4thアルバム『コトバアソビ』インタビュー

TRUE、『コトバアソビ』に込められた歌い続ける決意 アルバムを通して伝えたい、13曲の“音楽”と“言葉”

「今回のアルバムは軸に太い私がいる」

ーー続く「Blast!」(『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』主題歌)も“音楽”についての曲ですよね。

TRUE:音楽を諦めないで続けていくことの強さと、音楽の楽しさを表現した曲ですね。「MUSIC」と通ずるものがありますけど、楽しさだけでなく、苦悩も描いていて。音楽と向き合ってきて、歌うことを諦め続けないできた私をそのまま投影できていると思います。

【TRUE】「Blast!」Music Video(『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』主題歌)

ーーこの歌詞を体現してますよね、TRUEさんは。

TRUE:ありがとうございます。タイアップ曲は作品のための歌を作っているんですけど、それだけではなくて、きちんと自分自身の曲として作らないといけないと思っていて。作品のための歌だけど、私自身の歌にもなっていると思います。

ーー例えば、「Storyteller」も『転スラ』第2期オープニング主題歌ですけど、作家活動やTRUEとしてアーティストデビューした経緯もまさに転生のように感じていて。

TRUE:いや、本当に私はこの世界に転生してきたようなものですからね(笑)。「Storyteller」に関しては、自分の人生は自分で切り開いていくものだし、誰かに決められるものではないと思っていて。だから、大事な選択は常に自分自身で決めるようにしているんですけど、その分岐点で間違った選択をすることもある。でも、それは必ずやり直せるし、本人が諦めなければ何度でもできることだと思うんですね。この楽曲においても、そういう決意を表現できたと思うし、少なからず誰かの背中を押すことができていたら良いなと思いますね。

ーーこのまま『転スラ』関連の曲に関して聞かせてください。「Another colony」はアニメの第1期(2018年)のエンディング主題歌でした。

TRUE:制作をした時よりも、コロナ禍を経験することで、ものすごく意味のある楽曲に育ったなと思いますね。この〈負けちゃいけない〉というフレーズがすごく大きな意味を持つものになって。それは私の力というよりも、皆さんが何かを変えようとする力だと思うので、リスナーの皆さんに感謝しています。「DREAM SOLISTER」(TVアニメ『響け!ユーフォニアム』オープニング主題歌)と「Storyteller」は作った当初よりも格別に大きく成長したなと思います。

【TRUE】「Another colony」Music Video(TVアニメ『転生したらスライムだった件』エンディング主題歌)

ーーもう1曲、TVアニメ『転スラ』第1期の23話の挿入歌「僕の中の君へ」も収録されています。

TRUE:アニメが終わりに近づいてきた頃で、これまでのリムルとリムルの中にいるシズさんの軌跡を辿る回だったんですけど、リムルとシズさんだけじゃなく、アニメを観ていた方や、私の音楽に手を伸ばしてくれた方の帰る場所みたいな存在になれたらいいなと思って。王道なメロディで、わかりやすいバラードなんですけど、だからこそ、誰が聴いてもほっとするような曲に仕上がったと思います。

ーー生きる勇気が湧いてくるような曲ですよね。アルバムの新曲に戻ると、「空に読む物語」は「MUSIC」と同じくトミタカズキさん提供曲ですが、こちらは歌とピアノから始まって、次第にスケールを広げていくロックバラードとなっています。

TRUE:「空に読む物語」と次の「inorganic」はどちらも失恋の歌ですね。恋が終わったあとの物語を2つの側面で描けたらと思っていて。「空に読む物語」は儚くてウィスパーな表現で、皆さんが聞き馴染んでいる私のキーよりもはるかに低い設定の曲です。「inorganic」は、ドライフラワーをモチーフに描いた曲で、乾き切って荒れ狂うようなエモーショナルな世界。感情の起伏を思い描いたとき、古いすすけた花瓶の中に入ったドライフラワーが連想できたんですね。1つのシチュエーションの感情の振れ幅が、この2曲で表現できたと思っています。

ーー「inorganic」は「無機」という意味ですが、楽曲はギターのリフが効いたポップロックになっていて、タイトルとのギャップを感じました。そして、この後の「Acceleration」にびっくりして。

TRUE:イントロからサイレンが鳴ってますからね(笑)。「Acceleration」はライブをイメージした曲になってます。神田ジョンさんには以前から数曲書いてもらっていて、その中の「分身」という楽曲がライブの定番曲になっていて。今回は、これから何かが始まるぞという、「分身」を超えるような楽曲をお願いしました。「ここから何かが加速するぜ」というような雰囲気が欲しかったので、「サイレンとかもいいですね」とアイデアを出させていただきました。でも、まさかここまで洋楽テイストの曲がくるとは思ってなかったので、アルバムの中でも一番挑戦した曲だと思います。

