UA、マヒトゥ・ザ・ピーポー提供曲で目指した“普遍的でポップなラブソング” 25周年を転機に現在のモードを語る

ポップであることが、ロマンティックだった

ーー今回ギフトとして「微熱」を受け取り、逆にマヒトさんへ伝えたいことは何かありますか?

UA:そうですね……先ほど言った好きな歌詞の〈かわらないであなたは 街や時代がかわっても/ずっとそのままで 綺麗なまんまでいて〉はそのまま言ってあげたいです。彼は野生的にも理性的にも鼻が利く人だと思うので、全然心配はしていないんですけど、彼のようにピュアでどこか不器用な人って、今のこのドライな時代だと心がすり減ってしまうと思うので。変わらないでいてほしいとは思っちゃいますね。本人が変わりたいなら、それを止める理由はどこにもないですけど。

ーー〈わたしまた恋をして 違う誰かの女になって/それでも歌うわ あなたと 生きた日々のあの歌を〉という歌詞もありますけど、変わっていく激動の中でも変わらないことの在処を歌っている曲でもあるのかなと感じました。それを恋愛に置き換えるのがすごくロマンティックだなと。

UA:まさしく私が一番書けない表現がそこです。〈誰かの女になって〉なんて、とてもじゃないけど書けない(笑)。でも、現実はそういうふうに生きているんですよね。これまで私は理想とか祈りに向かって歌ってきたので、現実をあまり歌ってこなかった。特に前作のアルバム『JaPo』は究極的にそこを目指してやったので、ポップということを全然意識していなかったんです。でも、今はポップに恋をしちゃった。ポップであることが、ロマンティックだったんです。

ーーなぜ今またそんなにもポップなことに惹かれるのでしょうか?

UA:一番下の子供がまだ6歳なんだけど。トップチャートに上がっているディスコティックな80年代リバイバルのような音楽ーー言ってしまえば昔に聴いたことあるような曲も、その子たちにとってみたら初めて聴く曲で、しかもすぐ覚えて歌っちゃってるんですよ。例えば私の楽曲でも、超イケイケのサルソウルをオマージュしてる「太陽手に月は心の両手に」が一番好きだと言って、めちゃくちゃ歌ったりするんです。そういったすごくダイレクトな反応を常に観ているので、20代とかを通り越して、幼い彼らが自分の側にいるリスナーの中で一番ヤングなんですよね。それで、あの子たちがすぐハミングできちゃうほどの強い威力って何だろうと思ったことが、ポップに興味を持ったきっかけで。

ーーそうだったんですね。

UA:子供たちの音楽との関わり方を見ていると、目から鱗が落ちるんです。虹郎くんなんかは私よりもマニアックに聴き込んじゃったりして、逆に教えてもらったりするんですけど(笑)、やっぱり切ないアコースティックのロマンティックな歌が根本的には好きみたいで。子供たちからは、我が道を行っているように見えているかもしれないけど、実はめちゃくちゃ影響を受けている。だから、昔は〈誰かの女になって〉と歌うなんてありえなかったんですけど、今では平気で歌えるようになっちゃったんですね。

ーーすごく新鮮でした。新作EPのリリースがとても楽しみですが、様々なアーティスト、しかもフロントマンのような方々とコラボレーションするというアイデアはなぜ生まれたのでしょうか?

UA:自分のエゴイスティックな部分とか、良くない意味でのこだわりみたいなものが外れちゃって、UAであることもだんだんと忘れている状態というか、この10年はそういう感じで音楽に触れ直していたんですよね。そこで「私、何がやりたいんだろう」と思ったときに、“アルバムの中の1曲”ではなく、全部の曲に対してシングルを作っているというモチベーションで取り組む方が盛り上がれるなと。

