THE ALFEE、感動と笑いに包まれた『天地創造』ツアー 超満員で迎えた東京国際フォーラム ホールA公演レポ
ふたりがステージそでに戻ると、今度は高見沢だけがステージに残り、しばしMC。「ツアーが始まってうれしくて仕方ない」という素直な気持ちを述べている間に、坂崎、桜井も再登場。空き時間にめずらしくエゴサーチをした高見沢が見つけてしまった「高見沢俊彦 植毛」というワードに、「納得がいっていない」というエピソードで盛り上がる。高見沢が「みんな、SNSに『#ALFEE3人地毛』とつけて」と言ったことから、ライブ終了後本当にそのワードがTwitterやInstagramで拡散。翌日Twitterではトレンド入りに、ネットニュースで記事になる事態となった。
声を出して笑えずとも、すっかりあたたまってきた場内に、客席も立ち上がりたくなってきた様子。高見沢によって次の曲、ニューアルバムのタイトル曲でもある「天地創造」が紹介され、イントロが流れる。桜井のパワーを秘めた澄んだ声が馴染む壮大なナンバーを、色とりどりに変わる照明が盛り上げて感動的だ。今、日本のバンドでこんな曲を作り、かつステージで生で演奏し、演出で盛り上げることができるバンドがあるだろうかと思う。ファンタジックな気持ちに包まれたまま、高見沢がエンジェルギターで「Jupiter」を奏でると、アカペラで始まる「星空のディスタンス」へ。おなじみのナンバーに、客席から一斉に拳が上がる。波の音が流れ、続いて約9分におよぶプログレッシブなナンバー「組曲:時の方舟」に。曲に合わせて美しく変わる照明と、炎が上がりドラマティックな展開を盛り上げる。曲の長さを感じさせない圧倒的な世界観で引き込んだ後は、ラストナンバーへ。鐘の音が鳴り響き、坂崎ボーカルのニューアルバムからのナンバー「My Life Goes On」が始まる。断捨離と愛猫の死という身近なテーマから始まり、世界平和で締めるという意外性で、THE ALFEEファンにも話題をさらった“新天地”的ナンバーで本編の幕を閉じた。
「ミカエルの剣」のブルーのLEDライトが光り、マラカス音が鳴り響く会場。ステージが明るくなると、美しいキーボードが流れ、桜井以外のふたりも、サングラスをかけて再登場。アンコールは、坂崎、高見沢ふたりのボーカルによる派手やかなナンバー「振動α」からスタート。曲の終盤、高見沢のギターパフォーマンスで客席を惹きつけている間に坂崎、桜井はステージそでに。程なくしてステージに鳴り響くお囃子。照明も太鼓を思わせる茶色と赤に変わり、「はっぴー!」の掛け声とともにはっぴとハチマキ姿の桜井と坂崎があらわれ、コントタイムのスタート。いったんそでに戻った高見沢もはっぴを着こみ、「はっぴぃお祭り三兄弟」によるコントの応酬に。坂崎による、三波春夫の「世界の国からこんにちは」、南こうせつや谷村新司のモノマネ、桜井による沢田研二の「勝手にしやがれ」やQUEENのフレディ・マーキュリーのライブでのかけあいパフォーマンス、はっぴぃお祭り三兄弟が歌う『タマホーム』のCMナンバーと盛りだくさん。
そのまま、夏を思わせる楽しいナンバー「君はパラダイス」へ突入。この曲は毎回メンバーが「やりたいこと」を歌詞を変えて披露されるが、桜井の「ブランデーを飲みたい」、高見沢の「もんじゃ焼き食べたい」などを織りこみながら、最後は「食べたいよ、ケンタッキー」で締めるサービス。急いでそでに戻ってはっぴを脱いでステージに戻った3人とともに、サポートメンバーの吉田太郎(Dr)、ただすけ(Key)が紹介され「We are THE ALFEE」とあいさつ。そして「今年、第20回目の『SWEAT & TEARS』!」の掛け声とともにイントロが始まり、銀テープが客席に舞う。ジャンプしたり、首をふったりしながらハードなステージングを繰り広げる3人。熱くなった会場に、「東京スペシャル」として極上のハードロックナンバー「鋼鉄の巨人」を披露。ステージ中央に集まった5人は客席に深々と頭を下げ、アンコールの幕は閉じた。
しばらくして、2度目のアンコール。高見沢が「拍手が天から降りてくる感じがする」と表現したように、拍手が波のように聞こえてくる。「僕らの唯一のエネルギーはみんなが盛り上がってくれること。どこまで僕らは歩いていけるかまだわからないけど、できる限り3人でステージに立っていきたい。みんなからの熱意に対する、僕らからの贈り物」と高見沢の紹介でニューアルバムからのナンバー「おくりもの」が、炎とスモークがあがる中で演奏される。まだまだコロナ禍。恒例の3人が固く肩を組んで客席に頭をさげるフィナーレは今回はなし。メンバーが去ったステージに高見沢がひとり最後までステージに残り、長い時間頭を下げて、この日のライブは幕を閉じた。
ニューアルバムから演奏されていない曲はまだまだある。それは7月30日、31日、横浜のぴあアリーナMMで開催される、夏のイベント『THE ALFEE 2022 Summer Genesis of New World 夏の天地創造』に期待して待ちたいところだろう。春のツアーが終わって、夏のイベントが来る、そして秋のツアーが始まって、冬のライブで1年を締めくくる。今年こそ、またいつものTHE ALFEEの1年が戻ってくる。それは彼らだけでなく、長年THE ALFEEを応援するファンにとっても「日常」が戻ってくるということだ。「誰かの日常になる」。アーティストにとってこんなに幸せなことはないだろう。新しいやり方で、新しい楽しみ方で、2年後に待つデビュー50周年をファンとともに駆け抜ける。そのためのTHE ALFEEにとってのひとつのフェーズが、成功に終わったツアーだったと言えるだろう。