SNSが結びつけた3つの強い個性 新世代バンド SpendyMilyが大切にする、受け手に考えることを促す音楽
SNSがなければ出会ってすらなかった(yukirie)
ーー活動はどのように進めていったのでしょうか?
松永:僕らは最初、ずっとオンライン上で曲を作ってたんです。会わずに電話しながら「Aメロはこう、Bメロはこう」みたいな細かいやり取りを重ねていくっていう。
yukirie:シェアしやすいようにDAWも全員共通のものを使っています。
ーー今っぽいですね。それで曲が完成したらスタジオで音を合わせると。
松永:いや、それもしないで最後までオンラインなんです。今もほとんどスタジオは使わないですね。
平井:ライブの時くらいだね。
yukirie:基本的に制作するのはそれぞれの自宅です。
ーーそれはコロナ禍だからですか? 2020年結成なので真っ只中だったわけですよね。
松永:シンプルにみんなの家が遠いっていうのが理由ですね。僕は大阪に住んでて、yukirieが東京だったので。
平井:私は岐阜です。
松永:そう。だから会おうと思っても簡単に会える距離じゃないんです。
yukirie:コロナは関係なく必然的にこういう形になったんだと思います。今思えばやっぱりSNSがきっかけとして大きくて、SNSがなければ出会ってすらなかったと思いますね。
ーーなるほど。ずっとオンラインでの制作とのことですが、曲作りの流れを教えていただけますか?
yukirie:最初は僕がオケを作って、それを松永に渡します。逆に松永から音が何も入ってないアカペラの状態の音源を送ってもらって、それに僕がオケを当てはめていくこともあります。その後に2人で何度もやり取りを重ねていくんです。松永からは「好きにいじっていいよ」と渡されるので、じゃあAメロをBメロにしたらどうなるかとか、CメロとDメロを入れ替えてみようとか、結構実験的に試します。松永の作るメロディは独創的なので、いつも自分が意図してなかったものが生まれて楽しいですね。
ーーまず松永さんとyukirieさんの2人で作るわけですね。そこに平井さんはどのように関わってくるのでしょう?
yukirie:ある程度土台が完成した後に平井さんに「こういう感じだからドラム考えてみて」と送ります。
松永:ドラムを入れてもらうと全然印象が変わりますね。
ドラマーだけどドラマーじゃないなと思って(平井)
ーークレジットを見ると平井さんには“Groove Activator”とありますが、これにはどういった意味があるのでしょうか?
平井:いざ自分の名前をクレジットするとなった時に、何と表記しようか悩んだんで
す。このご時世コロナの影響もあってなかなかドラムが叩けないから。基本的にyukirie
が曲を作って、松永がリリックやメロディ考えて、それにリズムの打ち込みばか
りしてました。なので、バンドに加入して自分の名を連ねるときに、ドラマーだけど
ドラマーじゃないなと思って、Groove Activatorと名乗るようになりました
。自分自身で楽曲にリズムを打ち込んでいるからこそ、ライブやスタジオ、それぞれ
のシーンで違う音を出してるということを理解しているので、その場の空気感に合わ
せて全然違うフレーズ叩いたり、その時ならではのグルーヴの軸を握れるなど、空気
の揺らぎを出せたりもするところは強みだと思っています。
ーー例えば1stデジタルシングル「夏とブルー」はどのような流れでできたのでしょうか。歌詞ができるタイミングも教えてください。
yukirie:最初にイントロのギターのフレーズが思いついたんです。そこから膨らませていって、シティポップを根底としたコンセプトを持ちつつも、一貫してテクニカルなアレンジに着地しました。
松永:あの曲はサビのメロで苦戦したので結構時間かかりましたね。詞はメロが固まらないと書けないので、メロディを作ってる段階ではなんとなくの言葉で進めてます。
yukirie:歌詞を書くとメロがそれに囚われちゃうんです。
松永:日本語って一文字違うだけでもニュアンスがまったく変わるから、最初は歌詞は考えないようにしていて。なんとなくこういうストーリーの歌を作りたいと思い描いてはいるんですけど、最初の段階では文脈としてはめちゃくちゃなことを言ってます。ただ、この曲で伝えたかったのは一人の“葛藤”なんです。大きく捉えると失恋曲ではあるんですけど、失恋もあくまで葛藤の中の一つですよね。〈大人になる意味ってさ まだ分からない〉っていう葛藤の部分も、色々な人がどこかで思い悩んでることだと思うんですよ。
