木村拓哉の魅力は俳優のみにとどまらない ソロアーティストとしての素晴らしさ

 過去の偉大な功績は、偉大であるが故にデメリットになってしまうことがある。過去と今が比較され、その分だけ期待も大きくなるからだ。期待に応えることは決して簡単なことではない。それでも結果を残し、評価され続ける人も存在する。木村拓哉はその1人だろう。彼は国民的アイドルであったSMAPのメンバーであり、様々なタレント活動をしている国民的スターでもある。グループ解散後どのような活動をするか大きな注目をされていた。そしてその期待に応える活躍ぶりを見せている。

 特に俳優活動は活発で、グループ在籍時に引けを取らない評価と人気がある。ソロ活動を始めた2017年以降は毎年連続テレビドラマに出演しており、特に『BG~身辺警護人~』は高視聴率を記録する人気作になった。映画では2017年に『無限の住人』で7年ぶりに映画出演して以降、5年間で4本の作品に出演している。2019年に公開された『マスカレード・ホテル』は興行収入46億円を超える大ヒット作となった。ソロになってもヒットを生む俳優であり続けているし、活動が活発になったことで俳優としての存在感はむしろ増している。

 しかし頻頻に作品をリリースし、ライブツアーを行ったりする機会も多かったグループ時代とは異なり、ソロでの音楽活動はそれほど活発ではない。アルバムを1枚リリースし、ライブを3回行ったのみである。コロナ禍でレコーディングやライブ活動が難しい部分もあったのだろうが、ソロミュージシャン・ボーカリストとしての木村拓哉の素晴らしさは、まだ世間に伝わりきっていないとも感じる。

 2020年にリリースされたソロアルバム『Go with the Flow』は素晴らしい作品だった。楽曲提供者は稲葉浩志や槇原敬之、森山直太朗など日本の音楽シーンを引っ張ってきた大物ミュージシャンや、現在の日本のロックシーンの中心にいる[Alexandros]など、かなりの豪華さだ。「日本を代表するスターが日本を代表するミュージシャンと作った作品」と評しても過言ではない。

 それでいて木村拓哉にしか歌えない音楽にもなっている。稲葉浩志は「私が見て話して遊んで感じて自然に浮かび上がった「生身の木村拓哉像」を歌詞にさせて頂きました」と語り、[Alexandros]の川上洋平は「木村さんをイメージして作った曲なので、ご本人に歌って頂いたらすごく嬉しいです」と語っている。それと向き合うように木村拓哉は自身の個性を出して歌っている。それでいて楽曲提供者へのリスペクトを感じる歌唱と、楽曲の魅力を引き出す表現をしている。

 例えば稲葉浩志と多保孝一の共作である「One and Only」は、ロックボーカリストとしての荒々しさとクールさを兼ね備えた歌唱で歌いこなす。それでいて彼が本来から持つ色気ある声質と、緩急のある歌唱表現もしっかりされている。それに対してUruが提供した「サンセットベンチ」では、吐息を混ぜて切なく歌っている。楽曲ごとに全く違う表現をしているのだ。おそらく楽曲提供者へのリスペクトの気持ちと、自身の表現と楽曲の持つ性質のバランスを考え、ベストな表現方法について徹底的に考えているのだろう。その結果として木村拓哉にしかできない歌唱と、木村拓哉だからこその音楽を作っている。



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