SHIROSE(WHITE JAM)に聞く、攻めた表現を貫く理由 「たった一部分を10年後も覚えているような曲にしたい」
3人組ユニット・WHITE JAMのメンバーであり、ソロのシンガーソングライターとしても活躍するSHIROSE。彼はKis-My-Ft2、ジャニーズWEST、AAA、Da-iCEなど数々のアーティストへの楽曲提供で知られる人気作家でもある。最近ではSHIROSEが作詞したSnow Manの「君の彼氏になりたい。」「僕の彼女になってよ。」がジャニーズファンの間で大きな話題を呼んだことも記憶に新しい。自身の楽曲も含め、短いセンテンスながらも鮮明に光景が浮かび上がるワードセンスやインパクトのあるフレーズが持ち味だ。
今回リアルサウンドではSHIROSEにインタビュー。フレーズの強さが際立つ楽曲をどのように制作をしているのか、攻めた表現を貫く作家/アーティストとしての姿勢などたっぷり話を聞いた。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
「君彼」で挑戦した“新しい言葉の設計”
ーーSnow Man「君の彼氏になりたい。」「僕の彼女になってよ。」はどのようにして作られた曲なのでしょうか。
SHIROSE:もともとSnow ManさんのことはKis-My-Ft2さんの「CHUDOKU」をカバーされていたので知っていて。すごく良いアーティストだなと思っていました。「君の彼氏になりたい。」について具体的なオーダーはなかったんですけど、当時「CHUDOKU」のような新しさのある曲を作ってほしいというオーダーが続いていた時期だったので、そういう方向性がいいのかなという漠然としたイメージはありましたね。あと、僕の作家としてのタイプとして、アーティストさんが新しいことをしたい時に起用されることが多いので、聞いたことのない破壊力のある作品にするのはマストだろうなと思っていました。
グループ性も新しく、メンバーのみなさん全員が歌唱力のある貴重なグループなので、新しいことに挑戦できるポテンシャルは感じていました。Snow Manさんはメンバーのみなさんがかなりクリエイティブな集団で、なかには振り付けを作るメンバーもいるほど。そういうアーティストは、新しいことを乗りこなす力もあるので、“例えばセリフを入れても行けるだろうか? きっとそれも乗りこなせるはずだ”といったところから書き進めました。なので、セリフを入れようというアイデアは最初からありましたね。
ーーセリフパートは2曲の大きなポイントになっていますね。
SHIROSE:曲の中に〈チューして?〉とかいうセリフが出てくることってあまりないと思うんですけど、そういうことも言えてしまうグループだなと思ったし、メンバーのみなさんが言ったらどうなるんだろうという好奇心で書きました。設計の新しい音楽を世の中に投下する時って、新しければ新しいほど戸惑われることが多いから、きっと今回もファンの方はビックリするだろうなと思ったんですけどね。実際、公開された時は「この曲どう聴けばいいんだろう」みたいな戸惑いも感じましたが(笑)、そういった反応を見ながら「いい感じにみんな驚いているな」とニヤニヤしていました。その後は曲を大事に育ててくださったメンバーのみなさんの表現力のおかげで、あと大切に聴いてくださったファンのみなさんのおかげで、だんだんじわじわと人気が出ていったのかなと。
ーーありそうでなかった、かなり攻めた曲ですよね。
SHIROSE:二人きりのパーソナルな表現、恋愛が深くなっていく感じとちょっとコミカルな部分、そのバランスが作りやすいアーティストだなと思いました。2作目の「僕の彼女になってよ。」はメンバーのみなさんから「続きを作ってほしい」という声があったそうで作ることになったのですが、「よし来た!」と思いました。「君の彼氏になりたい。」を作った時から自分の中には続きがあったので、お声がけいただいた時はすごく嬉しかったです。
ーー続きを書きたいと思っていた当初の内容が「僕の彼女になってよ。」に反映されている?
SHIROSE:最初から〈僕〉と〈君〉が部屋でYouTubeを見ているイメージはあったんですけど、1曲目ではそこまで二人の関係性がたどり着けずいい感じに終わったので、次書く時はYouTubeを見ているところから始まりたいなと。
ーー「君の彼氏になりたい。」のサビにある〈むりむりむり、やっぱむり〉は初めて聴く方に対しても強いインパクトを残していますが、こちらはどのように生まれたのですか?
