Kroi、2マンツアー『Dig the Deep』ライブハウス包んだ熱を帯びたグルーヴ マハラージャン、在日ファンク迎えた東京2公演

 どんぐりず、韻シスト、CHAI、ニガミ17才、マハラージャン、在日ファンクーーこの2マンツアー『Kroi Live Tour 2021-2022 “Dig the Deep”』のラインナップが発表された時、全部見たいと率直に思った。というのも、どのバンドも1バンド1シーンのような“属せなさ”が共通しており、同時にアーティストのKroiに対する認知の高さも察することができたからだ。今回、セミファイナルとファイナルの東京2公演を見て、その予感は確信に変わった。さらに“高度な音楽性を持ちつつ、どこまでも自由で掴みきれないキャラが結集したバンド”なだけではない野望すら見えたのだ。

 初日、マハラージャンは初々しさと老獪さが並列したようなパーソナリティが立っていた。マハラージャンはDaft PunkとJamiroquaiが音楽的なベースであり、Kroiは千葉大樹(Key)加入前の4人が初めて一緒に入ったスタジオで合わせたのがその2組の曲。まるで従兄弟のようではないか。16ビートの軽快なカッティングギターの上手さに驚きつつ、元サラリーマンならではの、本音と建前が交錯する歌詞世界はライブでもキャッチーで、Kroiのファンの心も掻っ攫おうとかなり真っ向勝負のステージングが爽快。「いいことがしたい」や「セーラ☆ムン太郎」など、おなじみのナンバーでフロアを踊らせつつ、新曲「先に言って欲しかった」はファンクやディスコソウル以外のルーツであるR&Rリバイバル感のあるハードチューン。この新曲がなかなかのカオスを呈し、アーティストとしての狂気を垣間見た気分だ。

 Kroiは高度なパス回しがデフォルトのプレミアリーグみたいなチームだと常々感じるのだが、冒頭に「pith」というじわじわ血を沸かせていくミディアムチューンを配し、内田怜央(Vo/Gt)のワイルドなボーカルで締める。続いて「Balmy Life」に突入。内田のラップはさらに切れ味がよく、千葉のトーキング・モジュレーターを使ったコーラスも洗練の極み。マハラージャンをサポートした辣腕・皆川真人(Key)もKroiの千葉もシンセサウンドのユニークさで共通する部分が多く、マニアックなフレージングも踊りながらいつのまにか楽しんでいた、そんなオーディエンスも多かったのではないだろうか。

 EP『nerd』のツアーでもあり、同作から「blueberry」以外は全て披露したが、すでにライブアレンジに進化した「Rafflesia」はサイケデリックなシンセや内田のボーカルが不思議な浮遊感すら生み出す。『nerd』からの楽曲が増えたことで、よりサイケ&フュージョン、SF的なファンク色が増幅した印象だ。ライブではお馴染みの「Monster Play」では内田、長谷部悠生(Gt)と益田がギターソロ獲得のためにじゃんけん。勝負の結果、ソロを披露したのは長谷部だったが、メンバーの計らいにより益田がブルージーなソロを弾き、内田がドラムセットに座るというスイッチも。本編ラストにアップチューンではなく、せつなさを湛えた「WATAGUMO」をしっかり聴かせたことも、天の邪鬼なわけじゃないだろう。ネオソウルやジャズが溶け合ったアレンジに乗るいまという時代を象徴する現実感のないロマンス。高い集中力で聴き入るフロアを見て、今のKroiの求心力を確認した。

関連記事