ーーそういう最近のUAさんの感覚やムードに従ったんですね。

UA:そうですね。事の発端はやっぱり25周年ですけどね。25年もこうして歌ってきて、これからも歌っていたいと思えるこの事実っていうのは、やっぱり聴いてきてくださった方々のお陰であって。そこがなくなっては、できないことです。でも、私のその25年間というのは、聴いてくださってる方をあまり意識して作ってこなかったんですね。本当に自分がやりたいことばっかりで、自分だけをフォーカスしてた。今はそれが全く逆になったんです。『JaPo』を出した後のライブで、アルバムの曲を散りばめながら演奏していたんですけど、オーディエンスがやっぱり朝本(浩文)さんの曲や、かつてのシングル曲も聴きたがっていることは分かっているので、やりますよね。すると、会場の温度が全く変わるんです。ウワーっていう循環が起きて、自分も幸せになって、やっぱりすごいなと改めてスタンダードな気持ちに立ち帰った。そしたら、日本のシーンをすごくフラットに楽しめる自分も現れて、今の状況にもベストマッチングしたんです。

ーー新しいモードのUAさんを、ファンの方やさらに若いリスナーが聴いたらどう思うんだろうと思うと、すごく楽しみですね。

UA:そうですね。でも、もちろん同世代のずっと支えてくれた方にも、まさしくギフトとして、「今のUAをどうぞ」って聴いてもらいたい。もしかすると「UA、ここに行くんだ!」とびっくりする人とかもいるかもしれないですけど、自分に嘘はつけないし。私は変わることへの恐怖って全然ないんですよね。

ーーそんな次のEPのタイトルは『Are U Romantic?』とのことですけど、なぜ今、ロマンチックかどうかを投げかけたんですか。

UA:時代が変わってきているので当然のことだと思うんですけど、最近、リアリストな方が多いじゃないですか。悪いことではないですし、しなやかで、したたかでもあり、すごいなって尊敬しています。でも、一方でロマンティックに恋愛することもすごく魅力的ですし、音楽であれ、日々の食事であれ、自分の仕事であれ、要するにどんなときでもときめきを感じることって、生きていく上で大切じゃないですか。自分を生かすコツというか、そういう意味でちょっと問いかけているんです。「No, I'm Realistic.」と言われても全然構わない。それは私が強いることではないので。

ーーなるほど。

UA:やっぱりポップって、ロマンティックじゃないですか。ちょっと前までだったら、自分の中の嘘のない何かがメッセージになることが常だったんですよね。でも、今回のEPは私がどうのこうのじゃない感覚があって。歌詞を書くときでも、アレンジをするときでも、「ポップって何だろう?」ということを常に問いかけて、すごく楽しくチャレンジして作っていたので。タイトルではまさにそれを表したいわけですよ。“Romantic”って、私にとってはめちゃくちゃかわいくて、ポップな言葉なんです。ものすごく時間かかってますし、ここまでコンセプチュアルにやった作品は一度もないですね。

ーーでは、25周年を経て、ご自身では今後どう変化していくと思いますか?

UA:今はまだ変化の前夜で、ずっと身籠っている状態だった「微熱」もやっと旅をし始める。そこから今後どういう循環が起きるのかを実感しないと、まだ見えないんですけど、20代やデビューした頃と微塵も変わってないなと思う部分も、こういう周年の活動などをやっているとはっきりと見えたりもしました。変わっていないと思うのは、“間”にいたいということ。他人からはそう見えていないかもしれないけど、例えばJ-POPなのかそうでないのかといったジャンルや、メジャーとインディーズみたいな、分けられているところの間にいて繋げる役割というか、デビューしたときから自分はそういうところにいるのかなという気はしています。それで今、等身大でできることって、意外とポップなことの方が向いているじゃんということが見えたんです。でも、そこに対して、これからの自分がどう反応していくのかは、分からないんですけどね。

※1:https://realsound.jp/2021/06/post-786138.html

UA「微熱」

■リリース情報
配信シングル『微熱』
2022年3月16日(水)リリース
https://jvcmusic.lnk.to/binetsu

EP『Are U Romantic?』
2022年5月25日(水)リリース
「微熱」他、全6曲収録

■関連リンク
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