香取慎吾、混沌とした時代に“アイドル”をする意義 「止まってしまうと思った時もあった」

アイドルをやめる理由がない

ーーファンの方とのつながりというお話がありましたが、香取さんはここ数年のインタビューでご自身がSNSを始められたことについてたびたびコメントされているかと思います。SNSによってファンの方との距離が近づいたのではと思いますが、香取さんにとってファンの存在を直接感じられるというのは大きいですか?

香取:そうですね。これは大げさな話ではなくて、自分は応援してくれるファンの皆さんの声があるから生きていると思うんです。

ーーなるほど。

香取:子どもの頃から芸能界で働いて、皆さんが応援してくれるのが嬉しくて、ステージに立ったりテレビに出たりしてきました。そういう声がなかったら自分はどうやって生きていこう? ぐらいの生き物なんで。

ーーそういう気持ちになったのはいつ頃からですか? 10代前半でデビューした際にはそこまで強い思いには至っていなかったのではと想像しますが……。

香取:そうですね。20代前半でも「俺、人気者だぜ」みたいにイケイケだった気がする(笑)。いつから変わったんだろうな……(しばし長考)。

ーー気がついたらもうそうなっていた感じですかね。

香取:ちょっとずつ強くなっていったんだと思うんですけど、より強くなり始めたのはやっぱり5年くらい前ですか。新しい道を歩み始めようとして、「自分、ゼロから頑張ります」みたいなことを言っていたら、ファンの皆さんから「”ゼロ”とか何言ってんの? こんなにたくさん私たちがいるじゃない」「私たちのこと忘れてるわけ?」というようなコメントがあって……あの時はほんとに支えられました。

ーーいい話ですね。

香取:今思えば「ゼロから」みたいな言い方はちょっとカッコつけてたかもしれない(笑)。ただ、当時は「踏み出そう、羽ばたこう」っていう前向きな気持ちと不安や怖さ、それぞれほんとに半分ずつくらいだったんですよね。ファンの方だけじゃなくてスタッフの人とかも、僕らと一緒に仕事をしたいと言ってくれる人たちがこんなにいるとは正直思っていなかった。だから実際に自分が「ゼロ」じゃないと気づけたときはうれしかったです。

ーー新しい道を歩み始めた心機一転のタイミングがあった一方で、そのころから変わっていないのが「アイドルとしての自覚」ではないかと思います。ここで「アイドルではない存在」に舵を切ることもできたと思うのですが、今でも香取さんがインタビューなどで「アイドルと言い続ける」と明言されているのが興味深いなと。

香取:うーん、今そうやって言ってくださる感じも分からなくはないんですけど……正直、僕からするとアイドルをやめる理由がない。

ーー香取さんの口からの「やめる理由がない」というのは重みがありますね。

香取:あのー、あれも分からない。「アイドルはもうやだ、僕はアーティストになります」とかっていう。アイドルほどずるいものはないし、すごく楽しいものはないと思う。「僕はアイドルだからそれは話しません」なんて言って成立するの、アイドルくらいじゃないですか(笑)。

ーーなるほど(笑)。アイドルという概念は若さと結びつきがちですが、香取さんはそれとは違う地平を切り開いてきた存在でもありますよね。

香取:確かに若さと結びついてますよね。だからかもしれないけど、「いつまでもアイドルとか言ってんじゃねえよ」みたいなコメントを見ることもありますよ。そんなに怒らなくてよくない? って思ってますけど(笑)。

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