映画『キャラクター』なぜ主題歌も“異色のキャスティング”に? プロデューサー 村瀬健が語る、ACAね×Rin音×Yaffleコラボの狙い
ACAね、Rin音が書き分けた“複数の人格”
ACAねが自分のパートとして提出した歌詞は、〈キスに逃げて 温い永遠は怖い〉から始まっている。
「届いたデモを聴いて、最初の1フレーズ目で凍りつきました。実は僕、誰にも言ってないんですけど、この映画は山城と両角のラブストーリーだと思って作ってたんです。山城は両角のカリスマ性に憧れているし、両角は自分を理解してくれる山城に心酔している。これはある種のラブストーリーだと。だから、いきなり〈キス〉と出てきて驚きました。『なんで知ってるの!?』って(笑)。もう一つ驚いたのが、両角の過去のようなものが書かれていること。映画の中に両角の母のことは一つも出てこないのに、〈母はきっと喜ぶし〉という歌詞があったんです。実は僕と監督と長崎尚志さん(原案・脚本)とFukaseさんしか持っていない『両角の履歴書』というものがあるんですけど、ACAねさんの歌詞に書かれてることって、ほぼその通りなんです。もちろんACAねさんにその履歴書は見せていません。もう、『参りました』と言うしかない」
「そしてRin音さんは、すごく丁寧に作品を見てくれる方ですね。Rin音さんの歌詞も『ジキルとハイド』ではなく、〈ジキルがハイド〉で始まるのがすごくいいなと思いました。〈2つ名を飛び回るパスポート〉という部分も、戸籍のない両角の人生を感じさせるし、あり得ないですけど、もしも殺人鬼の両角がラップをやっていたらこういう歌詞を書きそうだなという感じがして、さすがだなって思いました」
ACAね、Rin音が別々に詞を書いたことで、「俺」「お前」「君」「僕」と複数の一人称、二人称が混在する歌詞が完成し、結果的に「Character」は山城と両角の二面性を表すような、複数の人格を内包する曲に仕上がった。
「僕の中では、ACAねさんパートは両角の4人家族のうちの“もう1人”の視点、Rin音さんパートは両角を外から見ている人の感覚なのかなと捉えていて、MVもそういう感じでプロデュースしています。劇中で両角が1人でトラックを運転しているシーンがあるんですが、MVでは助手席にRin音さんが乗っていて、荷台にはACAねさんが乗っている。本当は両角1人なんだけど、彼の脳内のイメージの中には2人がいるという設定です」
歌詞だけでなく担当パートのメロディも、Rin音とACAねそれぞれが制作している。
「ACAねさんは、人のトラックをベースにメロディを作るのは初めてだったそうですが、最初に出してきてくれたものが、最終的な完成形のメロディとほぼ同じものでした。一聴して『わ、なんていいメロディなんだ!』って思ったんです。美しいのに、切なくて、痛々しくて。しかも、メロディにメジャー感もある。Yaffleさんの作る音楽って、とてつもなくカッコよくて、とてつもなくお洒落なんだけど、通好みというか音楽偏差値が高すぎるというか、いわゆるチャートを駆け上がる感じではないと思うんです。一方、ACAねさんの作るメロディには突き抜けるメジャー感があって、意外性があるのに王道。だから、今一番カッコいい音楽を作るYaffleさんの音にACAねさんのメロディで跳躍力を与えてもらおう、というのが一つの狙いでした」
「実は、Rin音さんが最初に出してきたものは、もっとメロディがしっかりありました。でもRin音さんのパートの後にACAねさんのパートがくるので、その対比を強調するためにメロディを抑えて、もう少しビートに乗せた攻撃的なものに作り直してもらっています。そうやってACAねさんとRin音さんが共鳴したものを、Yaffleさんが調理してでき上がったのが『Character』。文字通りのコラボ曲になったと思っています」
主演は菅田将暉×Fukase。作品を彩る主題歌は、Yaffle×ACAね×Rin音。映画『キャラクター』は、どこを取っても驚きが散りばめられた作品に仕上がった。
「観終わった時に『面白かった』『すごいものを観た』って言ってほしいんです。そのために、映画も重箱の隅っこまで面白く作っているし、その『面白い』『すごい』の中に主題歌も入ってほしい。僕は常々、映画と主題歌には幸せな関係というものがあると思っていて、いつもそれを目指しています。映画『キャラクター』を見れば自然と『Character』が頭の中に流れ出すし、ラジオでも街中でも、この曲『Character』を聴けば自然とこの映画を思い出す。そんな、2021年の音楽シーンにおける映画と音楽の最高のカップリングになってくれたらと思っています」
人は誰しも裏の顔がある。暴かれる山城の本性と、かすかに垣間見える両角の人間らしさ。出会ったことで人生を狂わされたのは山城と両角どちらだったのか。曲と併せて観ることで、さらにいろいろな視点が生まれてくるだろう。2回、3回と繰り返し観ることで、隅々に仕込まれた仕掛けを暴きたい。そんな思いに駆り立てられる。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129)
■主題歌情報
ACAね(ずっと真夜中でいいのに。)× Rin音 Prod by Yaffle
「Character」
配信中 ダウンロードはこちら
作詞:ACAね、Rin音
作曲:Yaffle、ACAね、Rin音
■映画情報
『キャラクター』
【キャスト】菅田将暉 Fukase(SEKAI NO OWARI) 高畑充希 中村獅童 小栗旬
【スタッフ】原案・脚本:長崎尚志 監督:永井聡
配給:東宝
©2021映画『キャラクター』製作委員会
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