ニューロティカ、なぜ今初の武道館ライブを決断したのか ISHIYAがあっちゃんを直撃

ニューロティカ、なぜ初の武道館ライブを決断?

 結成38年、パンクシーンのレジェンド・ニューロティカが、2022年1月3日に初の日本武道館公演「ニューロティカの『心燃会』」を開催する。新宿ロフトをはじめ30年以上に渡り全国各地のライブハウスを揺らしてきた生粋のライブバンドである彼ら。コロナ禍で思うように活動ができない状況の中、なぜ今このタイミングに「初の武道館」という決断に至ったのか。今回、FORWARD/DEATH SIDEのボーカルであり、ハードコアパンクシーンの30年史を綴った『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』を著書に持つISHIYAがニューロティカのボーカル・あっちゃんにインタビュー。親交の深い両者だからこそ踏み込める本音のトークに注目だ。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

ロフトからいきなり武道館! ニューロティカの挑戦

ニューロティカ あっちゃん(撮影=石川真魚)

ーー武道館はいつ決まったの?

あっちゃん:コロナ真っ只中の去年の11月ぐらい。その頃はまだ吉本興業と契約してて、「CD出すんだからテッペン目指そう」っていうことで、吉本のスタッフ全員と「ヨシ! 行きましょう武道館!」って言ってたんだけど、その後コロナがあったりして、CDを出して2年というところで去年円満に契約を終えたんだよね。でも辞める前から一緒にやってたライブの制作会社が武道館のスケジュールの確認をずっとしてくれてて「武道館取れましたよ。どうします?」って連絡をくれて(笑)。

ーー吉本と制作会社、ニューロティカで動いてたのが、制作会社とニューロティカだけになったんだね。

あっちゃん:そう。それで「4人でやったら面白いかな?」って、逆にみんなの士気が上がった。でも俺ひとりだけ、ちょっと規模が違いすぎるんで、いろいろ考えちゃって。昔から「お金を借りて事業をする」みたいな借金ができないタイプなのよ。みんな家族もいるし、子供もちっちゃいのに借金背負うのは……みたいな。

ーー賭ける感じじゃないのね。パンクっぽくないね(笑)。

あっちゃん:そうそう、俺ひとりだけね(笑)。でもみんなは「このコロナの時期だからこそやっちゃおうよ! ニューロティカだけでやったら逆にすげぇじゃん!」って。事務所もレコード会社もついていないのに武道館やれることになりました(笑)。みなさんのおかげです!

ーーそんなヤツいないよね(笑)。

あっちゃん:それですごく士気が上がったんで「これはもう俺が止めるわけにはいかない。やりましょう!」って。だから「もしその目標がなかったら」と思うとね。本当にいつもみたいにライブもできない状態だったし、ウチはライブやってその収入で動いてたけど、それが全部なくなったんで。

ーーその間はどうしてたの? ライブはやってなかった?

あっちゃん:みんな仕事をやり出した。でもライブはやってたよ。配信もやったし。

ーーコロナ禍の中で、どうやってバンド活動をやるか? って考えて行動した人たちの先駆けだね。でもライブをやるにもまだ人数制限はあるよね?

あっちゃん:新宿ロフトでは50人だった。喋れないしソーシャルディスタンスだし。配信は最初に八王子のMatch Voxでやって。会場がみんな人数制限ありだったから、ツアーをまわるとずっと赤字だったね。

ーーでもまわったんだね。武道館に向けて。

あっちゃん:まわった。やっぱり発信しないと。ただ武道館を発表したのが、少しコロナが収まったタイミングの今年の1月3日のライブだったんだけど、声も普通に出せないし、MCをやっててもお客さんは声が出せないから身体が揺れてるので「笑ってるんだな」ってわかる感じだったね。「あ! 動いた! 笑ってる? 笑ってんだろ」って。少しでも声が出そうになると「声出しちゃダメダメ」って呼びかけて。ライブハウスもピリピリしてた。

ーーでも生のライブでお客さんの反応がないとキツくない?

あっちゃん:最初はキツかった。最初の配信ライブをやったとき、どうなるかわからないし、コメント欄も見ながらやろうって感じだったのね。いつも最初の3~4曲は飛ばして連続でやるんだけど、1曲で全員が疲れちゃったの。「俺だけ疲れたのかな?」と思ったらみんな疲れてて「どんだけお客さんにパワーもらってたんだよ」って痛感した。あれはびっくりしたよ。生まれて初めてだった。

ーー配信やったことなかったんだ? プロモビデオの撮影とかもやってるじゃん。

あっちゃん:配信はやったことない。プロモーションビデオはやってたけど、ライブの感覚とは全然違うな。

ーーそれで武道館でやるのを発表したときはどんな感じだったの?

あっちゃん:このコロナの時期だからこそ、やるしかないでしょ! プロレスラーの越中詩郎が言ってる「やってやるって!」っていう気持ちになって。お客さんの中にも「この時期に武道館やることを宣言してくれて、すごく嬉しかった」って言ってくれる人がたくさんいて、それでまたパワーをもらった。「この時期に武道館やるなんて、バカだなぁ~ニューロティカ」ってみんな思うだろうなっていうのもあったし(笑)。でもその「バカだなぁ~ニューロティカ」って、それが最高の褒め言葉。ありがたいです。

ーー1月3日っていう日付なのは、毎年ニューロティカがライブをやってる日だからってこと?

