DECO*27、Rockwell&DMYM/No.734と交わすOTOIRO創作対談 初音ミクを取り巻くクリエイティブの全貌
「DECO*27は、常に新しいことを考え続けている」(Rockwell)
ーーダークサイドというか、心の闇をえぐったナンバーですね。
DECO*27:うまく誘導したいなって思って。ダークめのDECO*27ってひさびさなんで。お待たせしていたファンの方にも喜んでもらえるかなと。それこそ「パラサイト」のMVを出すスケジュールをまず決めたんです。そこへ向けて「アニマル」とかをどんなタイミングで出すかを考えるきっかけになりました。「パラサイト」は、実はアルバムの軸となる曲なんです。
ーーMVを出す順番を考えて、アルバムへと効果的に結びつけていくことが今の時代とても大事ですが、見事な戦略に驚かされます。作品をいかに大事にされているかが伝わってくるエピソードですね。
DECO*27:ありがとうございます。
ーー2021年を代表する曲となった「ヴァンパイア」、最新曲「パラサイト」も評判がいいです。アルバムには入ってませんが「サラマンダー」も神曲ですよ。「シンデレラ」、「アニマル」も中毒性が高いですし、「モザイクロール (Reloaded) feat.初音ミク」はイントロのギターリフからテンションが上がりました。
Rockwell:アルバムは挑戦的な曲が多かったので、いつものことなんですけど編曲は大変だろうなと思っていて。でも、やってみたら意外とサクサク進んで。
ーー「状態異常彼女」のディスコ感も良かったし、「ケサランパサラン」でのキラキラ感、「ギフト」でのドライブ感のあるおしゃれなギターアレンジの良さ。そして「パラサイト」のかっこよさ、「ジレンマ」の突き抜け感の凄味。本当に、何度も聴きたくなるポップアルバムですよね。入り口は広く、歌詞でより深みにハマれるDECO*27さんワールド全開です。
DECO*27:「状態異常彼女」は裏話があるんです。
Rockwell:アルバムで最後に完成した曲ですね。
DECO*27:アレンジをしてもらうときに、もう他の曲が全部できあがっているのでRockwellだったらアルバムのバランスも見えているだろうなって、この曲に関しては方向性など何も言わずにお願いしました。
Rockwell:情報が詞メロとイラストと歌詞だけでした(笑)。自由にやれて楽しかったですね。そういえば「ケサランパサラン」の音なんですけど、かなり“おっさんホイホイ”になっていまして。気がつく人は気がつけるかな。
ーーDECO*27さんはRockwellさんの編曲センスへのリスペクトを強く感じますね。
DECO*27:Rockwellは、僕の歌詞とメロディに対する理解度がすごく高くて。だからこそ、常に編曲作業も高みに向けて話ができる最高のクリエイターです。Rockwellは、ギターが上手いんです。テクニカルなだけでなく、アレンジをする上でギターという楽器を扱うのが素晴らしい。自分が信頼して任せられる存在ですね。それこそ当時「ヒバナ」ができたときに実感しました。未だに、恥ずかしいものは渡せないなって緊張感を持って編曲をお願いしています。
Rockwell:ずっと言ってるけどお互いにそうだよね。恥ずかしいものを出したくないんです。ライバル心じゃないですけど、負けたくない、みたいな。お互いにびっくりさせたいという気持ちを持ち続けてきた結果が今なんですよね。
ーーお互いに創作においてあきらめないでいられる関係性なのですね。
Rockwell:DECO*27は、常に新しいことを考え続けているトレンドに敏感な人なので。僕も、そこにおいていかれないようにディグったりしています。僕は僕で新しいものを探しているんですけど、彼が毎回それを上回ってくるんですよ。それって、クリエイターとしてゼロイチができるパワーがすごいなって。努力もしているんだろうしね。
DECO*27:ははは、お恥ずかしい(笑)。ありがとうございます。
ーーこの1年間、怒涛の制作スケジュールだったと思いますが振り返ってみていかがですか?
DECO*27:「ヴァンパイア」以降、DECO*27にとって新しい分野を開拓できたことによって楽になれましたね。デビューしたての頃って、自分としては“せつない曲”か“可愛い曲”の二択って感じだったんです。で、「二息歩行」でよりロックになって、その後に「罪と罰」などで打ち込みも混ぜていって。聴いてくれる方が飽きないようにと、自分も苦しくならないようにね。あまり変えていなかったのですが、この1年でDECO*27の引き出しが増えたなと思っています。
ーーRockwellさんは、そんなDECO*27さんと今後どんな音楽活動、クリエイティブ活動をしていきたいと思っていますか?
Rockwell:毎年毎年、やる曲数がアップデートされていくんですよ。よく「去年の今頃何をやっていたっけ?」って話をするんですけど、「こんな曲数少ないのに忙しいなんて言ってたんだ」って(笑)。
DECO*27:(笑)。言ってた。
Rockwell:それを常に塗り替えていけているのはありがたいことですよね。僕も自分をアップデートできるように頑張ろうって思っています。
ーー2022年、アルバムのリリース以降はどんな活動になっていくのでしょうか?
DECO*27:実は、今年の曲のデモはほぼほぼ書いていて、どんな動画をいつ発表するかも僕の中で決めていて。それこそ「ヴァンパイア」からの流れも汲みつつ、新しい方向性へ進むような挑戦をすでにやっていますね。
Rockwell:僕自身「ギタリスト!」っていう意識はあまり持っていなくって。ギターに対して執着がないんです。ギターでアレンジすることは好きなんですけどね。こだわりすぎると一辺倒になってしまうので、新しいものを作る上ではこだわりは必要ないなと思っていて。「ヴァンパイア」を作る際に、軽いギターを入れているんだけど突然生弦のエグい音も入れていたり。そんな「普通にバンド活動だけやっていたらやらないでしょ!」っていう演奏をいっぱい今回のアルバム『MANNEQUIN』でやっています。今回、よりアップデートできたことかな。
DECO*27:どこのタイミングで言おうかなって迷っているんですけど。『MANNEQUIN』って、ただのアイドルグループではなくって。アルバムを出して、作品としては完成しているんですけど、もうひとつ裏テーマというか、どこかのタイミングで楽曲を通してネタバラシを予定してます。まだ先になるかもしれないんですけど、もうひとつの楽しみ方を提案したいです。
ーーそれは楽しみですね。
DECO*27:DECO*27がただのアイドルものをやるだけでは終わらないよなって、内容になると思います。