『ハッピーエンドへの期待は』インタビュー
マカロニえんぴつ、“心の動き”を表現し尽くす音楽 イメージの共有が引き出したバンドとしての強さ
僕らが歌う青春は若さではなく、満たされたいという気持ち
ーーアルバムのタイトル曲「ハッピーエンドへの期待は」についても聞かせてください。映画『明け方の若者たち』の主題歌ですが、映画のストーリーと強く重なった楽曲ですね。
はっとり:完全に寄り添って作ってますね。原作の小説もそうなんですけど、季節の描写が緻密だったり、あとは信じていたもの、安心できる場所には制限時間があって、それが過ぎるとバサッと閉ざされて、絶望に放りだされる感じとか。季節の移ろいのなかで関わる人も変わって、それを受け入れたり、諦めたりしながら進んでいくーーそれを曲として表現するために、プログレッシブにならざるを得なかったんです。
ーー映画では何者にもなれない時期の葛藤、学生ではなくなり、社会に投げ出されたときの失望もリアルに描かれていて。あの切ない青春感もマカロニえんぴつの音楽と共通しているのでは?
はっとり:僕らは若さを歌っているわけではないんですよ。青春=若さになりがちなんだけど、そこじゃなくて、何かに焦がれている状態や足りない状態、“満たされたい”という気持ちを歌っているというか。そこは『明け方の若者たち』とも相性が良かったんだと思います。
ーー劇中では代表曲「ヤングアダルト」も使用されていて。「ヤングアダルト」を作った時期と現在では、バンドの状況はかなり違いますよね。
はっとり:そこまで違うとは思ってないですけどね。「ヤングアダルト」を作った頃には、CDJ(『COUNTDOWN JAPAN』)やロック・イン・ジャパン(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』)にも出てたよね?
田辺:うん、出てたね。
はっとり:それだけでも大したもんだなと思ってたんですよ。ある程度は認めてもらえた感覚があったし、いったんは満たされたというか。だからこそ、「ヤングアダルト」みたいな曲が書けたんですよね。これは僕の考え方なんですけど、自分が持てる愛情の量は決まっていると思っていて。愛情がいっぱいになって、溢れたら、誰かに渡さなくちゃいけないと思うんです。普通だったら大切な人に感謝を伝えたり、会いに行ったりするんだろうけど、幸い僕は音楽が作れるので、楽曲という形で渡しているんだろうなと。「ヤングアダルト」を作っていた頃も、そういう状態だったと思います。そこからまた、愛情への飢えを感じはじめるんですけど(笑)。
ーー「愛情が溢れたら、誰かに渡す」って、素晴らしいですね。今の時代に必要な考え方だと思います。
はっとり:『ペイ・フォワード 可能の王国』という映画も、そういうメッセージの作品で。恩着せがましくなるのはイヤなんだけど、マカロニえんぴつの曲を聴いた人が、自分を少しでも好きになれたり、人を信じられるようになったらいいなと思ってますね。まあ、それも後から付けた理屈なんですけど(笑)。
ーーリード曲「なんでもないよ、」も、溢れ出す愛が伝わってくる楽曲。アルバムを象徴する楽曲の一つだと思いますが、いつくらいに書かれたんですか?
はっとり:断片は2021年の6月の終わりくらいにできて、9月、10月に完成したのかな。突発的に作って、すぐレコーディングした感じもありますね。
ーーそのタイミングでこんなに素晴らしいラブソングができるのは強いですね。
はっとり:今回のアルバムの中で、愚直なラブソングはこの曲だけですからね。僕の見解ではすべての曲がラブソングなんですけど、一人に向けたという意味では、「なんでもないよ、」が唯一なのかなと。「キスをしよう」は弾き語りだし、ずっと前からライブで歌っている曲なので。
ーー「なんでもないよ、」は先行配信もされ、大ヒットを記録しています。
田辺:そうなんですよ。正直、ここまで爆発的に広がるとは予想してなかったです。
はっとり:バカやろう、まだまだいくよ。
田辺:そりゃそうさ(笑)。「なんでもないよ、」は、初めてデモを聴かせてもらったときから、今までとは違う感覚があって。歌詞がスッと入ってくる感覚があったし、アレンジを考えるときも歌詞を際立たせることを意識してましたね。
高野:デモはアコギの弾き語りだったんですけど、メロディと歌が本当に素晴らしくて。ドラムはサンプリングなんですが、ベースもできるだけシンプルにして、歌詞が伝わるように工夫しました。
はっとり:ピアノの弾き語りみたいな感じで聴かせたかったんですよね、この曲は。
長谷川:はっとりくんのイメージを汲み取りながら、二人で歌っているような感じを表現したくて。はっとりくんが強く歌えばピアノも自然に強くなったり、とにかくシンクロ率を高めたかったんです。レコーディングでははっとりくんが肩を組んでくれて(笑)、顔を見ながら弾いてました。
はっとり:わざと大げさに身振り手振りして。サビまではクリックを聴いていないので、とにかく呼吸を合わせることが大事というか。
長谷川:フレーズ自体も難しいし、なかなか大変でした(笑)。
はっとり:呼吸を合わせることは、ツアーでもずっとやってましたからね。ライブで培った大ちゃんのスキルも活かせたし、「やっぱりバンドだな」と改めて実感しましたね。デビュー当時に「なんでもないよ、」みたいな表現はできなかったと思うし、今ならやれると思ったから頼んだので。
長谷川:ライブでこの曲を演奏し終わると、ちょっとホッとします(笑)。
ーーライブで得たものも反映されているんですね。2021年5月には横浜アリーナで1日2公演を行いましたが、あのハードルを越えたことも活かされてるのでは?
