「悪い友達」インタビュー

木下百花、音楽に溶け込むアイドル時代のトラウマや人生観 奥田健介や柴田聡子との交流で掴んだソングライターとしての転機

好きな音楽を聴いている時間くらいは好きに踊って欲しい

ーー木下さんは、ご自分がミュージシャンとしてステージに立ったり、作品を出すことを通して、それが世の中にとってどんな場所になればいいと思いますか?

木下:えー……そういうのは全然ないです。いつもそうなんですけど、影響を受けてこられても困るというか(笑)。勝手に救われていてほしい、みたいなところがあって。「私、あなたに救われました」って押し寄せてこられるのが、マジで嫌なので(笑)。

ーー(笑)。

木下:影響を受けてもらうことも、救われてもらうことも、嬉しいのは嬉しいけど……。最初はそういうものであろうとして作っていた時期もあったんです。kinoshita名義のときはそうだった。でも、結局私は、自分の音楽で世の中を変えたいとはまったく思わないし、ファンの人にこうなってほしいとか、こういう聴き方をしてほしいとか、そういうのも一切ないし。

ーーなぜ、そういうスタンスに行きつくのでしょうね?

木下:「救われた」とか言う人って、その次を求めたりするから。自分の空間を作っちゃうと、やりやすいように見えて、すごくやりづらくなると思うんですよ。その空間の中でもし、私がファンの人の理想からちょっとでもズレたら、とか……そういうことを考えちゃうんですよね。なので、「こういうふうに聴いてほしい」とか、全然ないです。ただ漠然と、踊ってくれたら嬉しいなっていうくらい。

ーーなるほど。

木下:本当に好き勝手にしてほしい。もちろん、世の中の人全員が好き勝手にしたら大変なことになると思うけど、でも、自分の好きな音楽を聴いている時間くらいは、みんな好きに踊れるようになってほしいなって思う。私のファンの子は、若い女の子で、まだライブハウスに慣れていないような子も多いんですけど、自分の好きな時間でもみんなどこかで人目や世間体を気にしちゃっていたりするんですよね。でも、自分の好きな時間くらいは、好きなように使ってほしいなと思います。ライブも、できるだけ周りの人を気にせずに楽しんでほしい。私に言えるのは、そのくらいです。なので、自分のライブでは自分が一番楽しむことを心掛けているし、私が一番恥ずかしいことをやろうって思って、いつもやっています(笑)。

アイドル時代は学びであり、トラウマであり、青春

ーーご自分がアイドルという文化の中にいたことが、今言った考え方に影響を与えていると思いますか?

木下:100パーセントそれです(笑)。「執着されたくない」っていう気持ちもそうだし、アイドル時代のことは、全部が学びであり、トラウマであり、青春です。6~7年あの場所にいたので、人間を見まくったんですよ。見過ぎました。13歳から握手会に参加して、大学生や30過ぎの方から婚姻届を持ってこられたり(笑)。ボーイッシュな感じの見た目になったら女性のファンが増えて、握手する前からみんなが号泣していたり……。運営の人もいるし、人間関係もいろいろあるし、いろんな人間を見てきた。その経験は、自分の考え方にすごく影響していると思います。それに、ファンの人との出会いには強烈なものもあったけど、私が好きな音楽を見つけることができたきっかけは、ファンの人が送ってくれたCDや、教えてくれたライブハウスだったりもして。やっぱり、10代の頃に見た景色だったので、100パーセント影響されていることしかないです。それは歌詞にも出ているし、自分の性格はそこで変わったなと思います。

ーー木下さんがアイドルという文化の中でステージに立つ側として見てきた世界って、こちらからすると、やはり想像を絶するんです。

木下:絶しますよね(笑)。

ーーただ、ひとつ思うのは、「人間を見てきた」という前提のうえで、木下さんはそこまで世界を悲観的に見ていたり、絶望している表現をしてはいないと思うんです。歌詞では純文学的に人間の暗がりを歌う部分もあるとは思うんですけど、とはいえ、「悪い友達」では〈世界を愛せず居られない〉と歌われている。木下さんの表現の前提にあるのは、さっきも言いましたけど、やはり「肯定」だと思うんです。

木下:そうですね。見過ぎたんだと思うんです。人を見過ぎて、「みんな、いろいろあるよね」って終われるようになったというか(笑)。「みんな違って、みんないい」みたいなまとめかたをするようになったのも、本当にいろんな人を見てきたからなのかなって思う。アイドルの世界って、本当にすごい世界なので……。ファンは入れ込んじゃうんですよね、アイドルの子に。そして入れ込んでいるぶん、「返してほしい」って思う。そういう姿を直に見てきて。私はどうしても「見返りを求められてもな」と思っちゃうし、それを正直に言っちゃったりする。そういう経験があって、人間っていろいろいるし、無理なものは無理だし、好きなものは好きだし、みんな好きな方向に行けばいいし、嫌なものは見ずに逃げたらいいしっていうところに行きついたんだと思うんです。

