Kanaria×のう、柊キライ×WOOMA、syudou×くろうめ、シキドロップ×革蝉……音楽家×絵師の名タッグが生む独創的な音楽作品

syudou×くろうめ

【可不】キュートなカノジョ【syudou】
【初音ミク】カレシのジュード【syudou】

 「毒々しさ」と言えばこちらも外せないのがsyudou。「邪魔」、「ビターチョコデコレーション」などヒットを飛ばしたsyudouの楽曲のMVを数多く手がけてきたのがくろうめだ。フリルやレース、ぬいぐるみにロリポップなどかわいいアイテムをふんだんに盛り込む一方で、毒々しさやほの暗さを感じる色使いで、可愛さとダークさの入り混じったイラストを生み出してきた。いくつもの曲でタッグを組んできた2人だが、ここでは「キュートなカノジョ」と「カレシのジュード」の2曲を取り上げたい。

 「カレシ視点」と「カノジョ視点」で対になっているこの2曲は、タイトルのかわいらしさに反して「浮気」がテーマになっており、不穏さが匂い立つ。それはイラストにも散りばめられていて、「キュートなカノジョ」にはピンクのロングヘアのキャラクターが、「カレシのジュード」には緑のショートヘアのキャラクターが登場する。タイトルをそのまま捉えると、ピンクの髪が「カノジョ」、緑の髪が「カレシ」のように思われるが、よくよくイラストを見ると、「カノジョ」のイラストにはのどぼとけがあり、「カレシ」にはなかったりする。

 さらに、「カレシのジュード」のMVのラストでは、エレベーターに乗っている「カレシ」の背後が真っ赤に染まり、「カノジョ」が登場。その時歌われている歌詞は〈背中がふと熱くなった/詰んだ〉と、バッドエンドを想起させるものになっている。どちらが「カレシ」で「カノジョ」なのか、曲が描いているのはどんなひと幕なのか、イラストと楽曲の組み合わせが謎を深める。考察し始めると2曲を無限ループしてしまうのでご注意を。

シキドロップ×革蝉

シキドロップ - 名付け合う旅路 / shikidrop - Nazukeau tabiji

 そして、新たにリリースされたばかりのアニメーションMV楽曲として取り上げたいのが、2月9日公開のシキドロップ「名付け合う旅路」だ。

 映像を手がけたのは革蝉。手描き感を残した線とやわらかな色合いが温かみを感じさせるイラストレーターで、人間でない生き物や、現実とは違ったファンタジックな要素が詰まった、少し不思議な世界観が魅力だ。

 「名付け合う旅路」はアニメーションMVとなっており、変わってしまった世界で普通の人間であった青年が人外の生き物に変異し、行き場を求めるように旅立つ様子が描かれている。荒廃した世界を1人歩き続ける男の様子は絶望的な状況に置かれているようにも思える。だが、それを包む楽曲は、〈そしたら目を閉じて 少し眠ろうか/もういいんだよ〉、〈だから逃げよう せめて生きよう〉と男のすべてを見守り、肯定するような歌詞になっている。柔らかなピアノのメロディと革蝉の優しい色彩とも相まって、日差しが差し込むような優しさが感じられる作品に仕上がっている。

 「名付け合う旅路」の男の物語は、配信ジャケットにも存在する。2月2日にリリースされた同名アルバム『名付け合う旅路』にも収録され、先行リリースされていた「残響」「傘」「銀河鉄道」とアルバム『名付け合う旅路』のジャケットを並べてみると、男が脱皮するように人間から別の存在へと進化していく過程が描かれているのだ。

 MVの中では荒廃した世界と人外をモチーフとしたファンタジックな世界観が描かれているが、世界が目まぐるしく変わっていくこと、生きている限り自分自身も変化し続けなければならないことは、現実世界も同じではないだろうか。男の旅路を見守りつつ、自分自身にも重ねながら聴いてみてもいいかもしれない。

 音楽と映像、二つが組み合わさることで解釈の幅が広がり、考察を深めながら繰り返し視聴することで、さらに作品に没入していく。そんな中毒性の高い作品ばかりだったのではないだろうか。絵師、音楽家、ボーカリスト、日々新しい才能が誕生しつづける動きの活発な界隈でもある。爆発力のあるコラボが生まれる未来が、まだまだ期待できそうだ。

シキドロップ『名付け合う旅路』

■リリース情報
シキドロップ 4thミニアルバム『名付け合う旅路』
2022年2月2日(水)配信リリース
配信先リンク:https://lnk.to/SKDP_NT
<収録曲>
1.行きずりキャラバン
2.青春の光と影
3.傘
4.残響
5.育つ暗闇の中で
6.名付け合う旅路
7.銀河鉄道

■関連リンク
https://www.shikidrop.com/

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