あっちゃん:1月3日に毎年やってるのもあるけど、武道館が取れたのがたまたま1月3日だったの。武道館を使うための申請をずっとしてたんだけど「この日がとれましたよ」と言われたのが1月3日で、いつも1月3日にライブやってるから「ああ、これはきたな」って。

ーーでもいざ武道館となると、キャパがちょっと経験ない感じでしょ? 俺がいつもプロレスを観に行ってるときは1万何千人とかでさ。

あっちゃん:そうそう。プロレスは真ん中でやるから360度全部入るの。

ーーステージを組むとあれの半分ぐらいかな? すごいね。その規模のライブを今までやったことある? フェスとかも含めて。

あっちゃん:『氣志團万博』かな? あれも何万人でしょ?

ーーそのクラスだよね。それをニューロティカ1組で。

あっちゃん:そう(笑)。

ーー前座もなし? 本当のワンマン?

あっちゃん:なしで(笑)。そう。これはメンバーとボランティアのスタッフと話し合って「イベントにしてもいいんじゃないか?」って話もあったけど、やっぱりやるからにはワンマンで。「ケツ持ちは誰なんだよ?」って話なんだけど、いないいない(笑)。

ーーでも武道館やるのを決断したのは、本当にちょっとイカレてるよね(笑)。

あっちゃん:イカレてる(笑)。通常なら、小さいライブハウスからO-EASTやって、Zeppやって、日比谷の野音やって渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)やって武道館って感じなんだけど、ウチはロフトからいきなり武道館(笑)。

ーーロフトを武道館に持ち込む(笑)。でもワンマンもでかい会場でやってたじゃない。だからそれなりのものはあるでしょ。

あっちゃん:いやでも、やったとしてもアニバーサリーの年に一回、二回ぐらいO-EASTで、ワンマンとしてはZeppでやったのが一番大きい会場かな?

ーーその規模じゃないんだよね。

あっちゃん:その3倍とか。今自分のYouTubeで、武道館に出たことがある友達のバンドとかと対談してるんだけど「武道館が味方してくれるよ」って言い方をしてくれて。それは立ってみないとわかんないんだけど。

ーーその仲間入りをするわけね?(笑)。それで仲間に自慢するんでしょ? 修豚(SHU-TON)あたりに(笑)。

あっちゃん:そうそう(笑)。杉並区の小さいスタジオで(笑)。

ニューロティカ あっちゃん(撮影=石川真魚)

ーーライブまであと1カ月というところまで来たね。

あっちゃん:もう、本当にすぐ。ちょっと前まで不安で不安で、口から心臓が出そうだったけど、今はもう「やってやる!」って感じ。ここまできて不安とか言ってられないんで、本当に気合いが入ってきた。いろんな人から声かけられて、4カ月前あたりからちょっと変なゾーンに入ってきてることは確か。今までにない感じ。

ーーそれはどんな感じなの?

あっちゃん:やっぱり「お前責任持てよ」っていう、そっちかなぁ。「もう弱音は吐かない」って決めたときからかな? 変なゾーンに入ってきて、生まれて初めてヤバイって……あ! ヤバイって言っちゃいけないんだ(笑)。最高のゾーンに入ってきたんだよ(笑)。終わった後のインタビューでは「あのとき実は……」とか話すかもしれないけど(笑)。

ーー武道館が終わった後のインタビューはちょっと面白そうだよね(笑)。でもさ、まぁ緊張するよね。だってThe Beatlesとか名だたるバンドがたくさんやってるわけじゃん。

あっちゃん:2、3年ぐらい前までは武道館なんて頭にもなかったし、吉本さんとやろうとしてたときも「ああ、夢の話でしょう」って。それがねぇ、本当責任感というかもう……みなさんがやってきた武道館でのパフォーマンスとか歴史を背負っちゃってるんだよね。

ーーダメだよ、背負っちゃ(笑)。

あっちゃん:あ、背負っちゃダメ?(笑)。

ーー関係ないよ。ロフトを持っていくんでしょ? 比べちゃダメだよ。プレッシャーになっちゃうから。ってなんで俺がインタビューで励ましてんだよ(笑)。

あっちゃん:ロフトのスタッフも全員くるけどね(笑)。

ーー全国からみんな来るんじゃない? 全国から集まれば武道館埋まるぐらいファンはいるよね。

あっちゃん:そう。それを今お願いしてて。

ーー交通費支給とかにする?(笑)。

あっちゃん:交通費支給ライブいいね(笑)。それいけるかな? もうちょっと早く言ってよ(笑)。

ーーその分当日のセットとかすごく削られそうだけど(笑)。

あっちゃん:セットとか舞台とかも、全部メンバーが加わってディスカッションして。「こういうことやりたいんですけど?」「あ、やりましょう!」って。

ーーみんな乗ってくれるんだね。

あっちゃん:それを「セットひとつでも二つでも値段変わらないですから」って言われても「いや、もうひとつでいいですから!」って(笑)。もう麻痺しちゃって「値段変わらないですから」って舞台監督の言葉がずーっと頭に残っちゃって「変わらないって言ったってすごいんでしょ? 変わるよそれー」って(笑)。

ーー背中を押してくれてるのに「じゃあやっちゃおうか!」じゃなくてビビッちゃうのね(笑)。でもその麻痺の感覚が、終わった後にどうなるかがちょっと興味あるな。感覚が変わる気がするんだよね。アントニオ猪木が言ってたけど「やる前から終わったあとのこと考えるバカいるか!」って話なんだけど(笑)。

あっちゃん:そうそう(笑)。やる前から負けること考えてるバカいるかよ! って猪木さんと一緒だ(笑)。

ーー今ちょっとビビリ入ってる感じがあったけど、でもそれが人間らしくていいけどね。ほかのバンドもいないから責任転嫁できない。ニューロティカだけだもんね。一世一代の大勝負だね。

あっちゃん:人が多ければ多いほど、本気出しちゃうタイプの男だから(笑)。でも何せやったことないからわからないよね。

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