ーーすごく納得しました。

木下:執着されるのは、本当に勘弁っていう感じなんです(笑)。それが歌詞に出ているから、知り合いにも「逃げているよね」って言われたんだと思う。

ーー音楽って不思議ですよね。宗教的なほどの執着や依存を生む場合もあるし、同時に、何にも縛られず解き放たれて自由な感覚を与えてくれるものでもあるし……。

木下:そうですね。SNSとかもそうですよね。これも柴田さんと話していたんですけど、「SNSは執着を生み出しやすいですよね」って。でも、SNSのほうが広まったりするし……難しい。

ーー「悪い友達」には〈LOVEはここに置いてくよ〉というラインがありますけど、木下さんは「愛」や「LOVE」という言葉を、よくSNSなんかでも使われていると思うんですよ。木下さんにとって、「愛」ってどういうものだと思いますか?

木下:話は戻っちゃうんですけど、自分が誰かに執着されたときに思うのは、「好き好き言ってくるけど、結局あなたが愛されたがってますやん」ということで。めっちゃ矛盾しているなって思うんですよね。「愛したい」と言っている人ほど、愛しているんじゃなくて、愛されたくて言っている。そういう光景をいっぱい見てきたから、考えることが多くなったというか。「愛情って、そういうものじゃなくない?」みたいな。

ーー木下さんにとって、理想的な「愛」の在りようって、どういうものですか?

木下:それもすごく難しいんですよ。私はずっと、見返りを求めないものが愛情なんじゃないかと思っていたんです。自分が相手を「守りたい」という気持ち、「好き」なら「好き」で、それで完結できるもの……「それでいいんじゃないの?」ってずっと思っていて。でも、そういうスタンスでいると「変」って言われるんです。だから「私は他の人と違うのかな?」って思っちゃう。人は結局、見返りを求めちゃうし、自分が好きな相手に好かれたいと思うのが、人間なのかなって。……でも、私はそういうのは嫌いやなって思う。私自身の価値観でいうと、人間でも、場所でも、「守りたい」とこっちから一方的に思えるもの。それが愛かなって思う。邪念が入ってきちゃうと、「それはなんの感情ですか?」ってなっちゃいますね。

ーーだから、木下さんは自然に惹かれるんですかね。プロフィールにも「海や山や土や花や風、自然が大好き」と書いてあります。

木下:そう思います。自然って、なににも邪魔されず、嫌な気持ちにならない。「嫌な気持ち」っていうのが、すごく嫌いなんですよ。だから、友達も作らないんですよね。期待しちゃうじゃないですか。それがしんどいなっていうのがあって。自然とか動物が好きです、わかりやすくていいなって思う。

ーー音楽は、邪念のない世界を作り得ると思いますか?

木下:そうですね。私の好きな音楽は、「各々好きに聴いてください」みたいなものが多いと思います。「こう思いなさい!」みたいな音楽は苦手だなって思います。

■リリース情報
木下百花
デジタルシングル「悪い友達」
作詞・作曲・編曲:木下百花
配信:https://linkco.re/5urvfEhr
Apple Music・Spotify 他、音楽配信サービスより配信
https://linkco.re/5urvfEhr
<楽曲再生キャンペーン> 対象:LINE MUSIC
<楽曲シェアキャンペーン> 対象:音楽サブスクサービス
※詳しくはオフィシャルサイトへ
https://kinoshita-official.jp/music-share/

■ライブ情報
配信ライブ『木下百花の「アイドルに殺される」 Vol.8』
12月30日(木)21時〜
https://youtu.be/Aqk2L_z5ynU

木下百花生誕祭ワンマンライブ『生きるとは』
梅田Shangri-La(大阪)
2022年2月6日(日)
OPEN 16:15 / START 17:00
¥4,000+1ドリンク別
オールスタンディング

恵比寿LIQUIDROOM(東京)
2022年02月13日(日)
OPEN 16:15 / START 17:00
¥4,000+1ドリンク別
オールスタンディング

<プレイガイド>
・チケットぴあ https://onl.tw/P2qsv9z
・イープラス https://onl.tw/m6dceGV
・ローソンチケット https://onl.tw/3LzrLNp

木下百花オフィシャルサイト https://kinoshita-official.jp/
木下百花ファンクラブサイト https://super-being-freeter.com/
木下百花オンラインサロン「わたしのはなし」 https://bit.ly/3bQ7XTk
木下百花Twitter https://twitter.com/wanderlandlove
木下百花Instagram
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木下百花 YouTube Channel
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