SHIROSE:過去10年にも、向こう10年にも現れない強いサビを作ろうと思いました。このサビ頭の〈むりむりむり、やっぱむり〉という11文字の部分って、普通の作詞家なら文章の11文字を書くと思うんですよ。11文字ならなんでも良くて「そんなことは言えないよ」とか「君のことが大好きだ」とか、そういうサビが来るのが普通です。それに対して、〈むりむりむり、やっぱむり〉というのは〈むり〉というフレーズが3回きた後、3文字の〈やっぱ〉をはさんで、最後に〈むり〉をまたリフレインで使う……という新しい言葉の設計になっているんです。これは過去のJ-POPにはなかった考えだったので、このフレーズができた時は「絶対ヒットする」と思いました。
こういうフレーズを考えるのって、いい歌詞を書くことよりも難しいんですけど、思いついた時は自分でもゾッとするし、日本のアーティストやクリエイターからもいい反応をもらえました。海外の作曲家の方も「またニュールールを作ったね」と連絡をくれたりしましたね。だけど、人間という生き物は新しいものを怖がる生き物なので、公開した瞬間は逆風もあるかもしれないな……と思いました。そこで重要になってくるのが、歌唱力と爆発的な好奇心なんですけど、Snow Manさんというグループにはそれがどちらもあると思って信じることができましたし, 彼らの曲じゃなかったら、ここまで書ききれていなかったです。5歳の子が聞いても、外国の方が聞いても、たった一回だけしか聞いていない状態でも、このフレーズを覚えられるような、そんな力のあるフレーズを求めて、ここにたどり着きました。
あとアフターフックの〈8時9時……〉の部分は時計をモチーフにしたんですけど、これも新しさがあると思います。普通アフターフックは「ららららら」といった意味のないリフレインを載せるという常識があるので。だけど時間を表現する時計のモチーフを使えば、人にその空間とか過ごしている時間をイメージさせることができるなぁと思ってそんな感じにしました。〈チューして?〉のセリフとの相乗効果で今までのJ-POPにない、人に一回で伝わる強い設計になっていると思います。「僕の彼女になってよ。」もそうですね。〈「ギュッてして、いい?」〉と言いたいから、その後の言葉はシンプルにして「サビ前のセリフ込みでサビ」という構成にしています。多分聴いている方もそこが残っているんじゃないですかね。
ーーセリフから逆算したサビの歌詞だったんですね。
SHIROSE:そうですね。ここ数年の大衆ポップスにセリフはあまり出てきていなかったので、新鮮に受け取ってもらえているんじゃないかなと。曲作りで僕が大事にしているのが、「いい曲を1曲作ろう」というより「どこの部分が残るか」ということなんです。人の記憶に残るのはたった一部分だったりすると思うんですよ。でもその一回しか聞いていない、たった一部分を10年後も覚えているような曲にしたい。そういうパーツや、言葉の設計を作ることが僕の役割です。いい歌詞を書くというのは当たり前で、文の設計自体を新しくしていくような曲作りをしています。
ーー「君の彼氏になりたい。」は昨年末に開催された『Johnny's Festival ~Thank you 2021 Hello 2022~(ジャニフェス)』でKing & PrinceとSnow Manがコラボパフォーマンスで披露し話題になりました。
SHIROSE:嬉しいですね。もともとワンフレーズで会場がつぶれるくらい聴いた方々を叫ばせたいと思って作った曲なので(笑)。今はマスク越しですけど、ファンのみなさんは本当は叫びたいだろうな。でも、声を出すのを我慢してもらっているのもシチュエーションとしては、なんかいいですよね(笑)。Snow Manさんがくれたご縁で、King & Princeさんとも間接的に関わることができて嬉しいです。というかそのコラボは、僕の母トクで、家族からもめっちゃ連絡きました。「そのコラボすげーっ」て。
ーー(笑)。メンバーの歌唱を実際に聴いてみて、何か感じたことはありますか。歌いこなすのが難しい曲ではありますよね。少しでも恥ずかしがってしまったり、気持ちが乗せられないと成立しないのではないかなと。
SHIROSE:まず歌が全員上手くて、それぞれの声が持っている新しさがありますよね。〈「おいで」〉とか〈「ぎゅっとして、いい?」〉とかのフレーズは、J-POP的にアリかナシかでいうと、結構ナシだと思うんですよ。歌う上での難易度は高い。でもそれを表現力でアリにできる歌唱力がある。このセリフ部分の大切さを把握する力もありました。それはこのグループが持っている特別な力だと思います。2作を通してメンバー全員が満遍なくセリフパートを歌ったわけではないので、3作目も機会があればぜひ作りたいです。
ーー先ほどお話にも出てきたKis-My-Ft2「CHUDOKU」の他にも、ジャニーズWEST「SHI IS MY...」「one chance」、AAA、Da-iCEなど数多くの楽曲を手がけています。それぞれのアーティストごとに意識していることはありますか?
SHIROSE:Kis-My-Ft2さんだったら“安心感”、ジャニーズWESTさんだったら“物事を変えていくパワー”。Da-iCEさんに関しては歌詞というよりは“7キロヘルツ”。切り裂くような高音パートが記憶に残るような音楽、歌詞にしたいと思っています。AAAさんは僕が上京したての子供の頃に関わらせてもらっていて、「新しいavexサウンドを作ってほしい」というオーダーだったのでそれを意識して作っていました。曲づくりを始めるときはそういったアーティストごとの特徴を言語化するところから始まります。