アリス九號.(A9)、0.1gの誤算、DEVILOOF……V系シーンにおけるクラウドファンディング、成功の背景は?

 このところ、“クラウドファンディング”をよく目にする。クラウドファンディングとは、制作費や活動費等を支援者から募るもので、アーティストではこれまでに、Awesome City ClubやROTH BART BARON、氣志團などが実施しており、音楽に特化したサービス「we fan」も登場している。さらに今、音楽ファンのみならず、世間からも大きな注目を集めるのが、SKY-HIが行うクラウドファンディングだ。彼が代表取締役兼CEOを務めるマネジメント兼レーベル・BMSGが主催したオーディション『THE FIRST』。そこからボーイズグループ・BE:FIRSTが誕生したが、今度は、そのBE:FIRSTのMVや楽曲制作費、今後羽ばたいていく才能のための資金として、1億円を目標額に支援を募っており、現時点ですでに4億円を超えるサポートが集まっている。

 実は、ヴィジュアル系(以下V系)シーンでは、他のシーンより少し早くからクラウドファンディングには関心が寄せられてきた。先陣をきったのはアリス九號.で、2015年、事務所独立後にA9名義で発表した作品『銀河ノヲト』は、購入型クラウドファンディングによる支援で制作された。当時は今ほどクラウドファンディングが広がる前で、しかも、すでに人気も実績もキャリアもあったアリス九號.による支援募集という決断に驚いたことをよく覚えている。結果は、目標としていた金額の倍以上のサポートが、国内だけでなく世界中から集まった。以降、インディーズシーンで活動するV系バンドたちを中心に、クラウドファンディングの成功例も多く誕生している。

 利点はいくつか考えられる。まず、表現したいことをできる限り純度の高い状態でリスナーへ届けることができる点。「ヴィジュアル系」というくらいだから、V系には、視覚、映像作品にもこだわりをもつバンドが多い。時には過激でグロテスクな表現を用い、メジャーの流通では規制をかけざるをえない作品も出るほど。それほどに、映像作品にも妥協がないと言い換えることができるし、V系にとってMVは、まさにビジュアルで自分たちを表現する大切なツールである。例えば、0.1gの誤算は、活動5周年を記念したMVの制作費をクラウドファンディングで募った。楽曲やMVにユーモアを乗せるのが得意な0.1gの誤算。MVのコンセプトは『2021年東京オリンピックを盛り上げるMusic Video』で、これを198%の達成率で成功させた。制作されたMVはすでにYouTubeで公開されているが、スポーツ、応援団、和、青春漫画の要素がちりばめられ、かつ、ど派手な衣装でヘドバンしながら演奏するというV系らしさも盛り込んだ内容で、観る者を楽しい気持ちにさせる。動画のコメント欄には、前向きな意見が多く、中には、海外からと思われるコメントも見受けられる。

0.1gの誤算/桜花爛漫!天晴れサムライ応援歌(MV Full)

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