BiS×ZOC対バンライブで体感した現場の熱量とリアル アクセル全開でスタートしたツアー初日レポ

 すると、すぐに後攻のZOCが始まった。カロリーが高すぎる。5月に加入した新メンバー・鎮目のどかに対して「のどか、そんなに脚を出すのか……?」と思っている私を残して、「ZOC実験室」ではZOCが高らかに歌うのだ。〈人生やめられない〉と。

ZOC

 さきほどBiSが歌ったばかりの「family name」が、本家ZOCによっても歌われた。シリアスなのに圧倒的な昂揚感をもたらす楽曲だ。私は、前回の炎上後に開催された、2021年9月9日のZepp Haneda (TOKYO)でのZOCのライブを思いだした。どれだけ炎上しても、ZOCはいつも音楽で私を連れ戻すのだ。「DON'T TRUST TEENAGER」も、〈なんとでも言ってろよ 壊れないさ〉という歌詞がストレートに刺さる。圧倒される。

 そして、冒頭で紹介した巫まろの「BEGGiNG」が歌われたわけだ。

古正寺恵巳

 BiSの「STUPiD」のカバーの後、もう1曲予想外のカバーが始まった。第1期BiSの「primal.」だ。ライブの直前にMAPAの古正寺恵巳のゲスト参加が発表されたが、彼女は第1期BiSのメンバーであったコショージメグミと同一人物。「primal.」は古正寺恵巳の歌とともに幕を開けた。BiSとの10年近い関係性を物語るように。大森靖子は、2012年に研究員(BiSファンの総称)のイベントで「primal.」を歌っていた。そして、2021年においても大森靖子は、ZOCや古正寺恵巳とともに「primal.」を歌ったのだ。

 「①④才」は、現在のZOCのライブのハイライトといってもいい楽曲だ。雅雀り子のダンスが、楽曲の世界をえぐるかのように深く描いていく。前述の9月のZepp Haneda (TOKYO)では、最後に全員がステージ上に倒れたが、この日は古正寺恵巳が「primal.」から続けて参加し、最後に彼女だけが立っているという演出だった。

 コロナ禍の日本社会を描いた傑作アルバム『PvP』のリードナンバー「CUTTING EDGE」では、鎮目のどかの成長ぶりに目を見張った。ZOCのメジャーデビューシングル「AGE OF ZOC」は、いわば「炎上賛歌」だったが、2月のリリースから約9カ月、本当によく燃えたものだ。焼きあがりが違う。〈こういろんな正義キラキラ〉という歌詞が、リアルさを増していく一方だった。

 とどめは、最後の「IDOL SONG」の冒頭での巫まろの「やっぱりアイドルやめらんねー」という煽りだ。ダブルミーニングでの「煽り」である。落ちサビは、大森靖子に「どうぞ」と言われて巫まろが歌っていた。もはや笑うしかない。

 こんな調子でZepp Tokyoでの『BiS×ZOC presents We are BZ tour』は終わったが、ツアー初日なのにアクセルを踏みすぎだ。言い換えるならば、多くの若いファンーーいや若くなくてもーーが現場でこの公演を見届けていたことには希望すら感じた。善悪や価値の判断の前に、まずは現場でリアルに触れるべきだからだ。ポリティカルコレクトネスとコンプライアンスとミソジニーとミサンドリーが渦巻く日本のインターネットに張りついている間に老いてしまうのだけは避けたほうがいい。そう感じる公演だったのだ。

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