TAIKING、Suchmosの活動と地続きのようなソロ作品群 1stシングル「Easy」から新曲「Summer Again」までの歩み

TAIKING、Suchmosと地続きのソロ作

 TAIKINGの歌は実に優しくて温かい。その声は甘く清らかだ。そして日本語を一字一句大切にしながら歌っている。2ndシングル「VOICE」のサビには〈言葉は贈りもの〉というフレーズがあるが、TAIKING自身が、言葉というものは誰かへの贈り物であることを認識し、愛情を込めて丁寧に選んでいるのだろう。その歌の紡ぎ方は、小沢健二のそれを彷彿とさせる瞬間もある。

TAIKING「VOICE」Music Video

 Suchmosの楽曲で数々の象徴的なギターリフを奏でてきたTAIKINGのテクニックや音色も、ソロの作品で溢れている。実は「VOICE」は「『STAY TUNE』のような楽曲を作りたい」というテーマがあったようで、ベースラインはHSUだったらどう弾くかをイメージしながら作ったと本人は述べている(※1)。キーボードの使い方もTAIHEI(Pf)の姿が浮かんでくるし、DJのスクラッチなど、Suchmosのシグニチャーサウンドが随所に散りばめられている。そしてイントロのギターはたとえば「WIPER」のイントロを彷彿とさせるし、途中で「Alright」を思い出させるギターも入っている。

 しかも、ギタリストの作品だからといってギターが派手に目立つのではなく、むしろ引き算の美学も感じさせるような重ね方を各曲で施していることで、耳に贅沢な味わいを届けてくれるのがまた憎くて愛らしい。一つひとつのギターリフや音色を大事に扱って、それらをちゃんと輝くべきポイントで輝かせられるようなギターの重ね方になっている。それは、Suchmosで歌を引き立たせながら象徴的なギターリフを入れ込んでいたTAIKINGの経験が活きたギターの重ね方や音像の作り方とも言えるだろう。またギターだけでなく、小学3年生からドラムを学び、中学の吹奏楽部ではパーカッションを担当していたというTAIKINGのルーツが発揮されたパーカッションやビートの重ね方も、各曲に異なる味わい深さを生み出している。

 さらに言うと、アートワークからもSuchmosの地続きを見せてくれる作品群となっている。「Easy」のミュージックビデオやグッズのイラストは、Suchmosのアートワークも手がけていたイラストレーター・YUGO.によるもの。2ndシングル「VOICE」のジャケットとミュージックビデオのアートディレクターは、Suchmosの初期から一緒に駆け上がってきた写真家・小見山峻。3rdシングル「走馬灯」のミュージックビデオ監督を務めたのは、「STAY TUNE」をはじめ数々のミュージックビデオを初期から手がけてきた映像作家・ダッチこと山田健人。そのどれもが、愛する仲間たちが手を取り合って、遊び心を持ちながらもプロフェッショナルに、一生懸命に、仕事や商業の範疇を超えた美しいクリエイティブを生み出そうとする熱量を感じさせる。

TAIKING「走馬灯」Music Video

 Suchmos6人での演奏を見ることがもう叶わなくなってしまったことは事実であるが、その一方で、Suchmosが耕してくれた土壌は今も瑞々しく豊潤で、その土壌を耕した張本人でもあるTAIKINGがそこから新たな音楽という果実をつけたことも事実である。その果実は、身体に優しくて心を満たすジューシーなもの。12月に公開されたインタビュー記事(※2)で彼は、「実は曲のストックはまだまだアルバム2枚分くらいある」と今後のリリースへの期待が高まる発言をし、「もっと面白い形でファンのみんなとの関わりを再構築したい」と活動の仕方においても新たなトライをしようとする姿勢を見せていたが、Suchmosから変わらぬ深い音楽愛と、TAIKINGらしい他者への愛とクリエイティブ精神をもってTAIKINGという果実がどのように熟していくか、目と耳と心を離さずにチェックしていたいと思う。     

*5月23日追記

 TAIKINGは、5月4日に新曲「Summer Again」を配信リリース。この楽曲は、Suchmosが重んじてきた温故知新のスピリットと、現在の自分につながるすべての過去に想いを馳せることを表現するかのごとく、アナログレコードの音から始まる。〈忘れないように 口ずさむ〉〈影送りをしよう〉といったリリックからは、ただ夏の陽気な面だけでなく、生命や魂を想う日のことも含んでいることを感じさせる。サウンド面においては、様々な音色のギターフレーズが心地よく絡み合ったかと思えば、キーボードの鳴らし方も巧みで、さらにはHSUの音を彷彿とさせるベースの温かさとグルーヴも抜群だ。そして、澤村一平(SANABAGUN.)によるドラムが基盤を支える中で、トライアングルなどパーカッションの音でも重要な彩りを加えている。聴く人にとっての「夏」と「大切に想い続ける人」が浮かんでくる「Summer Again」は、改めてTAIKINGが多才なマルチプレイヤーでありソングライターであることを証明する一曲。〈赤レンガ〉と横浜の景色が浮かんでくる描写もあるが、この曲が赤レンガ倉庫にて開催される『GREENROOM FESTIVAL '22』にて演奏されるとなれば、ロケーションや季節と楽曲が抜群に合った極上の一時となるだろう。

※1: https://guitarmagazine.jp/interview/2022-0307-taiking/
※2:https://realsound.jp/2021/12/post-925975.html

■リリース情報
4th Digital Single『Summer Again』
2022年5月4日(水)release
Download & Streaming : https://fcls.lnk.to/SummerAgain

1st EP「RAFT」
2022年2月23日(水)release
CD:https://linktr.ee/RAFT_CAPE
Download & Streaming:https://fcls.lnk.to/RAFT

2nd EP『CAPE』
2022年2月23日(水)release
CD:https://linktr.ee/RAFT_CAPE
Download & Streaming:https://fcls.lnk.to/CAPE

■ライブ情報
TAIKING(Suchmos)×オカモトコウキ(OKAMOTO'S)
"Between You and Me Vol.1"
7月5日(火)東京 キネマ倶楽部
7月6日(水)大阪 梅田シャングリラ
チケット好評発売中!

チケット販売URL▼
https://eplus.jp/betweenyouandme/

■TAIKING SNS 
https://twitter.com/totsukataiki https://www.instagram.com/taikitotsuka/?hl=ja 
■TAIKING Official YouTube チャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCNtaVBzhBbt3WQd4NPlgPAg
■TAIKING オフィシャルサイト& Fanclub「TAIKINGDOM」
https://taiking.fanpla.jp/ (URL共通)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる