逢田梨香子、「Nostalgic」に託した意味 過去と未来へ想いを馳せた“一夜限り”の中野サンプラザワンマン
ところで、本ライブの事前案内に目を通した時から、その記載内容を不思議に思っていた。以下に一部を抜粋したい。
「LIVEタイトルとなっている、Nostalgic(ノスタルジック)は、主に『郷愁』・遠い懐かしさを感じさせる得がたいもの、と訳されることが多いですが、その言葉に込められた本当の意味を確かめるためにも、どういったLIVE・演出になるのか、ぜひご自身の目でお確かめ下さい。今回はLIVEツアーではなく、一夜限りのワンマンLIVEとなっております」(※1)
今回のライブで、“Nostalgic”にどんな意味を託したのか。冒頭のMCのように、なぜ“一夜限り”であることを強調するのか。ここまで記せば、察しのよい読者各位はすでにお気付きだろう。「Adolescence」歌唱時に想いが明かされた通り、この日のライブも、終演後にはいつか振り返る“懐かしい”思い出へと変わる。“Nostalgic”とは、そんな“いつか”を見据えて掲げられたタイトルなのだ。そうなると“一夜限り”という言葉の中に、単なる「LIVEツアーではなく」とはまた違った角度の意味を、自然と見つけられるのではないだろうか。
何より、本編終盤への流れを先ほど「今回のライブの真骨頂といえる内容だった」と評したが、「Adolescence」以降の4曲を改めて眺めてみてほしい。新曲からデビュー曲「ORDINARY LOVE」でソロ活動の歴史を一気に遡ると、そこから「FUTURE LINE」で“未来”へと再び向き直し、最後は「Dream hopper」でその先の“夢”すらも歌ってみせる。つまり、曲順が時系列に沿った物語のように構成されていたのだ。
自身作詞の内省的な「ブルーアワー」、いつか懐かしむための思い出としてこの日の楽しさを最後の一瞬まで刻み込んだ「ステラノヒカリ」。そんなアンコール直前、逢田から改めてファンへの想いが届けられる。ファンと一緒に同じ時間を過ごし、同じ景色を見続けられるならば、それはたしかに素晴らしいこと。だが、誰もがきっと人生のステップアップをするし、自身もそれを応援する立場でいたい。だからこそ、10年先、20年先であっても「こうしてみんなと一緒に過ごした時間は、どれだけ時間が経っても、目に触れられないものだけど、消えない」ことを忘れないでほしいという願いが込められている。
続けて「“あの頃よくあの曲を聴いてたな。当時、逢田梨香子のライブに行ってたな。なんかわからないけど、楽しかったな”とか、本当にそんな小さいことでもいい」と語った彼女の言葉には、本当に一言一句たりとも間違いがない。本来的に考えれば、大好きなファンにはいつまでも変わらず応援してほしいはず。そんなファンの循環さえ受け入れる、彼女の懐の広さを改めて思い知らされる本質的でしかないMCだった。逢田梨香子は何にも遮られない、まっすぐ伸びる光のようなアーティストである。そう深くまで実感させられる一夜だった。
※1:https://www.a-sketch.com/artist/%E9%80%A2%E7%94%B0%E6%A2%A8%E9%A6%99%E5%AD%90/
■リリース情報
3rd EP『ノスタルジー』
2022年8月9日(火)リリース
<初回限定盤(CD+DVD)>
価格:¥3,850(税込)
品番:AZZS-127/POS:4582623243072
DVD収録内容:MV他、メイキング映像を収録予定
<通常盤(CD only)>
価格:¥1,980(税込)
品番:AZCS-1107/POS:4582623243089
初回プレス分のみ:トレーディングカード ランダム封入 ※全5種の中から1種類がランダムで封入
<収録曲>
新曲「Adolescence」含む、全4曲