルールについてあまり詳しく知らないんですよ(笑)。スポーツ音痴というか、球技が全く苦手な奴が、今回『アオアシ』のエンディングテーマを担当することになって。とりあえずオファーをいただいてすぐ、今出版されている原作コミックスを全て読んだのですが、もう面白すぎて。新曲ではヒロインの花ちゃん(一条花)に焦点を当てて、その気持ちを歌詞に綴っていますが、花ちゃんも僕と同じでサッカーのルールにそんな詳しいわけじゃないんですよ。主人公の青井葦人に対して何かサッカーについての具体的なアドバイスができるわけじゃない、でも気持ち的にはすごくピュアに応援しているんです。僕も『アオアシ』を読みながら、花ちゃんと全く同じ気持ちになっていたんですよね。

──なるほど。

柳田:あと、物語のキーマンである福田達也の台詞は、僕たちのバンド活動や、もっと言えば生き方そのものについても考えさせられる内容で。思いをきちんと言語化して他者に伝えることが、いかに大切かというエピソードなど、誰しもきっと胸に刺さると思うんです。とにかく、ここまで興奮しながら漫画を読み進めていったのは本当に久しぶりでした。

吉田:ちなみに僕は、前からずっと『アオアシ』の愛読者で。ちょうど友だちとも『アオアシ』の良さについて語り合っていた矢先のオファーだったので、気持ちの高まりはヤバいものがありました(笑)。しかも僕は小・中・高校の頃はサッカーをやっていて、怪我で途中で辞めちゃったんですが。葦人もそうなんですけど、自分のやりたいことと、持っている才能とのギャップに悩むシーンがシビアに描かれていて。そこもかなり刺さりましたね。

桐木:僕も小二から小六までサッカーをやっていたんですよ。葦人がフォワードからディフェンダーに移動させられて絶望するシーンは、僕自身が全く同じ経験をしたから痛いほど気持ちがわかります。それに今、柳田も言ったように「人生の教科書」とでも言えるようなシーンがとても多くて。特に夢を追っている人はめちゃくちゃ入り込める作品なのではないかなと思います。

黒川:福田監督が、「ハッキリこうと教えられるよりも、自分でつかんだ答えなら、一生忘れない」」と言うシーンがあって。確かにドラムをやっていて、先輩たちの言っていることが最初はよく分からなくても、続けているうちにある日突然「こういうことだったのか!」と理解できる瞬間が僕も何度かあったんです。そういうところとか、桐木が言うように「人生の教科書」みたいな漫画だなと本当に思います。

吉田喜一
吉田喜一

──歌詞は『アオアシ』の世界観にも寄り添いつつ、柳田さん自身のメッセージも盛り込まれていますよね。ライブのMCでも「僕らが元気や勇気をもらっているのは、ここにいる皆さんからです。この曲は、そんな皆さんへ4人からのラブレターのつもりです」と言われていました。

柳田:ボーカリストとして自分の歌声にはいつかピークが訪れ、そこから先はまた違う持ち味を見つけていかなければならないと常々思っているんですけど、そうなった時もずっと「愛」のメッセージをファンに届けていくことができたら……という、ファンに宛てたラブレターのようなところもあります。

「お客さんと一緒にライブを作りたい」という気持ちが芽生えてきた

──歌詞の中には、他にも例えば〈雨空切り裂いた閃光「君の声が力になる」〉というフレーズがありますが、この曲も含めてここ最近の神サイはシンガロングを入れた曲が増えている気がします。

柳田:僕らが結成した初期に書いていた楽曲は暗めのものが多くて。お客さんを突き放すような感じの曲ばかりだったんですよ。でもメジャーデビューが決まったくらいから「お客さんと一緒にライブを作りたい」という気持ちが芽生え、シンガロングできるような楽曲をたくさん作り始めたんです。

──そういえば先日のライブでも柳田さんは、「いつか絶対に一緒に歌おうね」と何度も呼びかけていましたよね。

柳田:はい。せっかくシンガロングの曲を作ったのに、コロナ禍で声出しができなくなってしまって。実は僕たち、お客さんからの大きな声援を浴びるという体験をまだ一ほとんどしていないんですよ。だからこそいつかみんなで一緒に声を出して歌うとうことに希望を見出すようになっていったのだと思います。すでに今、シンガロングできる曲が10曲くらいできていて(笑)。もし一緒に歌える未来がきたら、きっと泣いてしまうんだろうなと。その日が今から楽しみです。

──メロディやアレンジは、どんなことをイメージしながら作り込んでいきましたか?

柳田:夏らしく爽やかで切なげな雰囲気を、歌詞だけでなくサウンドにも漂わせようと思いました。神サイはメジャーデビュー第一弾の「泡沫花火」以降、毎年夏に季節感を設定した楽曲をリリースしているんです。2020年の「泡沫花火」は正統派バラードで、2021年の「初恋」、そしてこの「カラー・リリィの恋文」が夏唄第3弾となります。4つ打ちのキックが特徴的な歌モノなんですけど、ライブではみんなでクラップできる場所があったり、間奏部分はエモーショナルな展開があったり、今言ったようにシンガロングできるところも用意されていたり。僕と吉田のアルペジオが絡み合うところは、昔のポストロック的なアンサンブルですし、そこにかなりピュアな歌詞で、純粋な自分の気持ちを乗せているのが、すごく神サイらしいなって。我ながら「いい曲やなあ」と思っていますね。

──レコーディングの際、演奏面でこだわったところは?

黒川:今回はパッションを大事にしました。『アオアシ』って土曜の夕方に放送されているじゃないですか。自分が中学生の頃に『メジャー』という野球アニメが同じ時間帯にやっていて。オープニングテーマをいつも試合前に聴いてテンションを上げていたので、スポーツをやっている人が自分を高めるときに聴いてくれたら嬉しいなという気持ちで演奏しました。

桐木:僕は今回、何か景色が思い浮かぶようなサウンドが出せたらいいなと。広大な大草原で、風に髪をなびかせながら誰かが歩いている。そんな、自分が見せたい景色を頭の中に思い浮かべながらベースを弾きました。そんなことは今まで一度も考えたことがなかったので、とても新鮮な気持ちでレコーディングに臨めましたね。無の感情で演奏するよりも、何か映像をイメージしながら演奏した方が、音楽として豊かになるんじゃないかなと思ったんです。

吉田:実は、この曲のギターをレコーディングしているときに体調を崩してしまって。40度近い高熱を出しながら自宅で演奏していたのですが、1テイク録るたびに休憩していたからめちゃめちゃ時間がかかってしまったのを覚えています(笑)。文字通り命を削りながら演奏したギターソロが本番テイクでも聴けますので、是非じっくりと味わって欲しいですね。

黒川亮介
黒川亮介

──先ほど黒川さんがおっしゃっていたように、神サイはこれからフェスへの出演や2023年にはZeppツアーも控えています。今の意気込みを聞かせてください。

柳田:こんなにたくさんのフェス出演が決まったのは、メジャーデビューしてから初めてのことで。ツアーが終わったばかりの神サイが持つパワーを存分に味わってほしいです。

黒川:これまでのツアーで仕上がった神サイを届けられるし、ライブでメインステージに出ているようなバンドとも戦えるなと我ながら思っているので、そこに注目してほしいですね。

桐木;ツアーが終わってから昔の自分たちのライブ映像を見直したんです。下手くそやし若いし、構成もめちゃくちゃ。だけどサウンドはかっこいいんですよ。尖っているというか、「俺らかっこいいでしょ?」みたいな根拠のない自信に満ち溢れて、それだけで突っ走っている姿が最高にキラキラしていて。演奏の上手い下手は置いておいて、そういう初期衝動は今の自分たちにも取り入れていきたいと思いました。

柳田:来年から行う予定のZeppツアー『雪融けを願う飛行船』は、アルバムツアーではないので、セットリストも今回とはまた違うものにできたらいいなと思っていますね。それこそ声出しができるようになっているかどうか……まだなんとも言えない段階ですが、やっぱり希望は捨てたくない。最終日は新しくできたZepp Hanedaで2月5日に開催されるんですけど、飛行場の近くということで、僕らもこのツアーを経てまた強くなって飛び立って行きたいです。

吉田:声出しがOKになると嬉しいですし、コロナも今よりもずっと収束に向かっていてくれたらいいなと思っています。

桐木:さっき柳田が、もしみんなで一緒に歌える未来がきたら泣いてしまうと言っていたけど、4人で泣きながら演奏することになるかもしれない。泣かないように涙腺を鍛えなきゃ。

黒川:そう? 俺は思いっきり泣きたいけどね(笑)!

■ライブ情報
Zepp Tour 2023『雪融けを願う飛行船』
1月15日(日)福岡:Zepp Fukuoka
1月21日(土)愛知:Zepp Nagoya
1月22日(日)大阪:Zepp Osaka Bayside
1月29日(日)北海道:Zepp Sapporo
2月5日 (日)東京:Zepp Haneda
チケット
最速先行受付日程:2022年7月17日(日)19:00~2022年7月31日(日)23:59
https://l-tike.com/st1/kamisai2023ticketsns

■リリース情報
デジタルシングル『カラー・リリィの恋文』
Digital Release:2022年7月15日(金)
配信URL : https://kamisai.lnk.to/callalilyPR
歌詞:https://www.uta-net.com/song/321611/
Official Audio:https://youtu.be/vYCM-GGaeHw

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる