『アイドリッシュセブン Third BEAT!』放送直前 アニメ2期で描かれた各アイドル達のストーリーを辿る
ゼロアリーナのこけら落とし公演を巡る混乱の中、悪意を向けられたのはIDOLiSH7だけではない。伝説のアイドル・ゼロの曲をカバーすることを発表したRe:valeに対し、それに反発する何者かが「Get Back My Song」と看板に落書きしたのだ。不安要素は他にもある。Re:valeの結成5周年を間近に控え、百が歌えなくなってしまったのだ。
「俺は本物のRe:valeじゃない」と言った百が明かした秘密。実は、元々Re:valeは千が別の相方と組んでいたユニットで、百はそのファンだった。だが、ある時ステージから照明が落下し、千をかばった相方は顔に消えることのない傷を負ってしまう。ゼロのプロデューサーを名乗る男が、傷を直すことを条件にRe:valeを自分の手中に収めようとする。千はその取引を受けようとするが、千が自由でいることを願う相方は千の前から姿を消す。失意の中、引退まで考えた千のところへ押しかけたのが百だった。「5年だけでいいから自分を相方にして歌を続けて欲しい」と頼み込んで結成されたのが、現在のRe:valeなのだった。だが、 5周年が迫り、百は自分のRe:valeとしての期限が迫っていることに不安を感じていた。
ライブ直前まで百の声は復活せず不安が高まる中、二階堂大和の芝居により、百をかけがえないパートナーだと認めている千の本心が明らかになる。そして、千の元相方――小鳥遊プロダクションの事務員・大神万理との再会と、何よりも万理自身が今のRe:valeを認めていることがわかり、百も自信と声を取り戻すのだった。
『アイドリッシュセブン』のドラマを見ていると、「禍福は糾える縄の如し」という言葉が浮かぶ。この物語には、その場限りの幸福も、前触れのない失敗もない。すべては過去から連綿と続くひとつながりの事象であり、それはさらに未来にも影響していく。幸運と思っていたことが悲劇を生むこともあればその逆もある。その複雑さは私たちが生きるリアルと酷似しており、ファンから「アイドリッシュセブンは現実」と言われる由縁のひとつでもある。
『Second BEAT!』は、『アイドリッシュセブン』が単なる「アイドルもの」ではなく、もっと深い感情や、大きな社会を描こうとしていることが伝わる内容になっていたのではないだろうか。
そして、『Second BEAT!』で不安の種のいくつかは解消されたものの、新たに撒かれた種、そしてまだ発芽していなかった種が、続く『Third BEAT!』でさらに芽吹くことになる。アイドル達の前に立ちはだかるのは、「悪意」を持った新たなアイドル・ŹOOĻと、彼らをプロデュースするツクモプロダクションの新社長・月雲了。さらに、ぼかされていた大和の出自、六弥ナギの秘密にもついに焦点が当たり始める。
なお、『Third BEAT』の放送を記念し、2019年に開催された2nd LIVE『REUNION』のダイジェスト映像もYouTubeにて公開された。
このダイジェストを見れば、『アイドリッシュセブン』がますます現実味を帯びてくるだろう。さらに『Third BEAT!』が展開されることで、『アイドリッシュセブン』の描く壮大な世界は今まで以上に加速し、見るものを呑み込んでいくはずだ。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。Twitter(@erio0129)