サラ・オレイン、『One』に込められた映画と自らへの愛 名曲カバーと共に伝えたいメッセージとは

サラ・オレイン『One』に込められた映画愛

『One』で芽生えた、サラ・オレインの次なる挑戦

ーーサラさんご自身は、コロナ禍でどのようにメンタルを保ってきましたか?

サラ:保ってこられたんですかね(笑)。ここまで生きてこられたのはラッキーだったのかなと思う。私には「音楽」という救いがあったとはいえ、いろいろな問題を心に抱えてはいたので。

 とにかく、居場所を作ることが大事なのかなと思います。自分について率直に話せる相手がいること、話し相手がいなくても思う存分ゲームなどに没頭する時間を作ること。そういう居場所を作ったり、見つけたりすることが大事なのかなと。私は自分のうつ病について、思いきってラジオで話した時にものすごく反応があったんです。「実は私もうつ病を患っています」「サラさんが話してくれて救われました」って。そうやって誰かの居場所を作ることができたのも嬉しかったし、私も自分の心境を正直に話したことによって人生でもっとも穏やかな時間を過ごせています。無理して笑うこともやめたし、頑張れない時は「頑張らなくてもいい」と決めたら、今はとっても楽です。

ーー映画『ウエスタン』のテーマは、一昨年亡くなったエンニオ・モリコーネのペンによる楽曲です。

サラ:これもチック・コリアと同じく、亡くなった巨匠へのオマージュです。たくさん名曲がある中で、ボーカルを「楽器」のように配置しているこの曲を選びました。レコーディングはオーケストラと一緒だったので、歌も1テイクで仕上げました。モリコーネの楽曲を聴くと、言葉に頼らず人の心を揺さぶるパワーはさすがだと改めて思いますね。

ーー『シンドラーのリスト』のテーマは、昨今の世界情勢を思うと、より切実に心に響きます。

サラ:この曲のアレンジは迷いました。オリジナルはオーケストラによる壮大なアレンジですが、もっとパーソナルで生々しく仕上げたくてカルテットによるアレンジにしました。この映画が好きな人であれば、異なる3曲をミックスして1曲にしていることにも気付いてもらえるはず。特に、ユダヤ民謡なども入ってくるので、そういう意味でも実際に今起きていることとも重なるところがありますね。

ーーパンデミックや戦争が現実となった世界で、音楽にはどんな力があるとサラさんは思いますか?

サラ:もちろん争いのない世界を願っていますが、それを実現するのが非常に難しいことも分かっています。しかし私たちは同じ人間として、一つしかない地球で共存しなければならない。お互いに支え合う責任が絶対にあると思うんです。例えば困っている人に対して、自分のできる範囲で手を差し伸べるべきだと思いますし、私にとってはその手段の一つが音楽なんですよね。堅苦しい理屈は抜きにしてストレートにメッセージを届ける上で、音楽にはとても大きな力がある。それをいい意味で活用したいといつも考えています。

ーー坂本龍一による、映画『戦場のメリークリスマス』主題歌「Merry Christmas Mr. Lawrence (Somewhere Far Away) 」も、戦争についての歌ですね。

サラ:この曲もライブでよく取り上げていました。坂本龍一さんは電子音楽から映画のサントラまでマルチに才能を発揮されていますし、音楽以外の社会活動も積極的にされている。表現者として最もリスペクトしている方ですね。この曲の歌詞は「どこか遠い場所(Somewhere Far Away)で戦っている人たちがいる、ただひたすら故郷に戻りたいだけなのに」という、まさに今の状況に重なる内容なんです。それに、メディアで取り上げられていない紛争は今も世界中で起きている。そのことをずっと意識するのは難しいかもしれないけど、実際に今起きている事実を忘れないでいてほしいという思いを込めて歌いました。

ーー「マイ・ウェイ」もライブレコーディングです。MCでサラさんは、「生きているだけで私たちは頑張っている」「悔いなく生きるのは難しいけど、せめて自分らしく」とおっしゃっています。自分らしく生きるためにはどうしたらいいと考えていますか。

サラ:自分らしく生きる方法については、私自身まだ答えが見つかっていません。ただ、まずは自分の弱さも含めて全てさらけ出すことが大切なのかなと。実際、ラジオでうつ病について発信するようになってから、自分の心は非常に安定しています。自分らしく生きることと“セルフラブ”も繋がっていると思うのですが、自分を好きになるのって本当に難しいですよね。これまで自分自身をどれだけボロボロにしてきたか……本当にあり得ないような扱いをしていたので、それに慣れてしまってまだそういう部分が多少は残っているんですけど、今はラジオでありのままを発信することで少しずつ自分を好きになれている気がします。