ーーヘヴィなミクスチャーロックで、シャウトだけじゃなくラップもしています。

TRUE:私、今まではラップを避けてきたところがあったんですけど、意外といけるんじゃないかと思いました(笑)。あと、「Acceleration」と「リブート!」の2曲が一番言葉遊びをしている楽曲でもあって。「Acceleration」は歌詞の意味合いを考えるというよりは、耳に入ってきたものをそのまま感じていただくだけで良いと思っていて。だから、レコーディングも考えすぎずに歌おうと思いながら臨みました。言葉遊びに重きを置いて作った感じですし、11月に開催予定のライブタイトルにもした「Acceleration」=これから加速していくための1曲に仕上がったと思っています。

ーー「リブート!」も言葉遊びなんですね。

TRUE:そうですね。今回のアルバムでは、言葉で遊ぼうっていうテーマで制作していたんですけど、同時に、自分が持っている正しい感情や間違った感情、綺麗な言葉や汚い言葉、全部を表現してみたいっていう欲求があって。その中でも特に「リブート!」には、今まで見せてこなかった、私の中の“エグみ”みたいなものをきちんと吐き出して、肯定してあげて、音楽に落とし込む作業ができたと思ってます。人間としても、アーティストとしても、自分自身を商品として作っていく側面と、その商品の中には生身の人間としての私がいる。さらにはその描いている私にも秘めている感情もある。そういうせめぎ合いの中で、日頃、楽曲制作や音楽活動をしていることを、初めて言葉にして肯定したら、なんか景色が開けてきて。

ーー確かに〈見上げた果て/視界が澄み切った〉と歌ってますね。

TRUE:なので、すごくスッキリしました! 自分自身が作ってきた、「こんなふうに見られたい」とか、「こういう人でいたい」みたいなものを思い切り壊せてよかったなと思ってます。まだまだ私にも可能性があるなと感じたし、ここからもう一回、リブートできるという気持ちでいますね。

ーーライブ曲が続いた後に、また一転しますね。「叙情詩とロマンス」は、クラシカルなピアノと弦、打ち込みが融合したミュージカルや映画主題歌のような楽曲になってます。

TRUE:まさに1本の映画を作っているような感覚がありましたね。ここまで何かに突き動かされて、言葉を書くっていう経験は作家としてもなかったので、作家さんがあげてくるメロディに全てを委ねてみようかなと思って。でも、それと同時に、作家さんも歌詞にメロディやアレンジを書かされたと思ってるのではないかな、というくらい場面転換がピタッとハマっているんですよね。こんなクリエティブの生み出し方は、早々出会えないなってくらい、衝撃的な楽曲でした。全13曲の中で、私の中で満足度、完成度が最も高い楽曲です。ここまでの楽曲はもう作れないかもしれないと思うくらい全てが備わった曲なので、今後の自分にとっての高いハードルにもなった曲ですね。

ーーそして、続く「ステラ」はTVアニメ『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』(AT-X、TOKYO MXほか、以下『変好き』)第7話の特殊エンディングテーマとして制作された曲です。

TRUE:お声がけいただいたとき、すごく嬉しかったです。監督さんからリクエストをいただいて制作したんですが、自分の力だけで曲を生み出そうとすると、ここまで甘酸っぱい初恋の歌は描けないんですよ。でも、思考的に『変好き』の要素が入ることで素直に表現できた。この曲はとても気に入ってるし、ファンの方の中でもこの曲を好きっていう方がすごく多いのが嬉しいですね。

ーーアルバムでは、この後に「僕の中の君へ」「Storyteller」と続き、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主題歌「WILL」へと繋がっていきます。

TRUE:ヴァイオレットともに歩んできて、もう4年になるのかな。彼女に見せてもらった景色はとても大きいし、私の音楽人生でもかなりのスペースを占めていると思っています。自分の音楽史を語るときに、彼女の存在は今後も欠かせないでしょうし、ヴァイオレットという一人の女の子の人生が、すごく幸せな結末を迎えられたことがとても嬉しくて。私の中では子供を見守るような気持ちもあるし、最後に彼女にこの曲をプレゼントできたことはとても幸せでしたね。だから今回、アルバムを作るときには最後を「WILL」にしようというのは決めていました。13曲目の「Sincerely(English Version)」はボーナストラック的な役割だなと思っていたので、「WILL」がアルバムの締めくくりというイメージですね。

ーー「WILL」のMVをはじめ、TRUEさんのMVには本や日記などがよく出てきますよね。

TRUE:確かに「Another colony」は私が水中図書館でたゆたっているシーンがメインで使われているし、「Storyteller」もそうですね。私の楽曲をイメージしてくれる方が出してくれるアイテムは、本やペン、言葉といったキーワードが多くて。皆さんの中で、多分歌う人と同じくらい、言葉を綴る人や伝える人というイメージが大きいんだろうなと感じています。私にとっても、子供の頃から本を読んだり、言葉を綴ったりすることが日常にあったので、自然なことなんだと思います。

【TRUE】「WILL」Music Video(『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』主題歌)

ーー作詞家として10年、TRUEとして7年目に入りましたが、言葉を綴る人と、歌う人は別々ですか。

TRUE:いえ、私はそんなに器用ではないし、自分自身を使い分けられる人ではないので、全てがイコールだと思っています。そしてそれでいいと思ってますね。

ーーちなみに、アルバムのタイトルを日本語にしたのは初めてですよね。

TRUE:実は色々と候補があったんですけど、カッコつけて英語のタイトルをつけるよりも、日本語のタイトルが今の私には一番しっくりくるかなと。本当にこの13曲をまとめ上げるには相応しいタイトルになったんじゃないかなって思います。

