Official髭男dismに圧倒され続けた待望の有観客ライブ ワンマンツアー前哨戦で見せたパワーアップした姿

ヒゲダン、ぴあアリーナMMレポ

 2020年2月22日の鳥取県米子市公会堂公演以降、止まっていた時計が動き出すように「I LOVE…」でスタートしたセットリスト然り、「自分が決めたことに自信を持てるように」と藤原聡(Vo/Pf)が繰り返していたように、リアルライブに足を運ぶのも、今現在は自宅で配信を待つのも、どちらも正しいという表明然り、そしてもちろんやるからには120パーセントの準備とパフォーマンスでどんな手段で見られてもOKなライブそのものの完成度然り。今とこれからのOfficial髭男dismの意思表明には大いに揺さぶられた。

 2021年6月23日、24日(24日は昼夜2公演)、有観客オンラインライブ『Official髭男dism Road to 「one – man tour 2021-2022」』がぴあアリーナMMにて開催された。オーディエンスを前にしたライブとしては1年4カ月ぶりの公演を行ったOfficial髭男dism。今回は24日の夜公演をレポートする。

 開演時間を迎えたとはいえ、BGMで流れているMy Chemical Romance「Welcome To The Black Parade」で会場全体のクラップが大きくなる辺りに客席の期待値が伺える。そんな中、いよいよ場内が暗転。想像以上に横に広いステージ後方のビジョンにライブタイトルが投影され、サポートメンバーを含む総勢10名がずらっと横並びのシルエットで確認できた時、明らかに心拍が上がった。ホーンのアンサンブルが幕開けを示唆するような「I LOVE…」は有機的に風を孕んでいき、穏やかな中にも後半のクラップでアリーナに早くも一体感が生まれる。続く「HELLO」で背景のビジョンが4分割され、メンバーの表情を捉える。ステージから最も遠い4階スタンドで見ている筆者にもタイムラグなく小笹大輔(Gt)の繊細かつエッジの効いたオブリガードや楢﨑誠(Ba/Sax)のダウンピッキングが明確に届いた。エンディングに向けての藤原の〈ハロー!〉のロングトーンは腹式呼吸がさらに更新されたのでは? と思わずにいられない。

 松浦匡希(Dr)のハイハットワークの繊細さやアンサンブルなど、大音量で圧倒するのではなくバランスで曲の輪郭を浮かび上がらせた「パラボラ」は洋楽のライブの音像に近い感覚。また「イエスタデイ」は藤原以外の3人のコーラスが映える。「Laughter」では背景にMVの少女二人の冒険譚の続きと思しき映像が投影され、演者よりビジョンに意識がいく演出が施されていた。しかもフロアにも配置されたライトが垂直に立ち上がり、オーディエンスこそがこの楽曲の主人公であるよう意識を促す効果があった。

Official髭男dism

 聴かせたい曲がたくさんあると藤原が冒頭に言った。その言葉通り、淡々と世界観の違う楽曲を演奏する10人。良い緊張感を保ち、演奏に集中している。空気感が変わったのは松浦の生音ヒップホップを意識したタイム感にヨレのあるビートが際立った「Rowan」だ。ソウル/ジャズ寄りの小笹のギターのトーンとフレーズもメロウに響く。映像はモノトーンで、1曲ごとに楽曲の世界観へ没入できる演出も徹底している。それもあってか、シームレスに流れるような展開ではないのだが、今回はそのことがむしろ次の楽曲への期待値に繋がっていたように思う。マスクの中で深呼吸し、次の曲に聴き耳を立てると、ホーン隊のジャジーなセッションの中からフレーズを掴んで「Pretender」であることがわかるという、粋なライブアレンジだ。小笹のあのリフレインにはすでに年輪すら感じるのは意識的にしろ、偶然にしろこの曲を何度となく聴いてきた証明だ。いい意味で「Pretender」が浮かないことに歳月の流れを感じた。

 ふと思ったのが、前半に披露された楽曲「HELLO」や「Laughter」が未見である気がしない不思議さだ。もちろん配信ライブやテレビ出演で目にしてきたわけだが、その一つ一つの機会にパフォーマンスの印象を刻んできた証が、初めての気がしない理由ではないか。特に映像作品になった昨年9月のオンラインライブ『Official髭男dism Tour 2020 – Arena Travelers』を行った意味や重要性を実感した。

Official髭男dism

 相対して全くの初見は「Cry Baby」。赤いライトが点滅しサイレンが響き渡る中、ハンドマイクで仁王立ちの藤原、サポートのピアノが強いタッチで冒頭部分を支え、いったんメジャーコードで晴れ間をのぞかせたかと思うと、今度は強烈なストロボも相まって、メタルとクラシックが戦いながら融合するような展開へ。音源でもジャンル感が変化し続ける構成にしがみついていく感覚だが、ライブではさらに一瞬の出来事に感じた。全員、何をガイドに演奏しているのだろう? 藤原の歌なのか松浦のビートなのか。ここは配信映像で突き止めてみたいところだ。曲を味わうというより、構造を知りたい。そんな楽曲が存在するのも彼らならではだろう。曲の威力に圧倒され呆然としていると楢﨑ボーカル&サックスの「旅は道連れ」がスタート。オンラインライブでも見せ場だった、ステージ上のカメラが追うホーン隊、最後はセンターに集まる楽隊感はビジョンからも十分に伝わってきた。



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