藤井風、Official髭男dism、岡崎体育……バンド/アーティスト周辺に浸透する、ユーモア溢れるファンネームの潮流

 また、バンド/アーティスト名の略称+ファンの略称の組み合わせではなく、バンドの特定の要素から生み出した、単一の造語やまったく違う意味で使われる単語をそのまま拝借するケースもある。例えば、THE ORAL CIGARETTESのファンネームはバンドのキャッチコピーである「BKW (番狂わせ)」から引用した、「BKW勢」というものであるし、クリープハイプのファンネームはファンクラブが太客倶楽部ということから、「太客」というワードを使用している。

 このように、多くのバンド/アーティストでファンネームを散見することができる。SiMのように、バンド側の意向としてはファンネームは不要で、普通に○○のファン、と言ってほしいというメッセージを発信するケースもあるようだが、ファンの母数が増えてくると、ファン同士のコミュニケーションが活発化する中でファンネームが生まれ、浸透率が高まるケースは多い。具体的にいうと、ライト層のファンのボリュームが増えていき、いわゆる“古参”とは別の、新たなコアファンを中心として生まれることが多い印象だ。

 いずれにしても、ファン同士のコミュニケーションを円滑にするうえで、ファンネームが果たしている役割は大きく、ファンクラブがあるようなアーティストはファンネームが一致団結感を生み出している印象も受ける。なお、もっとも個人的にパンチが効いていると感じるファンネームは、ヤバイTシャツ屋さんの「顧客」と、岡崎体育の「財布」である。これはバンド/アーティスト側がある種のユーモアとして使用した言葉ではあるが、ファン側も積極的にこれを活用している印象を受ける。ファン以外の人間が聞くとまったく違った意味に取られそうな言葉ではあるが、バンド/アーティスト側とファン同士の関係性があるからこそ、愛着のあるファンネームとして定着しているし、ファン同士のコミュニケーションだけではなく、アーティストとファンのコミュニケーションとして、ファンネームが活用された例ともいえそうだ。

 今後もファンネームは増えていくと思うし、未知なる造語が生まれる可能性も十分にある。いずれにしても、ファンネームを通じて、ファン同士あるいはアーティストとファンの間でポジティブなコミュニケーションが交わされるのであれば、それは意義深いことだと感じる次第である。

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