Homecomings、3年半ぶり全国ツアーファイナルから伝わったバンドの充実ぶり 新曲「i care」も披露したLIQUIDROOMワンマン
『Somewhere In Your Kitchen Table』と名付けられたHomecomingsの最新ツアー。全国ツアーとしては3年半ぶりで、バンドは北海道から九州まで日本各地をまわり、ツアーファイナルとなったのが東京のLIQUIDROOMだった。
開演は18時。いつものごとくニコ「These Days」を合図にしてメンバーがステージに上がる。向かって左から、畳野彩加(Gt/Vo)、福田穂那美(Ba)、 石田成美(Dr)、福富優樹(Gt)。オープニングナンバーは「ALPHABET FLOATING IN THE BED」で、サビに向けてゆっくりと熱を帯びていく演奏で会場の空気を温める。そこから「I Want You Back」「HURTS」とアップテンポな曲をつないでいく。なかでも、2014年にリリースしたEP曲「I Want You Back」を聴きながら、当時取材で福富が「最近、〈サインしてください〉って言われるようになったのが嬉しいんです」と言っていたことを思い出す。曲のみずみずしさは、今も色褪せない。
「HURTS」を演奏した後、畳野が「今日はいろんな曲をやるので楽しんでください」と観客に声をかける。そして、「Songbirds」「Cakes」と、バンドが幅広く知られるきっかけになった映画の主題歌を続けて演奏。どちらも、ゆったりと歌を聴かせるナンバーだが、「Cakes」はこの日、初めての日本語歌詞。畳野はひとつひとつの言葉を丁寧に歌う。そして、ライトが青一色になって「Blue Hour」が始まる。バンドはアンビエントな広がりを感じさせる演奏で幻想的な世界を生み出していた。
「Blue Hour」が終わると福富がMCで近況報告。福富と畳野が声優デビューしたこと。久しぶりにツアーでいろんな街を訪れたことの喜びが語られる。そして、街を題材にした「Blanket Town Blues」をプレイ。その子守唄のようなメロディに、〈パジャマのままで 空飛ぶベッドから このまちを見下ろして〉いるような気分になる。続いて演奏した「光の庭と魚の夢」はまだ音源化されていない新曲。福富が楽しみに観ていたドラマ『恋せぬふたり』に通じる世界観を持った歌で、日本語のタイトルというのも彼らには珍しい。「Blanket Town Blues」に通じる優しさが曲を包み込む。
福富は『恋せぬふたり』で描かれた恋愛に対する自由なスタンスに惹かれたらしい。多様性を当たり前のこととして受け入れることの大切さは、最近のHomecomingsが歌ってきたテーマのひとつだ。「光の庭と魚の夢」に続いて演奏した「アルペジオ」、そして、最新シングル曲「i care」にもメッセージが込められていて、「i care」を演奏した際には「“それぞれがばらばらでも、お互いにケアできる”という、大切な想いを込めました」と福富が観客に語りかけていた。自分たちの主張を押し付けるのではなく、みんなで一緒に考えていきたい、という想いがあればこそ、曲に親しみやすさが生まれるのだろう。力強いドラム、ソリッドなギターが骨太な印象を与える曲だが、〈なにを選んでも、それでいいからね〉という静かに見守るような歌詞がHomecomingsらしい。