スピラ・スピカの旅はまだまだ続くーー“楽しい”のパワーでフロアを熱狂させたご褒美のような時間
「人生のご褒美みたいな楽しい時間を用意して待ってるから!」
6月5日、東京・Spotify O-EAST。ツアー最終日のステージが終了し、ステージを去る間際に幹葉(Vo)が告げた言葉は、人が集うことが難しい今の時代だからこそ、満点の説得力を持ってオーディエンスの胸に突き刺さった。2月にリリースしたシングル『燦々デイズ』と翌月に発表したアルバム『ナガレボシトレイン』を掲げ、全国8都市を回ったスピラ・スピカ(以下、スピスピ)のツアータイトルは『スピスピと燦々輝こう!~ナガレボシトレインに乗って~』。“ポップ・ロックフィールドとアニソンフィールドの架け橋となる”というテーマを掲げ、2018年にメジャーデビューした3人組のファンタジックな、けれど毎日のリアルな生活に力を与える旅にはピッタリの、キラキラとした希望にあふれるタイトルだ。
その名の通り場内に汽笛が鳴り響き、線路を往く列車の走行音をバックに暗がりのなかメンバーがステージに揃うと、一気に上がる照明と同時に始まったのは、メジャーデビュー曲「スタートダッシュ」。幹葉のボーカルがド頭からパワフルに叩きつけられるサビ始まりのナンバーに、客席中の拳もあがって、タイトル通りの“スタートダッシュ”をキメていく。声の代わりに湧き起こる万雷の拍手ならぬ手拍子と、張りのある彼女の歌声が共鳴する様は、まさに圧巻。以降もロート製薬 “爽快系目薬 ロートZ!”に起用された爽やかなCMソング「夏のキセキ」、Webマンガ『今度は殺されたくないアザラシさん』のテーマソングらしくデフォルメの利いた幹葉の動きと声色が映える「君なんか好きにならない」と、元気なアッパーチューンで場内をヒートアップし続けていった。
「ご乗車の皆様、誠にありがとうございます!」と始まったMCでは、徳島弁を交えた幹葉のマシンガントークが炸裂。SNSでツアーの感想をエゴサすると“肩こりが治りました”“ダイエットに成功しました”という報告があったことに触れ、「ごっつ嬉しかった! 一人残らずハッピーになってもらいたい」と、さらにアクセルを踏み込んでいく。ちょっぴりセンチな「ゲットゴーイング」を挟み、「Twinkle」「ほしのかけら」といったバトルアニメのタイアップ曲では、作品の壮大な世界観や主人公の決意をドラマティックに再現。オーディエンスと共に楽しむ序盤のスタイルから物語の表現への見事なシフトチェンジのぶん、寺西裕二(Gt)やますだ(Ba)といった楽器陣の演奏にも感情が籠もり、視覚と聴覚の双方から熱を伝えてくる。
そうしてシリアスな空気感を堪能させたところで、「みんな、お腹の調子どう?」とキュートな幹葉の声色が場のムードをガラリと変えるのも、スピスピのライブならでは。「ツアーといえば各地の美味しい食べ物、じゃあ、東京は江戸前寿司……?」という流れから、「寿司を握りたい気持ちになってきた! 修行に行ってこようかな」と、なんと上手のサブステージに“幹葉寿司”を開店。回転寿司協会から借りたという寿司レーンを前に、ハチマキと法被という寿司職人スタイルでメンバーから注文を取ると、巨大マグロ寿司をメインステージまで配達したところで、アルバム収録のスピスピ流モッシュ曲「サークルフィッシュ」を披露する。「自分が好きなお寿司になった気分で!」という幹葉の掛け声に、メンバーもオーディエンスもその場でくるくると回転して、Cメロではシャリを握る形で手を叩く“寿司クラップ”が炸裂。続いて、曲中での集団じゃんけんから寺西がテクニカルなギターソロを轟かせる「じゃんけんキング」と、新旧のライブ鉄板曲で場内のテンションを爆アゲする。