竹原ピストル、歌うたいであり続ける意志 「ガキんちょの頃の“一番になってやる気持ち”がいまだに残ってる」

竹原ピストル、歌うたいであり続ける意志

「“歌うことに対する自分の気持ち”をそのまま歌っている」

ーー「Float Like a Butterfly, Sting Like a Bee !!」は、ビートとフロウの絡みが気持ちいい曲ですね。

竹原:ありがとうございます。「Float Like a Butterfly, Sting Like a Bee !!」はモハメド・アリさんにまつわる名言ですけど、「このフレーズで韻を踏めないか」という考え方ですね。「蝶のように旅路を彷徨い、ときに蜂のように歌を突き刺す」というイメージなんですけど、〈ぶんぶんぶんはちがとぶ〉と〈ちょうちょう ちょうちょう〉をサンプリングみたいにハメ込んで、Cメロにはラップみたいなパートも入れて。ちょうどFIRE BALLをよく聴いてたから、「ああいうレゲエみたいなテンションも入れたい」とか思って、楽しく作った記憶があります。

ーーそういうアイデアを具現化するアコギと歌の技術もすごいなと思います。表現の幅は確実に広がってますよね。

竹原:自分で言うとこっ恥ずかしいですけど、「いつの間にか、こういうこともできるようになったんだな」というのは年々増えてる気がします。去年、指弾きも始めたんですよ。去年の春、最初の緊急事態宣言のとき、自宅の小さい防音室で録った動画をSNSに投稿してたんですけど、ピックでガーッと弾くと、歌がギターの音量に負けてしまって。音量を抑えるために馴れない指弾きをやってみたんだけど、しばらくすると何となく雰囲気が出てきて。今までまったくやったことがなかったんだけど、ライブの実戦でも使えるようになってきたんですよね。「なにもしないがしたい」も指弾きなんですけど、レコーディングでやってみたのは初めてで。そうやって少しずつやれることが増えてるんだと思います。

竹原ピストル - 「今宵もかろうじて歌い切る」

ーー「今宵もかろうじて歌い切る <Live at ドラマ『バイプレイヤーズ』撮影現場ver.>」も貴重な音源だなと思いました。

竹原:その名の通りなんですが、『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)の撮影現場で歌わせてもらったテイクをそのまま収録させてもらいました。スタジオでレコーディングしたバージョンも配信していて、そっちも好きなんですけど、人前で歌うことで違った力がこもっている気がしたんです。『バイプレイヤーズ』は第1シリーズ、第2シリーズ、そして第3シリーズのエンディングテーマも担当させてもらってるんですけど、3回目ともなると、あつかましくも「またこの現場に戻ってこれた」みたいに思ってしまって。日本が誇るベテラン俳優の皆さんの前で歌えることも嬉しいし、大杉漣さんがいなくなってしまった寂しさだったり、いろんな感慨があるんですよね。

ーーそして「ギラギラなやつをまだ持ってる」は、まさに歌うたいの歌。〈尽きぬ闘志を Still Going On〉というフレーズにグッときました。

竹原:これも〈Still Going On〉と〈尽きぬ闘志を〉で韻を踏めるな、というところから始まったんですよ。これをサビにした時点で、まあ、こういう内容の曲になりますよね。“歌うことに対する自分の気持ち”をそのまま歌っているし、実質的な表題曲です。

ーー今もなお、闘志を持って活動し続けていると。

竹原:はい、そこは色褪せることなくありますね。44歳になりますが、ガキんちょの頃から、人前で歌ったり、出し物をするのがすごい好きだったんですよ。「なぜ?」と問われても、「そういう人として生まれたから」としか言いようがないんですけど、緊張感も好きだし、ウケれば天にも昇る気持ちになれるし、スベればドン底まで落ち込む。中学・高校になると「〇年〇組のあいつ、ギター上手いらしい」みたいな話を聞くたびに、「絶対、俺が一番になってやる」と思っていて、恥ずかしいんですけど、そのときの気持ちがそのまま残ってるんですよね。世の中には、「なんでそんなにすごい曲を書けるんだ?」とか、「どうしてそんなにすごい歌が歌えるんだ?」とか、すごい人があまりにも多いじゃないですか。そういう人たちがいる限り、「いつか俺が一番になってやる」と思い続けるんじゃないですかね。たぶん、くたばるまで。