はっとり:活きてないと困りますよ(笑)。ワンマンライブは体力も集中力も必要だし……。しかも、すごく高いキーでメロディを作っちゃうんですよ、まちがえて。
田辺:まちがえてるんだ(笑)。
はっとり:声を張って歌うのが気持ちいいので。1曲録るのはいいんですよ? でも、ワンマンライブだと何曲もやらなくちゃいけないじゃないですか。それを1日2回やるのは大変だったし、やり切ったことはデカかったと思います。
ーーライブにおけるフィジカルの強さも高まったのでは?
はっとり:初めてライブを観た人に「こんな感じなんですね」って驚かされることもあるんですけど、そこは舐めてもらっちゃ困るというか、マカロニえんぴつはライブバンドなので。声もデカいんですよ。(奥田)民生さんの遺伝子があるので(笑)。
結成10周年、マカロニえんぴつの理解者が増えたことも自信に
ーー2021年のマカロニえんぴつは、ライブ、レコーディングはもちろん、メディアへの露出も増えて。全方位的に広がった1年で得たものが、すべてこのアルバムに集約されている印象もあります。
はっとり:僕らは立ち向かっただけなんですけど、必要としてくれた人、欲しがってくれた人がたくさんいてくれたということだと思います。テレビに出ているマカロニえんぴつを求めてくれる人もいたし、「フェスで観たい」とか「ワンマン早くやってくれ」とか、いろんな声があって。いいお客さんに愛してもらっているし、報われたバンドだなと思います。
田辺:本当にそうだよね。
はっとり:この1年は一瞬で過ぎたし、細かいことは正直覚えてないんですけど(笑)、これだけの活動はなかなかできないと思います。まだ渦のなかにいるし、達成感はないんですけどね。あと、打ち上げがないのもデカい(笑)。
ーーライブの打ち上げ、必要ですか。
はっとり:必要だったんだなって思います。ライブの打ち上げで語らって、褒め合って、「がんばってるよな、俺たち」って確認し合って。この2年はそれがまったくなかったから、達成感を感じないまま、すぐに次に向かっていた感じなので。
ーーそして2022年は結成10周年イヤー。10周年という数字については、どう感じてますか?
はっとり:“マジか”ですね(笑)。
田辺:もう10年なんだ? っていう。
はっとり:結成のときから変わったのはメンバーが一人抜けたことくらいで(笑)、周りが思うほど成長している実感はないんですよ。あと、最初の1、2年はすごく長かった気がします。「このしんどいの、いつ終わるんだろう?」って。2016年くらいまではそんな感じだったかな。
ーー結成4年目くらいですね。
はっとり:その後はホントにあっという間で。成長しているかどうかはわからないけど、立ち止まらずに進んでこれたのはよかったと思います。もちろん、理解者が増えたことも大きいです。スタッフ、チームもそうですけど、なんといってもマカロッカー(ファン)ですよね。
田辺:最初はバンドメンバーだけだったからね。
はっとり:うん。もっと言えば、最初の頃は真ん中で歌っていても孤独を感じてたし、一人ぼっちだったんですよ。誰も理解者がいないと思っていたというか……。自分が伝えることをサボっていたのもあるし、バンドに憧れたくせに、最終的な判断や解決は全部ひとりでやってしまっていたので。お客さんに対しても「どうせ伝わらない」と思っていたし、そんなヤツに対して、耳や手を貸してくれる人はいないですよね。今は人を信じることを怖がらなくなったし、自分自身の心的な成長もあると思います。
ーー特にここ2〜3年のバンドの成長ぶりはすごいですよね。
はっとり:4人体制になってからですね、それも。その前は自分たちで舵を取ろうとしてなかったし、「また抗えず流されてしまった」みたいな感じだったんですけど、2018年からはしっかり帆を広げて、「行きたい方向はこっちなんです!」と風向きに逆らうこともあって。それが形になってきたのが、ここ2年くらいなんだと思います。
ーー2022年2月からは日本武道館2Daysを含む全国ツアー『マカロックツアー vol.13 〜あっという間の10周年☆変わらずあなたと鳴らし廻り!篇』がスタート。いい状態で10周年に臨めそうですね。
田辺:そうですね。“鳴らし廻り”はvol.1のツアータイトルを踏襲してるんですよ。
はっとり:楽しみですね。最近はライブでも居心地よく歌っているので(笑)。僕が楽しそうに歌ってると、メンバーも楽しそうなんですよ。
高野:はっとりがいちばん歌いやすいように環境を作ってますからね。イヤモニを使っているのもそうで、ドラムやキーボード、いちばん遠くにいるよっちゃん(田辺)のギターもバランスよく聴けるようになったことで、演奏も安定してきて。
長谷川:そうだね。すべての音が聴こえないと演奏がズレることもあるし、はっとりくんも歌いづらいので。
高野:つまり、はっとりが歌いやすいように僕たちが……。
長谷川:まとめてあげてるということです(笑)。
はっとり:最近、演奏のバラつきがなくなったのはそういうことだったのか。早く言ってよ(笑)。
高野:曲の良さをいちばん伝えるのは歌だし、歌詞とメロディですからね。
ーー愛がありますね。
はっとり:ありましたね(笑)。ツアーでも気持ちよく歌いたいと思います。あと、打ち上げもやりたい。
長谷川:早くできる日が来るといいなぁ。
■リリース情報
Major 1st Full Album
『ハッピーエンドへの期待は』
2022年1月12日(水)リリース
初回生産限定盤[CD + Blu-ray]
<三方背スリーブケース仕様>
¥5,500(税込)
初回生産限定盤[CD + DVD]
<三方背スリーブケース仕様>
¥5,500(税込)
通常盤[CD]
¥3,300(税込)
<収録曲>
1.ハッピーエンドへの期待は (映画「明け方の若者たち」主題歌)
2.生きるをする (TVアニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」オープニング主題歌)
3.八月の陽炎 (大正製薬「コパトーン」CMソング)
4.好きだった(はずだった) (TBS系『王様のブランチ』2021年4月〜9月テーマソング )
5.メレンゲ (JR SKISKI 2020-2021 キャンペーンテーマソング)
6.はしりがき (「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」主題歌)
7.キスをしよう
8.トマソン (ブルボン「濃厚チョコブラウニー」CMソング )
9.裸の旅人 (コールマン WEB CM「灯そう」テーマソング)
10.TONTTU
11.ワルツのレター (TBS系『news23』新エンディングテーマ)
12.なんでもないよ、
13.僕らが強く。
14.mother (TVアニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」エンディング主題歌)
<初回特典Blu-ray・DVD収録内容>
「マカロックツアーvol.11 ~いま会いに行くをする篇~ 」 2021年5月23日 横浜アリーナ公演 ライブ映像
1.生きるをする 2.遠心 3.眺めがいいね 4.溶けない 5.恋人ごっこ 6.STAY with ME
7.春の嵐 8.mother 9.メレンゲ 10.八月の陽炎 11.ルート16 12.ノンシュガー
13.ブルーベリー・ナイツ 14.カーペット夜想曲 15.ミスター・ブルースカイ En1.はしりがき
「マカロックツアーEXTRA in 春日部 ~しんちゃんも遊びに来るゾ!オラたちとおしり合いになってクレヨン♡篇~」
1.はしりがき 2.レモンパイ 3.オラはにんきもの
「ハッピーエンドへの期待は」発売記念 『逆境を乗り越えてハッピーエンドになれ!』
■最新ツアー情報
『マカロックツアーvol.13 ~なんたって10周年ツアーだゼ?9公演追加しました篇~』
5月20日(金)香川・ レクザムホール 大ホール(香川県県民ホール)
5月21日(土)愛媛・ 愛媛県県民文化会館 メインホール
5月27日(金)富山・ オーバード・ホール
5月28日(土)福井・ フェニックス・プラザ 大ホール
6月2日(木)広島・ 広島文化学園HBGホール
6月3日(金)福岡・ 福岡市民会館 大 ホール
6月10日(金)宮城県・ 仙台サンプラザホール
6月12日(日)岩手県・ 岩手県民会館 大ホール
6月16日(木)北海道・ カナモトホール (札幌市民会館)
チケット料金:全席指定6,800円(税込)
※4歳以上チケット必要。3歳以下でも席が必要な場合は有料。
※枚数制限:1人4枚まで
『マカロックツアーvol.13 ~あっという間の10周年☆変わらずあなたと鳴らし廻り!篇~』
2月15日(火)東京・日本武道館 開場17:30/開演18:30
2月16日(水)東京・日本武道館 開場17:30/開演18:30
2月26日(土)山梨・YCC県民文化ホール 開場16:00/開演17:00
2月27日(日)山梨・YCC県民文化ホール 開場15:00/開演16:00
3月4日(金)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール 開場18:00/開演19:00
3月5日(土)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール 開場16:00/開演17:00
3月12日(土)新潟・新潟テルサ 開場16:00/開演17:00
3月22日(火)大阪・大阪城ホール 開場18:00/開演19:00
3月23日(水)大阪・大阪城ホール 開場17:30/開演18:30
チケット料金:全席指定6,800円(税込)
チケット一般発売日:2022年1月22日(土)
※4歳以上チケット必要。3歳以下でも席が必要な場合は有料。
※枚数制限:1人4枚まで購入可能(日本武道館公演は3枚まで購入可能)
※注意事項など詳細はオフィシャルサイトにて
■関連リンク
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<締切:1月28日(金)>