ーー自分の弱さを受け入れることで、それをさらけ出すこともできる。それが自分らしく生きることにも繋がると。

サラ:そう思います。今までの自分は「他者」を愛することの方が楽だと思っていました。でも、本当の意味で他者を愛するためには、まずは自分を愛することから始めるべきだと思います。自分がないまま他者を愛そうとすれば、それは依存になってしまう。実際、私はかなり依存体質でしたが……そうすると心のバランスも崩してしまう。とにかく自分を大事にしてほしい。そういう思いを「マイ・ウェイ」に込めました。

ーーアルバム最後を飾るのは、ジャコモ・プッチーニの歌劇『トゥーランドット』から「誰も寝てはならぬ」のカバーです。

サラ:とにかくかっこいい曲ですよね。自分のルーツはクラシックにあるので、やっぱりオペラで締め括りたいなと。この曲は男性目線の曲なので、それを女性が歌う面白さもあります。

ーーアルバムが完成して、これからどのようなことをしていきたいですか?

サラ:今作を作ったことで、自分は映画が大好きだということを再認識しました。いつか映画の制作に関わりたいですね。サントラだけでなく、脚本を書くことや役を演じることにも興味があるし、将来的には自分で作ったシナリオを自分で演じて、サントラも手がけるのが夢です。今、お芝居にものすごく興味があるんですよ。歌と近いところにある表現だと思うし、実際に多くのアーティストがお芝居にも挑戦されていますよね。このアルバムが、そういった新たなフィールドに挑戦するきっかけになったら嬉しいです。

■リリース情報
サラ・オレイン
ニューアルバム『One』
2022年5月20日:デジタル配信(通常・HDD)&CD発売

CD通常盤:UWCD-10001 ¥3,300(税込)
限定盤:UWCD-90001(SHM-CD仕様+フォトブック付 デジパックトールケース仕様)¥3,850(税込)

<収録内容>
1. ボヘミアン・ラプソディ:Bohemian Rhapsody
2. スピーチレス~心の声(映画『アラジン』より):Speechless from “Aladdin”
3. ザ・ウィナー:The Winner Takes It All
4. スペイン:Spain
5. ウォーキング・イン・ジ・エア(映画『スノーマン』より)
:Walking In The Air from “The Snowman”
6. ディーヴァ・ダンス(映画『フィフス・エレメント』より)
:The Diva Dance from “The Fifth Element”
7. ひこうき雲
8. 映画『ウエスタン』 ― テーマ
:Theme from “C’era Una Volta Il West (Once Upon A Time In The West)”
9. 映画『シンドラーのリスト』 ― テーマ:Theme from “Schindler’s List”
10. Merry Christmas Mr. Lawrence (Somewhere Far Away)
(映画『戦場のメリー・クリスマス』より)
11. マイ・ウェイ:My Way
12. 誰も寝てはならぬ(歌劇《トゥーランドット》より):Nessun Dorma from “Turandot”

サラ・オレインSarah Àlainn(Vocal, Violin)
Tracks 4, 7, 11: Live Recording

■ライブ情報
『サラ・オレイン Fantasyの扉を開けて! ~オーストラリア、日本、そして世界へ~』
2022年5月21日(土)
日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(愛知県名古屋)
開場 13:30 / 開演 14:00

2022年5月25日(水)
岸和田市立波切ホール 大ホール(大阪府岸和田市)
開場 17:45 / 開演 18:30

2022年5月26日(木)
文化パルク城陽 プラムホール(京都府城陽市)
開場 17:45 / 開演 18:30

2022年5月27日(金)
兵庫県県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール(兵庫県西宮市)
開場 17:30 / 開演 18:30 

『SARAH ÀLAINN  10th Anniversary 〜 One』
2022年7月6日(水)
東京国際フォーラム ホールC
開場18:00 / 開演19:00
チケット一般発売:5月20日(金)

2022年8月21日(日)
NHK大阪ホール
開場16:00 / 開演17:00
チケット一般発売:5月20日(金)

2022年9月7日(水)
札幌コンサートホール Kitara 大ホール
開場14:15 / 開演15:00
主催: 道新スポーツ・道新文化事業社
特別協力:STV札幌テレビ放送
<チケット>
SS席¥7.700(1階)
S席¥5.500(2階)
A席¥3.300(3階)
一般発売日:6月6日〜(月)
FC先行:4月15日〜(金)

■関連リンク
サラ・オレイン ユニバーサル ミュージックHP:https://www.universal-music.co.jp/sarah-alainn/
サラ・オレイン Official HP:https://www.sarahalainn.net/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる