BIGBANG、WINNER、iKONカムバックや2NE1復活……YGエンターテインメントの再起を支える“音楽”そのものに対する信頼

 2022年4月17日(日本時間)、アメリカ最大の音楽フェスティバル『2022 Coachella Valley Music and Arts Festival』(以下、『コーチェラ』)の88risingのステージにて、元YGエンターテインメント所属のガールズグループ 2NE1が電撃的サプライズで7年ぶりのパフォーマンスを行った。この様子は瞬く間にトレンドになり、世界中のK-POPファンのみならず韓国にも大きなインパクト与えた。また、4年ぶりにリリースされたBIGBANGの新曲「Still Life」は各音源チャートでリスナー数の新記録を打ち立てるなど王者の健在ぶりを示し、リリースから2週間以上経っても韓国主要音源配信サービスのMelOn・genie・FLOなどで1位をキープし続けている(4月24日現在)。

 2018年11月に起こったバーニング・サン事件以降、創設者で代表だったヤン・ヒョンソクの退任とBIGBANGのメンバー V.Iことスンリの脱退、iKONのクリエイション面でも中心だったB.I.の脱退などが続けて起こり、メンバーの兵役も重なって2つのグループ共に活動できない期間が通常よりも長く続くことになった。

 2018年末から2019年にかけてのYGエンターテインメント(以下、YG)所属のアーティストは、BIGBANG・AKMU(楽童ミュージシャン)・WINNER・iKON・BLACKPINK・SECHSKIESと決して多くはなかった上に、AKMUは兄のイ・チャンヒョクが兵役、SECHSKIESはメンバーのカン・ソンフンが脱退し、グループとして完全体で活動できるアーティストは実質WINNERとBLACKPINKの2組のみだった。韓国では社会的なイメージが芸能人の大衆人気に直接作用することが多いために、事件を起こしたグループはもちろんYG自体も、通常の芸能事務所であれば存続そのものが揺るぎかねないような大きなダメージになると思われる。

 しかし、同時期から現在まで、韓国では大衆人気のバロメーターになると言われている音源チャートにおいて、YG所属アーティストのチャート成績は決して悪くはない。BLACKPINKが韓国はもちろん米ビルボードにコンスタントにチャートインしたりと、世界で最もホットなK-POPガールズグループへと上り詰めたのは2018年から2019年にかけてという、事務所のイメージ的には良いとは言えない時期だった。

 また、それぞれソロで各国のチャートを賑わせたBLACKPINKのJENNIE(ジェニー)、ROSÉ(ロゼ)、LISA(リサ)のほか、2枚目のフルアルバムでソロとしてカムバックしたiKONのBOBBY、バラエティやドラマだけでなくそれぞれがソロアルバムのリリース単独コンサートを行ったWINNERのMINOとYOONなど、グループ活動が難しい時期でもソロでアルバムをリリースしての音楽面での活躍も、スキャンダルや新型コロナウイルスの流行など、厳しい状況が続いたはずの2019年〜2021年のYGでは目立っていた。

 それはやはり、同事務所所属のアーティストとアイドルの人気の中心にあるのが楽曲とパフォーマンスであり、他のアーティストでは代替できないような魅力があるということではないだろうか。

 WINNERは2016年に長期休養とメンバーの脱退という大きな変化を経験したが、4人になってから初めてリリースした楽曲「Really Really」は2017年のGAONの年間デジタルチャートで10位と、アイドルの楽曲の中ではTWICEの「KNOCK KNOCK」につぐヒットを記録した。これはファンダム人気が中心であるために音盤に強く音源に弱いと言われている男性グループの中ではトップの成績で、この年の韓国のエンターテインメント界隈を見ていれば流行ぶりがリアルな空気感としてわかるほどだった。

 BLACKPINKのデビューは2NE1の活動休止中であり、その休止期間が長かったことや解散の経緯が良い印象ではなかったために、後輩グループであるBLACKPINKに対する目線にも一抹の影があった時期もあるが、デビュー曲の「Whistle」から2020年の「Lovesick Girls」までタイトル曲は全てGAONの週間デジタルチャートTOP3にチャートインしている。

 BIGBANGの「Still Life」も韓国内全ての音源配信サービスのデイリーリアルタイム両方のチャートで1位を獲るPAK(パーフェクトオールキル)を達成したのに加え、最もユーザーの多いMelOnでの24時間のユニークリスナー数(固有の視聴者数)82万人(最多時は90万人)という新記録を達成した。

 MelOnのユニークリスナー数は2021年8月のチャート改編以降視聴者が1曲に集中しづらくばらつくようになったため、全体的にはそれまでの半分程度まで減っている。改編からBIGBANGのカムバックまでの間で最も24時間のリスナーが多かった音源クイーンはIU「strawberry moon」が70万人。アイドルグループで最も多かったのが女子では(G)I−DLE「TOMBOY」の52万人、男子ではCOLDPLAY×BTS「My Universe」で30万人前後ということを考えると、BIGBANGの凄まじさが想像できるかもしれない。

 新型コロナウイルスの影響により、2020年に計画された『Coachella Valley Music and Arts Festival』でのカムバックも無くなっていた状況で、韓国内ではリリース前から厳しい意見も多く見られたBIGBANGの4年ぶりの楽曲が、結果的にこれほど大衆的に受け入れられたということは、グループに対するイメージ以上に楽曲そのものの魅力が強いという証明でもあるだろう。

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