日向坂46、『W-KEYAKI FES.』で示した櫻坂46愛と欅坂46への敬意 想像を超えるエモーショナルな公演に

 開催1週間前は、まさか今年の『W-KEYAKI FES.』がこういう形になるとは誰も予想していなかったことだろう。しかし、だからこそ日向坂46が櫻坂46の意志も抱えて臨んだ『W-KEYAKI FES. 2022』は、我々の想像をはるかに超えるエモーショナルなものとなった。

 今年で二度目を迎えた『W-KEYAKI FES.』は、昨年の3DAYS開催から7月21日〜24日の4日間開催へとスケールアップ。しかも、今年は21日&23日を日向坂46、22日&24日を櫻坂46の単独公演として行うという、昨年とは異なる形での開催がアナウンスされていた。しかし、フェス開催当日に櫻坂46メンバー複数の新型コロナウイルス感染による、22日&24日の櫻坂46単独公演中止発表により、今年の『W-KEYAKI FES. 2022』は21日&23日の日向坂46単独公演のみ開催という形に。21日の公演では、佐々木久美の「櫻坂46さんの分も魂や気持ちを背負って、『W-KEYAKI FES.』を盛り上げていきます!」という強い意志のもと、雨にも負けないエネルギッシュなパフォーマンスを展開した。

 そして、続く23日公演。前夜に影山優佳の新型コロナ陽性判定を受け、この日はメンバー20人でステージに臨むこととなった。この日も開演直前まで雨が降り続く不安定な天候だったが、上村ひなの&山口陽世による影アナが始まる頃には会場のボルテージも急加速。その後、スクリーンに映し出された「伝説は、1本の欅から始まった──」「今年もまた、富士の麓に2つの光が舞い戻る。」のメッセージに続いて、日向坂46カラー(空色)のジャケットと櫻坂46カラー(白)のスカートを着用したメンバーが登場する。本来なら「Overture」から始まることの多い日向坂46のライブだが、この日はいきなり「太陽は見上げる人を選ばない」から開始。もともとは欅坂46とけやき坂46(現在の日向坂46一期生)で歌唱していたこの曲を、1本の“欅の木”から派生した日向坂46が、同じ“欅の木”から派生した櫻坂46と共演するイベントの1曲目に歌うという時点で、今年の『W-KEYAKI FES.』が昨年以上にエモーショナルなものになることは想像に難しくなかった。

 同曲を終えるとメンバーが一旦ステージから捌け、改めて「Overture」が響き渡る。そして、トロピカルな色彩の衣装に着替えたメンバーが、「キツネ」にて改めてライブを再開。この日21歳の誕生日を迎えた河田陽菜がセンターを務めたが、パフォーマンスを重ねるごとに彼女の頼もしさやオーラの強さは増す一方で、自然と溢れ出る笑みと相まって、会場は早くもハッピーオーラに包まれていく。1曲終えると、今度はメンバーが大きなフラッグを用いたダンストラックに突入。こうした特殊なパフォーマンスを目にすると、けやき坂46時代初期のライブを思い浮かべる同時に、『欅共和国』での欅坂46のステージと印象が重なる。そういった意味でも、この演目は彼女たちがいかに自身のルーツを大切にしているかが伝わる。そこから、加藤史帆をセンターに据えた「君しか勝たん」に映ると、その幸福感はさらに急加速。堂々とした加藤の歌とパフォーマンスを中心に、ライブは早くも最初のクライマックスを迎えた。

 この日最初のMCでは、佐々木久美が櫻坂46キャプテンの菅井友香から手紙を預かったことを告げ、おひさま(=日向坂46ファンの総称)に向けて読み上げていく。菅井はメッセージを通して「この度は櫻坂公演中止に関しまして、深くお詫び申し上げます。今年の“ケヤフェス”を盛り上げてくれた日向坂のみんな、どうもありがとう。そして、暑い中お疲れ様です」と労いの言葉を送りつつ、「日向坂46と櫻坂46は同じ欅から生まれたグループ。これからもリスペクトし合いながら、良い関係を築いていけたらうれしいです。目に見えない感染症との戦いは続いていますが、来年こそ2チームがここに集ることを願っております」と自身の思いを伝えた。この言葉を受け、佐々木久美も「私たちは櫻坂46さんの分の魂も背負って、この『W-KEYAKI FES.』を盛り上げて、楽しんでいきたいと思います!」と宣言した。

 この頃になると開演前から降っていた雨もやみ、空には晴れ間も見え始める。「晴れてうれしいです!」と口にした加藤は、続けて「今日はなんの日だと思いますか? そう、今日は河田陽菜ちゃんのお誕生日です!」とサプライズで河田を祝福。ステージに運ばれたバースデーケーキを前に、河田は「今年も頑張ります。目標は携帯を見るときに、眉間に皺を寄せないこと。いつも言われているので、気をつけたいと思います(笑)」と緩やかな目標を掲げた。

 その流れから「アザトカワイイ」でライブを再開させると、二手に分かれたメンバーがそれぞれトロッコに乗って会場外周を移動。客席後方のサブステージまで到着すると、メンバーは回廊を使って会場中に散っていく。そして「思いがけないダブルレインボー」に突入すると、曲タイトルにあわせて“ダブルレインボー”を作り上げようと放水や水鉄砲を使用。21日公演では「『欅共和国』から数えても、放水をするのは初めて!」とうれしそうに話していた彼女たちも、さすがにこの日は二度目とあってか要領を得た様子で、テンション高めで客席に向けて放水を続けた。

 二度目のMCを挟んで、続く金村美玖、小坂菜緒、濱岸ひよりによるユニット曲「もうこんなに好きになれない」で場の空気が一変。安定感のある3人の歌声が、雨上がりのコニファーフォレストに一服の清涼剤のように響きわたる。かと思えば、今度は一期生が「好きということは…」でおひさまと一緒にタオルを頭上で回し、「真夜中の懺悔大会」では放水の連続でお祭り騒ぎを楽しむ。エンディングでは「かげーっ!」と、配信を観ているであろう影山に向けてエールを送る一幕もあった。その後は、二期生が「世界にはThank you!が溢れている」と「恋した魚は空を飛ぶ」でダイナミックなダンスを見せ、三期生はキラキラした曲調の「この夏をジャムにしよう」「ゴーフルと君」に乗せてアイドル然とした姿を提示する。このユニット曲や期別パフォーマンスだけでも、改めて日向坂46の層の厚さが伝わったはずだ。

 陽が落ち始めたライブ中盤では、「川は流れる」「飛行機雲ができる理由」「僕なんか」と比較的落ち着いた雰囲気の楽曲が並ぶ。「飛行機雲ができる理由」では先日の卒業セレモニーを経てグループを卒業した渡邉美穂に代わり、佐々木美玲がセンターの小坂との絡みを見せる場面も。また、「僕なんか」ではウォータースクリーンを用いた映像演出も織り込まれ、会場が幻想的な空気に包まれていく。過去の『欅共和国』でも用いられたこの演出も、日向坂46が使用することで違った見え方がするのも興味深いところだ。

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