『紅白』『FNS歌謡祭』……相次ぐ声優たちの音楽特番進出 水樹奈々らが開拓した軌跡を辿る

 年末に差し掛かり、各局がその年を締め括る音楽特番をアナウンスし始めた。12月1日と翌週8日の2週にわたり放送される『2021 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)、現時点ではオンエア自体発表されていない『ミュージックステーションスーパーライブ』(テレビ朝日系、以下『Mステスーパーライブ』)、そして大晦日の『第72回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)、これら代表的な音楽特番の出演/出場者が発表されるたび、注目アーティストたちの名前がSNSのトレンドを埋め尽くしていく。特に各番組で初出演/初出場を果たすアーティストは、何かしらその年を代表するアクションを起こしたからこそ選出されたはずで、その中でも声優たちの存在は一際大きな反響を呼んでいる。

 今では当たり前に音楽番組へ出演するようになった声優たち。だが、上記番組をはじめ、本格的に音楽特番へ進出するようになったのは近年のことで、そこにはアニメカルチャー、そして声優シーンの隆盛が強く関係しているように思う。

 まず、今に続く音楽特番と声優の間に大きな橋をかけたのが水樹奈々だ。水樹は2009年に『第60回NHK紅白歌合戦』に声優として初めて出場。当初は紅白デジタル応援隊(PCや携帯などデジタルコンテンツを通して番組情報を発信する)として番組に携わることが発表されていたが、紅組の出場歌手としてもその名が呼ばれたことで当時大きな話題となった。

 2009年に水樹が『紅白』出場を決めたのは、しっかりとした理由がある。同年1月にリリースしたシングル『深愛』がオリコンデイリーチャートで1位に。さらに6月に発表した7thアルバム『ULTIMATE DIAMOND』はオリコン週間アルバムチャートで初登場1位を獲得。長いオリコンの歴史でもシングル・アルバム問わず声優が1位に輝くのは初めてのことで、その余波は声優ファンだけでなく音楽シーン全体にも広がっていった。ちなみにこの年、水樹は声優初となるドーム公演(『NANA MIZUKI LIVE DIAMOND 2009 supported by アニメロミックス』を西武ドームにて開催)も成功させており、その後の声優アーティストが活躍する基盤を形成したとも言える。

 なお、水樹は『FNS歌謡祭』にも2012年に初出演している。その後、同番組には宮野真守、上坂すみれ、蒼井翔太、Aqoursといった声優/声優ユニットが相次いで出演。今年も水樹はもちろん、小倉唯や田所あずさらが“ウマ娘”として、さらに『ラブライブ!スーパースター!!』シリーズからLiella!も初出演を果たすなど、アニメカルチャーの浸透と声優シーンの活況を物語るラインナップとなっている。

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 他にも、2015年にμ’sが『第66回NHK紅白歌合戦』に出場。声優ユニットとしては初、声優という括りでも水樹に次いで2組目の快挙を果たした。NHKのチーフプロデューサー・柴崎哲也はμ’sの選出について、「売り上げ、話題性、そういうものをひしひしと感じた」(※1)と述べており、『ラブライブ!』シリーズのコンテンツの厚み、そしてそのコンテンツをはみ出すほどのグループの勢いが一般層にまで伝わったことを実感させた。なお、2018年の『第69回紅白歌合戦』には特別企画枠にてAqoursも初出場している。

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