水曜日のカンパネラ 詩羽が魅せる継承と進化 アルバム『ネオン』で発揮された歌声やリズム感の実力

水曜日のカンパネラ詩羽が魅せる継承と進化

水曜日のカンパネラ『バッキンガム』

 詩羽を迎えた新生・水曜日のカンパネラの初音源は、2021年10月27日にデジタルリリースされた「アリス」と「バッキンガム」である。前者はユニットのサウンドアイコンでもある、80年代後期から90年代初期を思わせるシンセサイザーの和音がフックになっている、ロマンチックでストーリー性あるサウンドが特徴。もはや細分化して久しいネオシティポップのフレーバーもありながら、ストレートにそう感じさせないアプローチ、多彩な要素が万華鏡のようにどんどん入れ替わる音像は、水曜日のカンパネラならではのサウンドメイクと言えるが、軽やかな詩羽のボーカルアプローチで歌モノという印象を残すポップスに仕上がっている。「バッキンガム」は“宮殿”と世田谷区にある“給田”をかけた、いわゆるダジャレという、人を食ったようなオチに度肝を抜かれる1曲。こうしたアイデアをクールかつエキサイティングな楽曲にしてしまう手腕は、これまで水曜日のカンパネラが紡いできたらしさとも言える。しかし、一聴してオチをオチと感じさせない歌詞、サウンドコーティングこそユニットの真髄だ。「バッキンガム」も同様。都市名、建築物名、郵便番号、緯度と経度など、記号的な要素で構成された歌詞は、語感のノリを大切にした中で、熟考してセレクトしたのではと想像する。なぜなら、曲内に登場する〈東京都にある世田谷給田〉というフレーズの〈給田〉が〈宮殿〉に聴こえ、歌詞を見て「あぁ、ダジャレだったんだな」と気付くほどだからだ。「面白さ」と「笑い」を明確に区別しており、ユーモアに対する独自の解釈があるように思う。ここに、ケンモチヒデフミとDir.Fの水曜日のカンパネラの楽曲への美学を感じる。

水曜日のカンパネラ『織姫』

 5月25日にデジタルリリースされたアルバム『ネオン』には、既発のシングルも含め、全8曲が収録されている。本作のリードトラックとなった「織姫」ではオープニングから詩羽のボーカルアプローチの多彩さが爆発。オープニングでメロウで美しいメロディーをファルセットも使いながら、美しく響かせた直後に、急変する曲の展開に合わせてキレキレのラップを披露。その後はトラックのリズムに対して、時にはジャストに、時には少しディレイしてニュアンスを出したりと、スキルフルなことをサラッとやっていて、新しい歌姫像を予感させる実力を発揮している。『ネオン』は、途中でいきなりリズムや曲調が変わる楽曲も多いが、詩羽は抜群のリズム感で楽曲にライドオンし、伸び伸びとサウンドのど真ん中を遊泳している。特にラップパートでの独特の柔らかさがあるしなやかなフロウは、今後ユニットの可能性を広げる重要な要素になっていると思う。

水曜日のカンパネラ『エジソン』

 また『ネオン』収録曲の中でも、抜群にキャッチ―なメロディが印象的で、TikTokのバイラルチャートでも好調の「エジソン」は、詩羽の声色のキュートさが前面に出てきており、アイコンとしての彼女のマジョリティーが垣間見られる1曲に仕上がっている。

 また、無理のない発声方法も好感が持てる。母音の「イ段」や濁音、「ン」などといった、リズムやメロディに乗せるには難しいとされている発音も詰まることなく発声し、楽曲の軽やかさやスピード感を落とすことなく表現している。そしてこの発声方法が、どんぴしゃで今の水曜日のカンパネラのサウンドに似合っている。フックは強いが、洗練されたダンスミュージックの趣が強い『ネオン』は、声音に愛嬌がありながらどこかクールでひんやりした印象を受ける、詩羽の歌声とリズム感があってこそ成立している。

 アルバム『ネオン』を携え、新体制として初めての全国ツアー『LIVE TOUR 2022 “Neo poem”』も6月22日よりスタート。全国計8カ所で対バン公演を開催する他、8月3日には東京・LIQUIDROOMでワンマンライブも決定している。ネオ・アイコン、詩羽。彼女が紡ぐ新しいドラマを体感せよ。

※1:https://ototoy.jp/feature/2021102702
※2:https://qetic.jp/interview/wednesday-campanella_mai-211108/415891

『ネオン』ジャケット写真
『ネオン』

■リリース情報
デジタル EP『ネオン』
配信日:2022年05月25日(水)
各配信先:https://wed-camp.lnk.to/neon
〈収録内容〉
M-1 織姫
M-2 卑弥呼
M-3 エジソン
M-4 一寸法師
M-5 バッキンガム
M-6 アリス
M-7 モヤイ
M-8 招き猫
全作詞作曲:ケンモチヒデフミ

■ライブ情報
水曜日のカンパネラ
対バンツアー2022〜Neo poem〜
6/22(水) F.A.D  YOKOHAMA
6/26(日)名古屋 CLUB UPSET
7/2(土)  仙台 CLUB JUNK BOX
7/15(金) 福岡 The Voodoo Lounge
7/17(日) 岡山 PEPPERLAND
7/18 (月祝) 大阪 Shangri-La
7/29(金)札幌 mole
7/31(日)沖縄 Output
前売:¥3,800
チケット一般発売:5/28(土)〜
ワンマンライブ2022〜Neo poem〜
8/3(水) 恵比寿LIQUIDROOM
前売:¥4,000
チケット一般発売:6/25(土)〜
詳細
http://www.wed-camp.com/

■関連リンク
水曜日のカンパネラWEB SITE:http://www.wed-camp.com/
水曜日のカンパネラ・Twitter:https://twitter.com/wed_camp
水曜日のカンパネラ・YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCt30iKDSksaJ0hbd363ETfA
水曜日のカンパネラ・TikTok:https://vt.tiktok.com/ZSdGnVfxH/
詩羽・Instagram:https://www.instagram.com/utaha.89/
詩羽・Twitter:https://twitter.com/utaha_89_id_
詩羽・TikTok:https://vt.tiktok.com/ZSdGnBA2s/

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