鳥山雄司と神保彰、PYRAMIDの変化に対する活動指針 クラウドファンディングでのアルバム制作を語る

鳥山雄司&神保彰、PYRAMIDの活動指針

世代をつなぐハブになるような音楽活動をしたい

ーーさて、新作についてです。ズバリ今回目指すサウンドとは?

鳥山:「アマチュア時代はできなかったけど、今ならできるんじゃない?」とカバーに取り組んで、実際演奏できたときの喜びが僕らの原点なので、今回もそういうカバーはやります。クインシー・ジョーンズの「Stuff Like That」とかStuffのナンバーとか。で、「あの時代の音って何が違うんだろう?」と考えたんです。これ、伝わるどうかわからないんですけど、たとえばドラムだったら「タンタン」じゃなくて「ダンダン」、ギターだったら「シャリーン」じゃなくて「ジャキーン」。なんか全部に「濁点」がついてると思ったんです。そういう質感を目指したいですね。もうアナログ機材はないんですけど。

神保:80年代中盤以降PCが音楽制作の主役になって、音の質感、受ける印象はだいぶ変わってきましたよね。否定的に思っているわけじゃなくて、でも、確実にPC以前、PC以後みたいな違いはある。僕らは多感な時代をPC以前の音楽で育ってきたので、「濁点」の薄まりみたいなものはやっぱり感じてます。鳥山くんに比べたらレコーディング現場の体験は少ないですし、技術的にわからないことも多いんですけど、鳥山くんの言う意味は体感としてすごくわかりますね。それを目指すための方法論も彼は見えていると思うので、この先の作業がすごく楽しみなんです。

鳥山:録り方、それと、楽器の鳴らし方なんじゃないかな。最近の、たとえば、ロバート・グラスパーやクリス・デイヴの音にも「濁点」は感じるけど、僕が知る「濁点」とは違う気がする。ポール・サイモンの『ワン・トリック・ポニー』のスティーヴ・ガッドの音とかのほうが、やっぱり聴き慣れた「濁点」なんですよ。それが今、すごく新鮮で。

ーーそこはたぶん、若い世代も興味津々でしょうね。

神保:このプロジェクトを立ち上げるとき鳥山くんが、「世代をつなぐハブになるような音楽活動をしたい」と言っていたんです。我々が年寄りというわけじゃないんですけど(笑)、実際今って世代間で音楽が分断されているような状態ですよね。それを今一度つなぐことができれば、面白い動きになっていくんじゃないかと。

鳥山:そのためにも我々がオープンでいないとね。今回ゲストに、Kan Sano、mabanuaを迎えることはもう決まってるんですよ。

ーーそれは斬新なコラボになりそうです。

神保:プロジェクトページの閲覧者の年齢層の山も、今、18~25歳にあるそうで、興味深い現象だなと。

鳥山:シティポップ人気と関係してるかもしれないですね。実は2018年頃からその匂いはありました。ロンドン在住のDJから、僕のソロ作品をコンパイルしたいなんていうコンタクトもあったし。なので海外も視野に入れて、今、東南アジアのシンガーとかもウォッチしてる最中です。新作CDはPYRAMID CITYの市民しか手にできないんですけど、通常盤はサブスクでも聴けるので、海外でもプレイリストに入れてもらえるような作品にしたいです。

ーー和泉さんのプレイが蘇るということも?

鳥山:あります。彼が残したソロの未発表曲から、ご遺族と所属事務所に許諾を得ていただいたものがあるので、技術的な調整は必要ですけど、絶対に一緒に演奏します。

ーードラマー、ギタリストとしてはどう臨みたいですか?

神保:僕は普段、たくさんのタムに囲まれた大きなセットを使ってるんですけど、PYRAMIDではあえてシンプルなセットにしているんですね。PYRAMIDならではのグルーヴを、何かまた面白く聴かせることができたらいいなと思ってます。

鳥山:ギターの音色のイメージは、70~80年代のエリック・ゲイルとかラリー・カールトンかな。当時の音って丁寧なんですよ。もちろん、勢いは絶対必要で、今回もベーシックは「せーの」で録るんですけど、でも、丁寧っていう。さっき神保くんも言ったように、今はPCベースの作業だからよほどのことがない限りズレない。昔は「ちょっと合ってないよね」っていうのがよくあって。

神保:そう! アナログだし、基本ドラムのパンチインはできないから、「これでいいのかな?」って場面はよくありました。

鳥山:にも関わらず、最終ミックスをすると、「あら不思議。ちゃんとしちゃうじゃない」っていう(笑)。

ーーアナログ時代の音楽のマジックですね。

鳥山:たぶん、ミュージシャン同士、その場のグルーヴを捉えて本能的に調整してたんだろうなと。そういう、一見とっ散らかっていたところから生み出されるアンサンブルに挑戦してみたいんです。最初からきれいにまとまっちゃってるのってなんかつまんないでしょ。逆に言ったら、どれだけ我々がとっ散らかれるかって話なんですけど(笑)。

神保:知らず知らずPCに飼い慣らされちゃってますからね。

鳥山:でも、神保くんはよく、「グルーヴは完全な丸じゃなく、ラグビーボールの楕円がゴロンゴロンといく感じ」と言ってるよね。

神保:はい。時間軸に溝を切っていくイメージなんです。PCのグリッドの縦に合わせていくんじゃなくて。

鳥山:ドラムよりベースがちょっと後ろだったり、ギターがちょっと前だったりというバンドのクセみたいなものも、大事にしたいと思ってます。クインシー(・ジョーンズ)の黄金コンビであるジョン・ロビンソン(Dr)とルイス・ジョンソン(Ba)だって、今、聴くと合ってなかったりするんですよ(笑)。でも、それでもよしになる音楽なんです。そこを目指したい。夏の終わりまでにはシングル、アルバムとお届けできると思うので、ぜひ、楽しみにしていてください。

■PYRAMID クラウドファンディング情報
『ファンと一緒につくる。PYRAMIDアルバム制作プロジェクト』
詳細はこちら
https://readyfor.jp/projects/PYRAMID

■PYRAMID オフィシャルサイト
http://paw.hats.jp/artist/?id=9

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる