幸祜、純粋な思いが純度の高い音楽へ 規格外のパワーで圧倒した1stライブ『PLAYER』レポ
スクリーンに《GUEST LOGIN》の文字が映し出され、幸祜と同じくV.W.Pのメンバーであるヰ世界情緒が並んで姿を現すと、客席からも静かなどよめきが。披露されたのは「刻印」。ヰ世界情緒のワンマンライブ以来2度目のパフォーマンスとなるこの曲について、「歌うとちょっぴり強い気持ちになれる」とヰ世界情緒が語ると、幸祜も「この曲を聴くと内側から何か燃えてくる。内なる闘志が感じられる曲」と語り、和やかにトークが繰り広げられた。
さらに2人目のゲスト・春猿火が登場し、幸祜×春猿火×ヰ世界情緒で「輪廻」を歌唱。ファンにはお馴染みのV.W.Pの代表曲だが、3人が「“突き進みグルーヴ感“みたいな」「胸熱で新鮮」と評したように、それぞれの魅力を立てたボーカルと圧巻のハモリで聴かせ、会場の熱気もさらに上昇する。
さらに幸祜×春猿火による新曲「古傷」が披露された。直前のMCでも「姉妹感みたいなものを感じる、親和してるみたいな」(春猿火)「いつもよりちょっぴり艶が出るような、大人になるような気分になる」(幸祜)と2人が語るように、息の合った大人なボーカルで、誰もが抱えるもどかしさや愛しさを織り上げた切ない1曲をじっくりと聴かせた。
ゲストがログアウトし幸祜も姿を消すと、スクリーンには新衣装『type-real アルナイル』の全容を見せる映像が流れ、新衣装を纏った幸祜が再びステージに登場。ミニスカートにハイカットのスニーカー、髪型もポニーテール、とこれまでの衣装とは違うカジュアルな姿は「Twitterや普段の等身大に近い」というコンセプトだという。この新衣装で歌われたのは「夜光を呼ぶ」と、新曲の「閃光の彼方」。Feryquitosによるこの2曲について「ボーカルが楽器のようなリズムとメロディラインになっていて歌うのがとても難しいんですけど、壮大感・スケール感があって大好きな曲です」と笑顔で語った。
ライブの終わりが近いことを告げ、「私と音楽についてお話しさせてください」と、幸祜として活動する以前にドラマーとしてバンド活動していたこと、周りが音楽から離れていってしまったこと、音楽活動が難しくなり諦めかけたことが語られた。「仲間がいなかったら、1人では無力でした。それでもそんな孤独感、自信のなさを埋めてくれたのは諦めようとしていた音楽そのもの……歌を歌うことでした。歌うことで誰かに気づいて欲しかったのかもしれないし、救われたかったのかもしれないです。自信をなくしてもがいていたそんななか、出会えた仲間が神椿のみんなでした。そして私自身、音楽を続けるPLAYERとして、もう一度立ち上がる強さと勇気・居場所をくれたのは、応援してくれるみんなの温かい声でした。今日こうしてステージに立つことができて嬉しいです。夢みたいな時間をありがとう」と涙を堪えながら語ると、会場からあたたかな拍手が贈られた。
「自分の人生なのに他人ばかり気にして、いつしか殻に閉じ籠っちゃって、気づいたら感情を表に出すことを恐れている自分がいます。でも歌を歌っているときは感情が爆発するみたいに素直にさらけ出せるんですよ。音楽は私にとって、自分を保つための栄養分を得る充電器みたいなものなのかもしれません。そんな中、私の歌を聴いて『元気になったよ』とか『救われたよ』と言って下さる方がいらっしゃるということに気づいて……でもそういう言葉に元気をもらっているのは私の方です」と声を詰まらせながら語ると、客席は再度拍手で彼女の思いに応える。
「こうしてライブを見て下さる皆さんもいろんな毎日を送っているし、いろんな感情や思いを抱えながら生きていて……というか、生きていくしかないよね。どうせ生きていくしかないんだったらさ、音楽を通して一緒に涙を流したり、叫んだり一緒に笑ったりしたいなって思うんです。引っ張っていく力はまだまだないかもしれません。でも隣じゃなくても、振り返れば私がいます。そんな存在になれたら嬉しいです」と涙と共に小さく笑いながら語ると、会場の想いが一つとなり、この日一番の大きな拍手が起こった。
「私がみんなに救われた分以上に、私も音楽を通して伝えたい思い、そして祈りがあります。次の曲はそんな私自身の想いを書いていただいた曲です」と語り、深く息を吐くと新曲「此処へ」をパフォーマンス。涙ぐみながら気持ちを吐露していた表情から一変、力強いボーカルで、音楽への思いが詰まった歌詞の世界が会場に広がっていく。〈ここから始めましょう 忘れないで 閉ざさないで 心の拠り所は此処にあるから〉と歌い切る姿には、音楽に限らず夢を抱いたことがある人なら誰もが胸を打たれたのではないだろうか。
「本当に本当に最後の曲になります! 2021年はこの曲から始まりました。そして2021年12月29日、この曲でみなさんと締めくくりたいと思います!」と笑顔で始まったラストナンバーは「白昼夢」。声の表情がくるくると変わる華やかな楽曲だ。ライブにピッタリの多幸感あふれるパフォーマンスで、会場を最高潮に盛り上げた。最後には「幸祜でした。To be continued.」と深くお辞儀をし、大きく手を振りステージから去った。
英詩が美しく響く「bliss」に載せたエンドロール映像が終わると、告知映像のサプライズが。2022年2月23日に1stアルバム『prayer』の発売が発表され、会場全体が大きな喜びに包まれてライブは幕を閉じた。
規格外のパワーを見せつけた1stライブ。音楽への純粋な思いが、純度の高い音楽へと還元される様子をリアルタイムで体感できる至高の時間だった。新曲も惜しみなく披露され、この2時間でこれまで知り得なかった彼女の様々な側面を観測できたのではないだろうか。動画や音源だけでは見られない幸祜の新しい一面、“ライブアーティスト“としての、確かな一歩が感じられた。アルバム発売を控え、ますます勢いを増す幸祜の音楽。より多くの人に彼女の楽曲が届くよう祈らずにはいられない、そんなワンマンライブであった。