aikoにとってZepp Tokyo最後の公演 ファンと想いを交わした『Love Like Rock vol.9』レポート
aikoのライブツアー『Love Like Rock vol.9』東京最終公演が12月22日、Zepp Tokyoにて開催された。本来であれば、2020年3月に2日間の開催を予定していた同公演。緊急事態宣言発令のため延期となったが、今月1日から5公演に数を増やして振替公演を開催。22日の公演はツアーのファイナルであり、aikoにとってZepp Tokyo最後の公演でもあった。
aikoとファンのパワーに煽られ、筆者自身もエネルギーを出し尽くし、筆を執ろうにも想いがまとまらない。それほどパワフルなライブだった。
定刻を少し過ぎたころ、「アンドロメダ」でライブはスタート。赤い幕がはらりと落ちるとヴィヴィッドな緑×ピンクのパーカーを着たaikoの姿が。伸びやかなボーカルは、まるで空から降ってくるようで、優しく切ないのに力強い。「格好いいな」では、ボブヘアがかかる横顔がクール。ステージ狭しと駆け回り、飛び跳ね、踊りーー身体全体で感じるままに楽曲を表現する。「ストロー」のころには、Zeppが揺れているのを感じた。ツアータイトルに「Rock」を掲げているとおり、バックバンドのサウンドは骨太。そこへファンが鳴らすクラップと、ジャンプが床を鳴らす音が加わる。歓声はなくとも、ともに歌えなくとも、会場全体がサウンドを作り上げる。
〈君にいいことがあるように〉ーーそう願うように、aikoはファンとアイコンタクトを交わす。照明が明るくなると分かるのだが、とにかくファンがみな笑顔だ。aikoが自由に音を楽しむから、ファンも自由に楽しむ。aikoが元気だから、ファンも元気になる。ともに伝播し合い、Zeppに大きな「Love」が生まれていた。
センターステージに1人立つaikoは、本当に華奢だ。けれど大きく見える。MCの際、バンドメンバーが過去にZepp TokyoでAerosmithを観た感想を「Zeppが狭く感じた」と表現したのだが、aikoが立つZeppも、筆者には狭く感じた。
さまざまな愛の歌、恋の物語、アイデンティティを歌いあげるaiko。けれどMCになれば、まるで友達のように気さくにファンに話しかける。aikoの飾らないMCはライブのお楽しみであり、aikoの幅広い楽曲を繋いでいくブリッジにも思える。「明日の歌」「プラマイ」と盛り上がったあと、MCを挟んで切なく「ハニーメモリー」を歌いあげる。「列車」「間違い探し」とロックなナンバーのあと、息切れもせずファンと対話。そして「恋ひ明かす」と、また雰囲気が変わる。この高低差にはじめは驚くのだが、不思議なほど心地良く、時間はあっという間に過ぎていく。
「食べた愛」ではファンに向けてエアハグを、切ない歌詞が胸を刺す「何時何分」では叫ぶような〈愛してる〉〈好きだよ〉を。さまざまなLoveとLikeを表現したライブ。aikoは、ずっと身近なストーリーを、リアルな想いを歌い続けてきた。だから何年経っても、いくつになっても、我々は想いを重ねることができるのだ。
この日は結婚発表後初めてのライブということもあり、aiko自身も何度か話題にしていたのだが、「beat」前のMCで印象的な言葉があった。バンドメンバーや照明スタッフの連携プレーあっての冗談めいたシーンではあったが「だけど私は変わらないから」とaikoは言った。「そうだ、aikoは変わらないな」と、実感したライブでもあった。