V6、『STEP』に刻み込まれた最後まで攻め抜くスタイル 6人の美学が詰まったラストアルバムを聴いて

 V6が9月4日に14thアルバム『STEP』をリリースする。今年の11月1日、CDデビュー記念日をもって解散を発表しているV6にとって、本作がラストアルバムとなる。だが、その内容はまさに「攻め抜いた」という言葉がぴったりな勢いを感じるものに。決して、置きにいくようなことはしない。「最後の最後までV6らしいな」と誇らしい気持ちでニヤリとしたくなる。

 1曲目は「雨」。ラッパーのKOHHが提供したミディアムスロウな1曲で、発売に先駆けて公開されたMVにはただただ驚かされた。こんなにも振り切ったMVで勝負してくるとは、と。ジャニーズアイドル=キラキラと明るく元気を届けてくれる存在というのが、一般的なイメージだろう。デビューから26年、彼らが見せてきた和気藹々とした姿は、まさにアイドルグループの鑑とも呼べる微笑ましいもの。だからこそ、なおさらこの集大成となるラストアルバムの1曲目に、このダークな雰囲気が漂う「雨」を持ってきた、その攻めっぷりに驚かされたのだ。

 まるで、1本の映画を見始めたかのような緊張感。森田剛がわななき、三宅健は自らを撃ち抜き、岡田准一は傷ついた身体を引きずって歩み進む。坂本昌行はうつろな眼差しで雨を見つめ、長野博は壊れてしまったようにふらつき、井ノ原快彦は車の中でハンドルに頭を打ち付ける。舞台にドラマにと演劇の仕事をコンスタントに手がけてきた彼らの迫真の演技に、一気に引き込まれる。傷つき、また自らを責めるように苦しむ彼らは、やがて森の中で思い思いのダンスを踊りだす。すると次第に6人の動きが呼応して、ピタリと合う瞬間を迎えるのだ。

 このMVは、もしかしたら影のV6なのかもしれない。いつも光を見せてくれた彼らが、見えないところで戦い続けてきた姿。それぞれが人知れず汗や涙、ときには血を流すような苦悩を抱えたとしても、そしてどんなに冷たい雨が降ったとしても、6人で揃ったときにはV6としてまとまることができた。誰ひとり欠けることなく、いびつに歪むことなく、6人で作った輪で踊り続けた。そんな奇跡のような26年を感じずにはいられない。

V6 / 雨

 この「雨」のMVは、丸山健志監督、振り付けをs**t kingzと話し合って作られたと三宅がラジオ『三宅健のラヂオ』(bayfm)にて語っていた。「s**t kingzが褒め上手だから、みんないい気になっちゃったりして。“最高っす! この色気は、若い年齡の人たちには出せないですね”とか言ってくれて。みんなベタ褒めするから、“ああ、そう?”とか言って(笑)。みんなその気になって踊ってた」と、撮影現場の微笑ましさは私たちの知るV6そのもので安心する。

 デビューから変わることのなかったV6の輪。その強固な輪があってこそ一人ひとりがストーリーを描き、グループとしてもチャレンジングに進化し続けることができた。もちろんその影には多くの試練に打ちひしがれ、雨が止まないうちにまた挑まなければならないこともあったはずだ。光と影が表裏一体な日々を過ごしながらも、6人が揃ったときにしか見られない景色があった幸せをしみじみと想う。そんな人生の機微までも説得力を持って表現できるのは、“今”のV6ならではだと痛感する。

 ラストアルバムにして、この攻める姿勢に「解散をする必要がないのでは」と思わずにはいられない。だが、そのスタンスを貫き通せる今だからこそ、V6がデビューした日に“Full Circle”を完成させようとしているのかもしれない。解散の日でありながら、一周してスタートラインに立つということ。このラストアルバムが新たな始まりへのステップなのだと考えると、アルバム名に『STEP』と付けたところにもV6の美学を感じるのだ。

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