上白石萌音、アルバム『name』から漂うリラックスした空気感 好きなものをたくさん取り入れた幸せな1枚
上白石萌音が、7月13日にニューアルバム『name』をリリースした。オリジナルアルバムとしては『note』(2020年)以来2年ぶりとなる本作には、TBS系『news23』エンディングテーマ「夕陽に溶け出して」、『第100回全国高校サッカー選手権大会』応援歌「懐かしい未来」などを含む全9曲が収録される。
本作に楽曲提供をする小林武史、川上つよし/谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)、佐藤良成(ハンバート ハンバート)、キヨサク(MONGOL800)、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の音楽を担当した金子隆博といった面々との音楽交流により、歌手・上白石萌音はどのような表情を見せるのか。「好きなものをたくさん取り入れたかった」と語る、一人の音楽ファンとしても細部にまでこだわった本作についてじっくりと話を聞いた。(編集部)
「もっと時間が欲しい」と、悔しい思いも
ーー昨年の上白石さんの音楽活動を振り返ると、ご自身発案のカバーアルバム『あの歌 -1-』『あの歌 -2-』のリリースや、4年ぶりの全国ツアー『「yattokosa」Tour 2021』では故郷・鹿児島でのライブも実現し、年末には『NHK紅白歌合戦』にも初出場と、かなり充実した1年だったのではないでしょうか。
上白石萌音(以下、上白石):そうですね。かなり目まぐるしかったです。2枚のカバーアルバムは、これまでと比べても「聴いています」と言っていただけることがすごく増えて、それがとても嬉しい1年でした。同時に、往年の名曲をカバーするという意味では成長しなければいけなかった1年でもありましたし、『紅白』も控えていて、自分自身を追い込んで追い込んで……自分的には「頑張らなくちゃ」ってかなりピリッとした1年でもありました。
ーー充実しているからこそ、躓いている姿を見せてはいけないと。
上白石:というよりも、なんとか形にしなくちゃいけないという心持ちで、ずっと走っていた感覚があります。それは音楽活動のみならず、お芝居も含めてですね。
ーー特に2021年は朝ドラ(NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』)の撮影もありましたし。
上白石:はい。朝ドラの撮休に今回のアルバム収録曲を3曲録ったりしていました。京都にディレクターさんやスタッフさんが来てくださって、京都のレコーディングスタジオで録っていたんです。
ーーそんな流れだったんですね。
上白石:当時は「もっと時間が欲しい」と、悔しい思いもいっぱいしたんですけど、その中でもやりきれたことはひとつ自信に変えてもいいのかなと思うところではありますね。それに、役を演じていたからこそ知れた気持ちとか、増えた引き出しがそのまま歌に直結することも多かったので、どちらかひとつだけやっていたらわからなかったことがたくさんありました。
ーーそれこそ、金子隆博さんとの出会いもドラマが縁でしたものね。
上白石:まさにそうですね。
好きなものをたくさん取り入れたものにしたい
ーーそういう経験を経て完成した、オリジナルアルバムとしては『note』以来2年ぶりとなる本作『name』。新曲を中心としたアルバムを作る際、どんな内容にしたいかというイメージは持っていましたか?
上白石:まずは、私が好きなものをたくさん取り入れたものにしたいなと。これまでの作品って、どちらかというと明るくてキラキラ、清らかな曲を歌うことが多くて、自分の中のテンションとのギャップを少し感じながらも「よしっ!」と歌っていたこともあったんですけど、今回は好きなものを多く取り入れたぶん、これまで以上に平熱で歌えたような気がします。
ーー楽曲のタイプもあるんでしょうけど、ちょっと大人びた雰囲気で、全体的に肩の力が抜けている、そういう空気感があるなと感じました。
上白石:最初にできた新規の曲が「君の名前」という、ハンバート ハンバートの佐藤良成さんが書き下ろしてくださった曲だったんですが、そのときに良成さんに「とにかく力を抜いて歌ってください。無理なく、頑張らないで」とディレクションしていただいて。それが最初にあったのは、とても大きかったです。どれだけリラックスできるかというところを一緒に追求してくださったことで、方向性が見えたような気がしました。
ーーでは、この曲が指針になったと。
上白石:はい。それもあって、アルバムタイトルも『name』にしたんです。
ーーなるほど。今作で聴けるような落ち着いたテイストの楽曲は、これまでの作品にも存在しましたが、以前はあくまでアルバムの中でのアクセントという役割だったと思うんです。でも、アルバム全体を通してこのトーンで占められると、また違った印象を受けますよね。
上白石:そうなんです。すごく落ち着く空間っていう感じがしますよね。
ーー聴いていくうちにどんどんリラックスできるような1枚なのかなと。
上白石:そう言っていただけて嬉しいです。実はジャケットの撮影の段階では、スケジュールの関係でまだ曲が全部揃っていなかったんですが、『name』というタイトルだけは決まっていて。そんな中で、紺色をテーマカラーに選んだのは、もしかしたらそういう色に合ったアルバムになりそうだという予感やムードがあったのかもしれないです。
ーー結果としてアー写もアートワークも、アルバム全体のイメージにすごく合っていますよね。
上白石:よかったです。こういうちょっと落ち着いた雰囲気を私自身も求めていたのかもしれないですね。