C&K、ユニークなコンセプト尽くしの“贅沢な祭り” TDCホールを満たした怒涛のエンターテインメント

C&K、コンセプト尽くしの“贅沢な祭り”

「私たちはなぜ、生ライブを求めるのか?」

 コロナ禍でさまざまなライブやフェスが中止・延期になり、なんとなく配信ライブに慣れてしまってからもずっと考えていたことだ。

 ここではC&Kのツアー『日本全国CK地元化計画 地元です。地元じゃなくても、地元ですツアー2021 劇団ひとりぼっち ~僕は独りじゃない~ 改』ファイナル公演について記すが、その前提として、彼らは2020年に予定していた全国ホールツアーが延期となったのち、“ドライブインライブ”(車中で鑑賞する野外ライブ)という他に類を見ないスタイルに挑戦するなど、全国の四池さん(ファンの総称)に音楽を生で届けるための試行錯誤を重ねてきたことを挙げておく。満を持して行われた12月14日のTOKYO DOME CITY HALL公演で、先述の問いの答えが見つかるのではないか? と密かに期待していた。

 スクリーンにはなぜかC&Kの元マネージャー・堀氏の巨大なイラスト、横にも巨大パネルという異様な空間。そこに堀氏本人が登場し「本日は体内見学ツアーにお越しいただき、誠にありがとうございます! これから私の体内で日頃起こっていることを皆さんに観ていただくわけですが、皆さんの体の中でも同じことが起きているかもしれません。たくさんの臓器たちが今日も働いています!」とアナウンス。さらに“隣の人との肩組み禁止(ここ重要)”などの会場ルールを説明していく。同ツアーは“人はひとりだけどひとりじゃない”をテーマに、一人ひとりを人間の身体の臓器に見立て、それぞれが連動して働くことによって、身体が正常に、健康に動くということをエンターテインメント仕立てで表現していくという。いや、シュールすぎません……!?

 会場スタッフに紛れて黒スーツ姿で客席から登場したC&Kだったが、CLIEVYはなぜか担架でステージに運び込まれる。2018年にCLIEVYが客席に飛び降りて骨折したのがこの会場なので、今日は3年越しのリベンジ公演になる、という演出のようだ。12月15日リリースのニューアルバム『CK TOKEN』収録の「C&K XIII」からライブはスタート。序盤から「to di Bone」「ジャパンパン~日本全国地元化計画~」など、ド派手でアッパーな楽曲を連発。KEENのクールなダンスソロを挟んで始まった「MATSURI」では、おなじみのダンサーズ・ZEROSENに加えて、東京パラリンピック閉会式に出演した女子ブラスチーム・MOSも参戦。盛り上げ隊長のDJ TAKEまで水着姿で乱入し、ステージ上の空気は例えるなら百姓一揆、いや米騒動? 物騒なワードしか浮かばなくて恐縮だが、C&Kのファンキーな楽曲はソウルやファンクといった洋楽をベースにしつつも、日本人のプリミティブな衝動を解放するような“祭り感”を強く感じさせる。

 C&Kの2人やダンサーズが臓器の被り物で現れ、“日々行われる体の中のパーティ”を再現するのが、今回のツアーコンセプトともリンクする「KARADANONAKADAKARADA」。この辺りからライブは、コント要素も含む不思議な世界へと観客を誘っていく。芸達者なZEROSENメンバーも交えた”臓器ギャグ(?)”でふざけ倒したあとに、ステージにはジャズ~フュージョンの名ピアニスト・栗本修率いるベテランミュージシャン揃いのAKB55(Adult Kurimoto Band average 55)が登場。この無敵の演奏をバックに、インディーズ時代の名曲「ダイヤモンド」からバラード曲ブロックへと突入。代表曲の1つでもある「Y」では、CLIEVYのハスキーなハイトーンボイスと、どっしりとしたKEENのミドルボイスのハーモニーに聴き入った。こういったじっくり聴かせる美しいバラードもまさに彼らの切り札で、リスナーの心臓をわし掴んでくる(……臓器だけに!?)。

 『CK TOKEN』収録の「誘惑」あたりからライブは再び様相を変え、セクシーなソウル寄りの楽曲が目白押しに。日本の主食“お米”をモチーフにした「※がある」では、グッズの紅白しゃもじを高らかに打ち鳴らす四池さんたちのテンションに「ここは広島商業のアルプス席か!?(意味がわからないお若い方はググってください)」と圧倒されてしまった。

 「In the Mood」のカバーで再びMOSがライブに華を添え、四池さんたちがソーシャルディスタンスを守りつつ、右に左に踊りまくる「APAP」などライブの定番曲を連投。「いつかみんなでまた一緒に歌いたい!」というCLIEVYの言葉からのピースフルなナンバー「うたをうたお」も、このツアーに込められたメッセージを体現する楽曲の1つだろう。

 CLIEVYが「今日は肩は組めないけど、またいつか回りに来て。一つの円を作ろう!」と叫ぶと「踊LOCCA~around the world 新たなる冒険~」へ。通常は会場内に大小のサークルが見られるC&Kライブの大定番といえる同曲だが、この日は四池さんが各自の席で回りながらこの熱気を楽しんでいた。

 ここから白血球と赤血球に扮した、俳優の山根和馬と阿部亮平のユニット・純悪が参戦。コント風の曲振りで続く「精鋭」を盛り上げる。このほかにも「愛を浴びて、僕がいる」など、ゴスペルの影響が強いスケール感溢れる楽曲が続く……のかと思いきや、ステージが暗転、ペンギンマスクを被った6人の男たちが現れた。ここで、インディーズ時代から親交のあるs**t kingzが登場。彼らへの提供曲「FFP feat. C&K」をパフォーマンス。C&Kの特徴的な歌声もさることながら、世界を股にかけて活躍するs**t kingzが展開するダイナミックなダンスも伊達ではなく、コラボでありながらバトルのような空気感に会場が沸いた。

 続く「にわとりのうた」では、CLIEVYがフライングに挑戦。先述の骨折を経験して「下に飛ぶんじゃなく上に飛びたい」という思いを込めた演出だったそうだが、ワイヤーで吊られるだけでは飽き足らず、ぐるぐる回転して相方(と観客)が心配そうにそれを見守るというシュールさもなかなかだった。ここに予算がかかりすぎて、段ボール製の翼のみが支給された……と苦笑するKEENに、「あとで背中でも流すよ」と振るCLIEVY。

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