mzsrz、DECO*27と作り上げた“多様声”感じる1stアルバム 現在地を確かめ語る、等身大の気持ち

mzsrz、DECO*27と作り上げた1作

 2022年という時代をあらわす“サウンド”とはどんな音色だろう? そんな問いに答える音楽作品、それが“心の機敏”を拾い上げ、Z世代の心情を代弁するmzsrz(ミズシラズ)の1stアルバム『現在地未明』だ。“未明”とは、明け方に空が白み始める前の時間帯を指す。まさに、葛藤などを抱えた無色透明の存在であるメンバーの“現在地が定まらないことへの不安”から解放する1枚といえるかもしれない。

 グループ結成まで、それぞれ“見ず知らず”の存在であったメンバー5名。mzsrzとは、エイベックスとテレビ東京によるオーディション番組『ヨルヤン』から誕生したボーカルユニットだ。

 エイベックスとテレビ東京といえば『ASAYAN』を通じて、数多くのアーティストやタレントを輩出し90年代音楽シーンに革命を起こした。昨今、K-POPやボーイズグループなどテレビ発のオーディション番組が流行の発信源となっている。思えば、いまの時代に通じる元祖が『ASAYAN』だった。

 ネット時代に復活した『ヨルヤン』オーディションという狭き門を、自らの“声”だけを信じてサバイブしたのが、大原きらり、作山由衣、実果、ゆゆん、よせいによる5名。パンデミックに揺れた2021年1月、配信シングル「夜明け」でmzsrzとしてデビューを果たした。令和世代の心情を5人による“多様声(※mzsrzによる造語)”で表現する、繊細なる心模様を等身大で歌う=micro music(※mzsrzによる造語)を奏でる存在だ。

 注目すべきは、サウンドプロデュースを手がけたのが、オーディション審査員として5人を見守ってきたDECO*27であること。ボカロ文化圏のレジェンドであり令和ポップシーンを切り開く要注目の音楽家だ。さらに、DECO*27ファミリーでもあるRockwellやTeddyLoid、そしてポリスピカデリー、椎乃味醂、Teppe、kousなど、審査に参加したクリエイターがチームとして作品を手がけている。

 結果、ポップパンク、ハイパーポップ、シティポップ、ダンスポップ、オルタナティブロックなど、ジャンルにとらわれない、メンバー5人の個性が発揮された2022年という時代を映し出す、記憶に残る作品が誕生した。(ふくりゅう)

10曲すべて“等身大”の気持ちで歌っている

ーーアルバム『現在地未明』が完成してみていかがですか?

ゆゆん:mzsrzって、こんなに幅広い表現をできるんだって可能性を感じました。リスナーの方にも驚いてもらえるんじゃないかなと思っています。

実果:最初にレコーディングしたのが「夜明け」だったので、アルバム全曲を通して聴いて、あらためて自分たちの成長を感じました。歌い方ひとつにしても、感情の込め方であったり。聴いてくれる方をイメージして、もっと遠くまで届くように心がけましたね。

作山由衣(以下、作山):アルバムをリリースできたことが本当にありがたいです。CDとして手に取れる作品をリリースできることが何より嬉しかったんです。未だに信じられない思いでいっぱいです。

大原きらり(以下、大原):10曲すべて、わたしたちの“等身大”の気持ちで歌っています。“等身大”と言いつつも、わたしたちと同じ世代だけでなく、すべての年代の方にも届くんじゃないかなと思っています。世に出せたことが嬉しいです。

よせい:あらためてmzsrzの強みである“多様声”を感じられるアルバムになったと思います。メンバーそれぞれ個性の強い声を持っているので、聴いてくださる方々にもそれぞれ違った印象で受け止めてもらえるんじゃないかなと思っています。

ゆゆん
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実果
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ゆゆん
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実果
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ーーそれぞれアルバム『現在地未明』で好きな曲を教えてください。