ーー平井さんが手掛けるMVは、色味が独特でとても印象的ですよね。
平井:松永がただの失恋曲じゃないと言ってましたけど、私もこの曲を聴いた時に、心が不安定になりながらも自分を保っている気がして、そういう部分を色を使って表現できないかなと思ったんです。でも、タイトルが「夏とブルー」なので安易にブルーは使いたくないというあまのじゃく精神がありました。“悲しい”という言葉の中にも色々な悲しい感情があるように、青にも色々な種類の青色があります。その複雑さを表現するために何回も何回も色の調節を繰り返して、映像で感じ取れるようにしたんです。
ーー冒頭の砂浜の俯瞰映像がこの曲のテーマを一発で表していて素晴らしいと思いました。何かと何かとの間で揺らいでいる、まさに“葛藤”という。
平井:ありがとうございます。あのMVは遠くから映すことにこだわって撮りました。実はあのシーンは逆再生になっていて、そういうちょっとしたトリックはいくつも組み込んでいます。あまのじゃく精神と言えば「雨のリズム」(2ndデジタルシングル)では、雨を使わずにいかに雨を連想させるかに力を注ぎました。松永とダンサーさんが踊っている姿を上から撮るカメラワークがあるんですけど、あれは雨からの視点を表現していたり、ダンサーさんが着ているドレスは、広げた傘を上からの視点で表しています。分かりやすすぎるのは好きではないので、見方のトリックで表現することに注力しているんです。
ーー対して「後悔」はそれまでの2曲とはちょっと違ったテイストのMVですよね。
平井:3曲の中で一番手こずった作品です。最初にデモ映像を作って、その通りに撮影してから編集に移るんですけど、編集の段階になってからなんか違うなと思って。インパクト頼りになってしまっていたんです。それでデモの内容とは違うものを作って、観る人が考えさせられるような作品にしました。後悔にも色々な後悔があって、それをどう表現するかを悩みました。後悔は人生で何度も起きるので、一度の後悔に囚われずに一つの物語としてずっと続いていくということが映像から伝わればいいなと思います。
ある意味抽象的であることを意識してます(松永)
ーーSpendyMilyの作品は受け手に考えさせるものが多いですよね。
松永:はい。僕らが作る曲って基本的にそういうものが多くて、ある意味抽象的であることを意識してます。例えば「後悔」にしても、あらゆる場面で出てくる言葉だし、後悔したことがない人間っていないと思うんで、色々な解釈ができる曲にすることでたくさんの人に響いてくれたらと思うんです。
平井:誰でも発信ができるようになった分、流されやすい時代でもあります。なので私たちの曲や映像を観て、聴いた人たちがどこまで自分に落とし込めるかが大事だと思っていて。インパクトはあってもそこで止まってしまうと、ワンスクロールで品定めされて終わってしまう。だから、自分たちが考えていることを相手にどこまで深く考えさせられるかが重要だと思うんです。それができて、初めて作品が完成すると思ってます。
yukirie:いつでもどこでも自分の好きな音楽を聴ける反面、自分たちの存在や作品をどうやったらより知ってもらえるかを考えることが増えたと思います。好みも細分化しているので、全員に好きになってもらうのは難しい。そのなかで、自分たちがやりたいことを貫いて、聴いてくれる人が増えてくれれば一番嬉しい。なので一番大事なのは自分たちらしさ。テーマを常に持って、SpendyMilyの色を確立していきたいです。
ーーここまで3曲リリースしてみて、手応えはいかがでしょうか?
松永:徐々には感じてます。でもまだ3曲だけなので、ここで手応えを感じていたら成長が止まっちゃうと思いますし、そこはストイックであり続けたい。今のところやりたいことはできています。でも、やればやるほどまた新しくやりたいことが出てくる。その繰り返しですね。今も次のことをやりたくてたまらない。だから今はもっと新しい曲を出したいなっていう気持ちです。
■リリース情報
SpendyMily
3rd Digital Single「後悔」
2022年1月21日(金)リリース
■番組概要
【番組名】 ドラマ24 『シジュウカラ』
【放送時期】 2022年1月7日 (金)スタート
【放送時間】 毎週金曜深夜0時12分
【放送局】 テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ 九州放送
■関連リンク
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