RAKURA、高校卒業~上京を機に広がった価値観 10代シンガーソングライターが見据えるコロナ禍以降への希望
(高校を卒業して)広い世界を想像して曲を書けるようになった
ーー早くも新曲がリリースされますが、『In me』のあとはどう考えてましたか。
RAKURA:私にとって、『In me』はスーパーミラクルすごい1枚だったので、これを越せるかな? って話してたんですね。それに、ミニアルバムを初めて出したことで、RAKURAってどういうアーティストなんだろうって興味を持ってくれる方もちょっとずつ増えてきたと思うんです。その期待に対して、次の曲でどう応えていけばいいのか。すごく時間をかけて悩みましたね。
ーーどんな曲を歌いたいと思ってましたか?
RAKURA:私が「今のこの世界に届くような曲を作りたい」と言って。そこから始まりましたね。今、コロナ禍で思うように生活できない方々に寄り添えるような曲を作りたいなと。
ーー自分自身のことじゃないんですね。
RAKURA:そうですね。今年の3月に上京して、これまでとは違う環境での生活が始まりました。一人になって感じるものとか、身の回りで起こってることが、全て初めてで、新しくて。毎日がすごく刺激的なんすね。だから、今までは自分の世界のことを書くことが多かったんですけど、いろんな状況を見たり、もっと大きな規模で感じることが増えたんですよ。これまでの私の世界は学校しかなかったから。
ーー世界が広がってるんですね。インプットも増えてるんじゃないでしょうか。
RAKURA:そうなんですよ。最近、本を読み始めまして。カフェに行って、1日中読んだりしてるんですね。今までは本をほとんど読んだことがなかったから、本屋さんに行って、目立つ場所に置かれているものを手に取って読んでみて。最近だと『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ著)を読んだんですけど、自分の知らないところや見えないところで、声をあげてる人っていっぱいいるんだなって感じたんですよね。私も、どこにも届かない声を発信してる人たちの声を聞けるようになりたいと思ったりして。これまでは、自分の内側にあるものや自分の経験から基づくことを書いてきたけど、東京にきたことで、周りに目を向けた曲や広い世界を想像して曲を書けるようになったと思いますね。
ーー改めて、どんな人たちを想像して、どんな思いを書きたいと考えていましたか。
RAKURA:いま、本当に苦しんでる人や限界を感じている人ってたくさんいると思うんですよ。だから、そういう方々に聴いていただいたときに少しでも前を向けるような、背中を押せるような歌になればいいなと思ったんですけど、「大丈夫だよ」っていう曲にはしたくなかった。そんな無責任なことは言えないし。限界の状態でもがいてもがいて、そこに差し込む一筋の希望みたいなものを表現したかったんです。
ーー細かいところですけど、〈3年前〉と歌詞にあるのは?
RAKURA:数字に特に意味はないんです。私が3年前に大失恋したとか、ひどい傷を負ったわけではなくて。過去、現在、未来という時間軸を曲に入れたかったんですね。でも、過去とか昨日とか、明日とか未来というような抽象的な言葉は使いたくなくて。あえて具体的な数字を使って、この曲を聴いてくれた人が、自分自身の3年前を思い出してくれたり、自発的に自分の過去を振り返られるようにしたいと思って、あえて具体的な数字を使いました。
ーーまた、〈全てなくしたかのように/世界に取り残されても〉というサビを4回繰り返してますが、最後だけ〈お偉いさんたちの児戯に/世界が振り回されても〉になってますね。
RAKURA:ここはパンチラインになる歌詞だと思うんですけど、10代の私が歌う曲として、みなさんが「おっ」て反応してくれるといいなと思って。いろんな物事は世界中で大人の方達が決めることが多かったりするじゃないですか。その中でも、おかしいんじゃないかなって感じることもあって。それに対して、10代から見た皮肉めいた言葉を入れてます。
ーー日本の音楽シーンではあまり社会的なメッセージを発するアーティストが少ないので、まんまと「おっ!」と反応してしまいました(笑)。RAKURAさんご自身は限界が来たらどうやってリカバーしてますか。
RAKURA:気分がとにかく落ちた時は、ずっと泣いてます。少し落ち着いてきたら、音楽を聴いて、今度はゆっくりと泣いてます(笑)。だから、この曲のタイトルとも関わってくるんですけど、全て時間が解決すると思っていて。3年前も、ただの3年前だし、今もすぐにただの3年前になる。だからこそ、前を向こうっていうメッセージを伝えたかったんですね。3年前にいろんな大変なことがあったとしても、過去を振り返れること自体が、ここまで生きてきた証拠というか。いつか、今を振り返る日が来ると思うので、それまでの愛を繋げていけたら素晴らしいなって。