ゆゆん:アルバムのリード曲「フェーダー」が好きです。レコーディング前、デモ音源を聴いたときに歌い出しの〈待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか〉というフレーズで涙が止まらなくなったんです。自分が言葉にできなかった気持ちがDECO*27さんに伝わっているということに救われましたね。みんなの声がきれいで透明感があるからこそ、嫌なことを今だけは忘れようという気持ちで浄化されるんです。特に、大原きらりのフェイクが入ることによって胸に突き刺さるというか、とどめを刺されましたね。

ーーああ、わかります。

ゆゆん:将来が不安な子たちって同世代、いっぱいいると思うんですよ。そんな方々にこそ「フェーダー」を聴いてほしいですね。

mzsrz(ミズシラズ) / 「フェーダー」Lyric Video

実果:わたしは学校帰りとか暗い気分のときに、音楽を聴いて心が強くなれるような曲が好きなんです。「ノイズキャンセリング」は、ミュージックビデオを暗いシーンで撮っていて。人間関係で悩んだりするときでも、自分は自分だから大丈夫って頑張れる曲です。

作山:「エコー」は、目標に向かって努力していく中で感じる葛藤や挫折を経験した人へ、ありのままの自分を肯定してくれる応援歌なんです。自分自身も日々迷いなどあったりするんですけど、「エコー」を聴くと心の支えになります。

大原:わたしはデビュー曲の「夜明け」ですね。デビューできるかわからない不安な気持ちでいっぱいだった頃から考えたら、「夜明け」でデビューできたことは希望でした。歌詞の中に〈ここで泣いていいよ 違ってもいいよ〉ってあるんですけど、辛いときに包み込んでくれるあたたかさに支えられていて。曲としても最初にレコーディングしたナンバーなので、いま聴くと自分でも成長を感じられますね。

よせい:アルバム全曲大好きなんですけど、mzsrzの良さを知ってもらうためには「Repeat」が大事ですね。“いま”というわたしたちの瞬間を閉じ込めたような曲になっていて。アルバムの最後を飾っているんです。

ーー“瞬間を閉じ込めた”というと?

よせい:レコーディング前にDECO*27さんから「自分の身近な音を録ってきて」ってリクエストがあって、それぞれ素材として送っているんですよ。歌詞の中でも〈気になっているんだ その視線が 怖くて 怖くて 笑えないの〉という部分があるんですけど、まさしくそんな状況ってあるんです。“一人ひとりに寄り添うmicro music”という“mzsrzらしさ”を代表する曲なんです。あとは、mzsrzのキーワードでもある“多様声”ですね。

ーーなるほど。ちなみに、自分だったら「エコー」のローファイなイントロダクション、オルタナロックな展開がツボです。あと、TeddyLoidによる編曲がエモいアッパーチューン「ノイズキャンセリング」もキラキラしていて良くって。アルバムが完成してみて、デビュー曲の「夜明け」を聴き返すと、あらためて言葉が強いポップパンクなナンバーであり、やはりインパクトが強いですね。

よせい:嬉しいです。

mzsrz(ミズシラズ) / 「エコー」Music Video

ーーさらに“mzsrzらしさ”を言葉にすると、みなさんどんなイメージを持っていますか?

大原:“代弁者”としての意識を持っていますね。どの曲も、自分のありのままをさらけ出して歌っているので。それこそ、些細なことに悩んでしまう自分も詰め込んでいたり。聴いてくれる方の、みんなが持つ感情に寄り添っていきたいです。

作山:“mzsrzらしさ”は“等身大”ですね。同じ悩みを持つ同世代に響く歌を届けたいです。同じ環境にいる人たちへ共感を共有していきたいですね。

実果:わたしも“等身大”につながっていくんですけど、綺麗なだけではない感情。ダークな、普通だったら発信することが好ましくない想いってあると思うんです。でも、そんな気持ちも歌にのせて届けていることがmzsrzらしさなんだと思っています。

ゆゆん:ふと頭に浮かぶのは“無色透明”ですね。メンバーはそれぞれ歌声に個性があるので、どんな色にもなれる“無色”だと思っています。これはわたしの中の勝手な解釈なんですけど、歌声が“透明”ということが“多様声”なんじゃないかなと思っています。mzsrzって、楽曲も歌声も変幻自在なんですよ。何にでもなれるんだなっていまでは思っています。

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