近藤玲奈、歌と朗読による『11次元のLena』の物語 コンセプチュアルなステージ展開した2ndワンマンレポ
声優アーティストの近藤玲奈が、1月29日に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライブ『近藤玲奈 2nd LIVE〜11次元のLena〜』を開催した。
アニメ『ドロヘドロ』のニカイドウを始め、『錆喰いビスコ』や『ホリミヤ』などの人気作品に出演し、2021年4月にはシングル『桜舞い散る夜に』でアーティストデビューを果たした近藤玲奈にとっては、アーティストとしてのデビュー前である2021年1月30日に行われた『近藤玲奈 1st LIVE ~Listen~』以来、ちょうど1年ぶりとなるライブ。昼夜2公演の開催に加え、急遽、生配信も実施した本公演。昨年12月にリリースされたアルバム『11次元のLena』の世界観を舞台化したようなコンセプトライブとなっていた。
本編のステージ上で歌っていたのは、孤独を抱えた中学生の“僕”と“玲奈”、そして、11次元の存在で玲奈の心のなかにいる“Lena”の3人。コンセプトアルバム『11次元のLena』のストーリーを補完するような朗読と新曲を織り交ぜたセットリストで、MCは一切なし。アルバムのジャケットと同じセーラー服に身を包んだ近藤玲奈は、自分自身ではなく、あくまでも“僕”や“玲奈”や“Lena”に扮し、歌や朗読を通して、『11次元のLena』の物語を具現化する役目を担っていた。
開演時間になると客電が暗転し、浅井真(Gt)、西川響(Ba)、柴田尚(Dr)からなる公式バッグバンドのリアジュボーンが登場。続いて、近藤玲奈がステージ中央に現れた。温かく大きな拍手で迎えられたが、彼女は俯いたままで真っ直ぐに立ち、微動だにしない。各楽曲のバックトラックに使われている効果音をコラージュしたような不穏でノイジーなSEが鳴り響く中、「気づいたら、この世界の全てが敵になっていた……」と感じている“僕”の戸惑いや苛立ち、苦しみや痛み、そして、どう足掻いても拭いきれない辛さが「Overture」としてモノローグで語られ、コンセプトアルバムの1曲目「僕だけが消える世界」が始まった。〈僕だけが消えちゃう世界/あるいは僕以外が消える世界〉。脳裏に浮かぶ“ある考え”を追い払うかのように頭を振りながら時に消え入るようなウィスパーヴォイスで、特に悲痛な叫びのように狂おしく、激情のままに熱唱し、“僕”が学校の屋上に駆け上がっていったことが知らされた。
視点は“僕”から“玲奈”に。「Interlude1」の朗読では “玲奈”の葛藤が吐露された。普通の優等生の女の子として学校生活を送っていた彼女が「本当の私は?」と自問自答すると、黒い感情に侵されそうになる彼女の前にもう一人の“ワタシ”が現れる。メタリックでインダストリアルなハードロック「Erase Me」では、みんなの前では心に蓋をして笑顔で過ごす“私”と、誰も知らない“ワタシ”が対峙し、交錯し、やがてトリガーが引かれる。銃声が鳴り響き、心音が上昇し、〈誰も知らないワタシを/私が殺した〉ところで曲は終わる。玲奈はペルソナを脱ぎ捨て、本当の私を取り戻したのだろうか……。