ーーその強烈な上昇志向が、音楽を続けるモチベーションを支えているんですね。

竹原:あとはやっぱり、ライブを観てくれるお客さんがいることですね。「あんたらの前で歌うことがどんだけ好きか、そこにどれだけ俺が執着してるか、わかってんのか?」って(笑)。自分がそういう人間でよかったとも思いますし、「ギラギラなやつをまだ持ってる」は刺々しくて殺伐とした表現だけど、そういう気持ちを綴った曲ですね。

竹原ピストル - 「きーぷ、うぉーきんぐ!!」(「BLUE/ブルー」Ver.)

ーー「きーぷ、うぉーきんぐ!!」も“続けることの大切さ”がテーマになってますね。

竹原:『BLUE/ブルー』というボクシング映画の主題歌として書いた曲ですね。さっきも言いましたけど、こういう場合は、「依頼してくれた方々に喜んでほしい」という気持ちが強くなるし、作品にピッタリ合う曲を書こうと思って。『BLUE/ブルー』の主要な登場人物は当然ボクサーなんですけど、彼らが本当にダメで。ボクサーとしての明るい未来なんかないし、何も残せないと思うけど、〈もはや足跡を残したいわけじゃない/でも足音を鳴らしていたいんだ〉と歌っていて。「好きだったら、やったらいいじゃない」という“呆れ”を帯びながらも背中を押せるような曲ですね。

ーーそのなかには、竹原さん自身がボクシングをやっていた頃の思いも重ねているんですか?

竹原:いや、それはないですね。ボクシングをやってた頃の自分は、人生で一番シャキッとしてたんで(笑)。

ーーこの曲のようながむしゃらさではなかったと(笑)。今作『STILL GOING ON』を引っ提げた全国ツアーは、残念ながらコロナ禍の影響で中止になってしまいましたが、次の活動はどうなりそうですか?

竹原:とにかく曲を作って、音源をバンバン出したいです。ツアーはできなくなったけど、応援してくれてる人たちに楽しんでもらいたい気持ちは変わらないし、曲を作って、配信とか、何らかの方法で伝えたいなと。「またバカみたいなこと歌ってるな」とか「また同じ話してんじゃん」とか、暇つぶしみたいに思ってもらいたいんですよ。そのための歌うたいだし、「俺という存在はそのためにいるんじゃねえの?」と思っているので。

■リリース情報
竹原ピストル New Album『STILL GOING ON』
2021年8月25日(水)リリース
・初回限定盤(CD+フォトブックレット)¥4,620税込
・通常盤(CD)¥3,300税込
・生産限定盤(LP)¥4,620税込
・スペシャルパッケージ(初回限定盤+オリジナルグッズセット) ¥9,900税込
※オリジナルグッズは「Tシャツ+リストバンド+タオル」、ビクターオンラインストア(VOS)のみ販売

<CD収録内容>
1.とまり木
2.たった二種類の金魚鉢
3.御幸橋
4.なにもしないがしたい
5.あっかんべ、だぜ故郷
6.南十字星(はいむるぶし)
7.Float Like a Buttrefly, Sting Like a Bee !!
8.今宵もかろうじて歌い切る <Live at バイプレイヤーズ撮影現場 ver.>
9.ギラギラなやつをまだ持ってる
10.夏のアウトロ コオロギの鳴く頃
11.きーぷ、うぉーきんぐ!!
12.リョウメンシダ <弾き語りver.>

竹原ピストル オフィシャルサイト

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