androp、初の試み“ライブ×演劇”で伝えたメッセージ 恵比寿ザ・ガーデンホール公演を振り返る

androp、“ライブ×演劇”で伝えたメッセージ

 演出・構成を手がけた藤野がandropと打ち合わせを重ねるなかで出てきたのは“生命力”だったという。そして「どんなに苦しいこと、辛いことからでも光を見つけることができる。それが人の持つ生命力」というメッセージを、ストーリーに織り込んだ。このメッセージは、まさにandropというバンドがずっと描き続けてきたものだ。ニューアルバム『effector』もまた、コロナ禍の現在は映り込んでいるものの、根にある想いはバンドがスタートした10余年前から変わらない。この強い意志がしっかりとバンドの背骨となって歩んできているからこそ、どんなサウンドへ挑戦しようとも、また変化にも勢いよく飛び込んでいける力があるのだろう。このライブは、バンドのメッセージをより視覚的に、エモーショナルに体験させてくれる。

 そして後半にプレイしたのは、まさにこの「苦しいこと、辛いことからでも光を見つけることができる」をダイレクトに形にした「Hikari」、ニューアルバムを締めくくる曲であり、会場一体となってハンドクラップを生み出していく「SuperCar」に続く。〈新しい困難な道 君はどこへ向かう?〉。「SuperCar」では、そう軽やかに問う。このコンセプトライブでは、つねにワクワクする方へアンテナを向けてきたandropの姿を見せてくれた。

 やまない拍手を受けてカーテンコールに立ったandrop、そして松風、中島はともに新たな経験を楽しみ、こうして観客に届けられたことが幸せだったと語った。妥協知らずの藤野の演出は本番直前まで続き、芝居が変更になることもあったたそうで、それはandropがドラマ主題歌「Hikari」の制作をした際も同様だったと話し、笑い合うステージ上の演者たちにこのライブの充実感が伺えた。そして最後、「今日はクリスマスイブということでもう1曲、僕たちからプレゼントをしたいと思います。受け取ってください」(内澤)と言って演奏したのは「Endroll」。内澤は、「終わりを思って作ったけれど、はじまりの歌になった」と語って静かに美しく紡ぎあげた曲は、イブの夜にもふさわしいホーリーなムードで、『androp“musicstory”act1〜ChristmasRadio〜』のエンドロールとしてこの日1日をメモラブルに彩った。

HP:https://www.androp.jp/
Twitter:@androp_official
Instagram:@androp_official

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