ーー言葉で遊んで、音楽を楽しんで、次はもう見えてますか。

TRUE:ここがゴールじゃないとは思っています。今回のアルバム制作でかなり満足してしまったんですけど、止まるつもりもなくて。前作からの3年間、私自身はかなりのスピード感を持って前進してきたなと思っています。だから、ここはあくまでも通過点だと思っていて。前回のアルバムは解放がテーマで、作家さんから見た私を書いていただいて、「私を解放させてください」というスタンスで曲を作ったんですけど、今回のアルバムはかなり軸に太い私がいるというか。言葉を愛したり、憎んだり、迷ったり、あがいたり、そういうことを繰り返してきた私だから伝えられるものが集約できていると思うんですね。だから、『コトバアソビ』を完成させた先に見えた景色って、実は鮮明にあって。この先は、もっと貪欲に音楽を掴みに行ったり、学びに行ったりするフェーズに入るんじゃないかなと思っています。コロナ禍はみんながインプットしている時期だったと思うんですけど、私はアウトプットしていた時期だったので。これからは、自分が今見据えている目標に向かって、1つひとつを自分の中に落とし込んでいくインプットする時期に入ると思います。

ーー11月には1月の中野サンプラザ以来となるワンマンライブも決定してます。

TRUE:皆さんも10カ月間で色々な葛藤や不安があったと思いますが、この期間で前進して成長した私を見たら、きっと安心してくださると思います。それに、みんなの中にも“加速”が芽生えるんじゃないかなと思って。そこで生まれる、お互いのエモーショナルなエネルギーを感じるのが楽しみだし、声は出せないかもしれないけど、これまで以上にぶつけ合えたらなと思います。

ーー劇場で『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観て、大泣きしてファンになった人が、ライブで「Acceleration」を聴いたら驚くかもしれないですね。

TRUE:〈狼煙あげろ!〉って言ってますからね(笑)。でも、ワンマンライブは起承転結があって、様々なドラマがあって2時間が完成すると思うんです。だから、私の色々な側面を楽しんで欲しいし、思い思いに音楽を楽しんでもらえたらいいなと思いますね。

■リリース情報
TRUE
4thアルバム『コトバアソビ』
8月25日(水)発売
購入はこちら

【初回限定盤 (CD+BD)】
価格:¥5,280(税込)品番:LACA-35886
<BD収録内容>
『TRUE Live Sound! vol.4 ~Progress~』LIVE映像

【通常盤】
価格:¥3,300(税込)品番:LACA-15886
※初回生産分封入特典:『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』ライブチケット先行案内封入(シリアルナンバー入り)

<収録楽曲>
01. MUSIC
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:トミタカズキ (SUPA LOVE)
02. Blast!(『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』主題歌)
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:加藤裕介
03. Another colony(TVアニメ『転生したらスライムだった件』エンディング主題歌)
作詞:唐沢美帆 作曲:中野領太 編曲:BBC
04. 空に読む物語
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:トミタカズキ (SUPA LOVE)
05. inorganic
作詞:唐沢美帆 作曲:久保田真悟 (Jazzin’park)・栗原暁 (Jazzin’park) 編曲:久保田真悟 (Jazzin’park)
06. Acceleration
歌詞:唐沢美帆 作曲・編曲:神田ジョン
07. リブート!
作詞:唐沢美帆 作曲:siji 編曲:渡辺和紀
08. 叙情詩とロマンス
歌詞:唐沢美帆 作曲・編曲:山下洋介
09. ステラ(TVアニメ『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』第7話 特殊エンディング主題歌)
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:h-wonder
10. 僕の中の君へ(TVアニメ『転生したらスライムだった件』第23話 挿入歌)
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:山下洋介
11. Storyteller(TVアニメ『転生したらスライムだった件 第2期』オープニング主題歌)
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:津波幸平
12. WILL(『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』主題歌)
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:Evan Call
13. Sincerely (English version)
作詞:唐沢美帆  作曲:堀江晶太  編曲:堀江晶太・Evan Call 英訳:Lynne Hobday

<初回限定盤BD収録内容>
『TRUE Live Sound! vol.4 ~Progress~』
2021年1月17日(日)中野サンプラザ
01. 黎明
02. Lonely Queen's Liberation Party
03. Another colony
04. 終わりたい世界
05. 名前のない空腹
06. Dear answer
07. ステラ
08. memento
09. Sincerely
10. Blast!
11. 分身
12. 次の僕へ
13. サウンドスケープ
14. WILL~未来のひとへ
<アンコール>
15. BUTTERFLY EFFECTOR
16. Storyteller
17. DREAM SOLISTER

■ライブ情報
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
日程:2021年11月23日(火・祝)Open:17:00 / Start:18:00
会場:TOKYO DOME CITY HALL
チケット料金:全席指定¥7,700(税込)

■関連リンク
Official HP
Official YouTube Channel
Official Twitter

関連記事