アンジャッシュさんのネタに、ものすごく感動したんです

――休業期間中は、どんなことをされていたんですか？

浅香：当時の私は、もうホントに知らないことだらけだったというか、銀行でどうやってお金をおろすかも知らなかったんですよね（笑）。23歳の女性として、普通に知っていなきゃいけないことを、まったく知らなかった。「えっ、そうなの？」っていうことが、もうホント山のようにあって。そういうことを、ひとつひとつ学んでいきました。結局、4年半ぐらい休業していたんですけど、その期間は、ひとりの人間としても、女性としても、やっぱりすごく大切な時間だったなっていうのは、今振り返っても思いますよね。

――その後復活して、再び歌手としての活動を始めるわけですが、休業期間の中で何か見つけ出したり気づいたことってありましたか？

浅香：休業期間中は、当初テレビをそんなに観ないようにしていたんですね。芸能界からは離れようと思っていたので。ただ、その4年半の後半あたりから、「今は、どんなものが流行っているのかな？」って、いろんなテレビ番組を観始めるようになって……そこでお笑いにハマったんです。

――お笑いですか。

浅香：その頃、ちょっとしたお笑いブームみたいなものがあったんですよね。それで、いろんなお笑い番組を観るようになって。その中でもとりわけ、アンジャッシュさんのネタに、私はものすごく感動したんです。ネタの深さはもちろん、間の取り方とか、そのすべてに衝撃を受けて。というか、ものすごく笑ったんですよね。すごく久しぶりに大笑いして、そのあとものすごく清々しい気分になって。笑うことって、こんなに人の気持ちを変えるものなんだって、単純にすごいなっと思ったんです。で、そのとき、「私も、こういうふうになりたいな」っと。

――えっ？

浅香：いや、お笑い芸人になりたいと思ったわけじゃないですよ（笑）。お笑いに限らず、人の心を動かせるような存在になりたいなっと、そのときすごく思いました。

――なるほど。いわゆる「エンターテイナー」と呼ばれるような存在に。

浅香：もちろん、それまでも、「楽しんでもらいたい」という気持ちはあったんですけど、浅香唯＝アイドルだから、その夢を壊さないようにして、ファンの人たちのために歌いたいという感じだったんですよね。その殻を破ったというか、それだけじゃないなって思うようになって。アイドル＝浅香唯じゃなくて、浅香唯という人間そのもので、みんなを楽しませたいーーそんな思いが、その4年半のあいだに生まれてきたんです。だから、活動を再開するときは、どうしても歌手じゃなきゃ嫌だとかっていうことでもなかったですし、とにかくみんなが笑顔になれるようなことをやりたいと思っていたんですよね。

――再びステージに立って歌うようになって、昔からのファンの人たちは、すごく喜んだんじゃないですか？

浅香：そうですね。そう、ホントにビックリしたのが、私が休んでいた4年半のあいだ、浅香唯を忘れないために、ファンの人たち同士で私の「新聞」を作ってくれてたんです。全部手書きで、浅香唯のこんなところが好きだったとか、こんな思い出があるとか、これからの浅香唯に期待することとか、それぞれの思いを寄せた新聞で、それをファンのみんなに配ったりしていたみたいです。それが、回り回って休業中の私の元にも届いて、もういたく感動しました。……こんなにも私のことを待ってくれている人たちがいるんだったら、何としても復活しなきゃって背中を押してくれたところもありますし、それがさっき言った「人の心を動かせる人になりたい」っていう思いとマッチして。それで4年半後、本格的に活動を再開したんですよね。

――そこでさらに、ファンの人たちとの「絆」が強くなったというか。

浅香：それはありますよね。もちろん、デビュー当時からのファンの人もいれば、最近ファンになりましたっていう方もいらっしゃって。そういう人は、若い頃の私を知らなかったりするんですけど、そこは別に関係なくて、もう全部ひっくるめて、「ファミリー」みたいな感じなんですよね。

――なるほど。その際に武器となるのは、やっぱり往年のヒット曲の存在ですよね。曲との向き合い方みたいなものも、ちょっと変わってきたんじゃないですか？

浅香：そうですね。あの頃のアイドルの曲って、すごく独特なものがあるじゃないですか。10代ならではのキラキラした魅力があるというか。だからこそ、「この歳になって歌うのは、どうなんだろう？」という思いが、正直最初、私の中にもなかったわけではないんですけど、時代とか年齢って、実はあんまり関係ないのかなって、最近はすごく感じるようになって。やっぱり、何歳になっても「C-Girl」は「C-Girl」だし、「セシル」は「セシル」なんですよね。その曲を歌っていたときの自分に戻れるような感覚があるというか。きっとそれは聴いてくれる人たちも同じで、そういう不思議な力、魔法みたいなものが、当時の曲にはあるような気がするんです。

ーーいわゆる「懐かしさ」ではなく、もっと普遍的な「輝き」や「瑞々しさ」が、楽曲自体に宿っているという。

浅香：そうかもしれないです。そう、最近ファンになってくれた人――特に若い人たちの中には、もともと私のことを知らなくて、たまたま「C-Girl」を聴いて、誰が歌っているのか調べて、私のことを知ってくれたっていう人もいて。今はそういう時代じゃないですか。どの時代の曲も、好きなときに聴けるような時代というか。

ーーそうですね。今はネットで昔の曲も新しい曲も、全部フラットに聴くことができて。「何でこの曲知っているの？」っていう曲を知っている若い人たちも結構多いですし。

浅香：そういう意味で、私は……自分で言うのも何ですけど、すごく曲に恵まれていると思っていて。良い曲がホントにたくさんあるんですよね。だからこそ、新しい世代の人たちにも、是非一度聴いてみてもらいたいです。あと、私はデビューした頃からずっと、歌詞の世界をすごく大事にしていて。“私はそう思わないな”っていう言葉は、絶対歌わないようにしていたんです。こういう言葉使いはしないなっと思ったら、その部分の歌詞を変えてもらったり、それぐらい言葉にこだわったものを歌ってきたので、そういうところも気にしてもらえたら嬉しいです。昭和ならではというか、古き良き時代の言葉が、たくさん入っていて。今の若い人たちが聴いたら、逆に新鮮なところも、きっとあるんじゃないかなっと思うんですよね。

■リリース情報
浅香唯
『YUI ASAKA LIVE 2020〜Happy Birthday 35th Anniversary【完全生産限定3枚組BOX（Blu−ray＋2CD＋フォト・ブックレット）】』
2021年6月23日（水）発売
￥11,000（税込）／WPZL-90243/5

＜収録内容＞
01.Melody（12thシングル/1988年11月2日発売）
02.7days Girl（8thアルバム『Nude Songs』収録曲／1990年2月28日発売）
03.ヤッパシ…H！ （3thシングル／1986年1月21日発売）
04.ボーイフレンドをつくろう（18thシングル／1990年6月6日発売）
05.NIGHT DANCER（13 thシングルのカップリング曲／1990年1月25日発売）
06.TRUE LOVE（13thシングル／1989年1月25日発売）
07.10月のクリスマス（5thシングル／1986年9月21日発売）
08.笑顔の私（25th シングル／2005年12月16日発売）
09.ひとり（22thシングル／1993年2月24日発売）
10.セシル（11thシングル／1988年8月18日発売）
11.LIGHT A SHINE～月はずっと見ている（35周年記念新曲／2020年9月9日配信）
12.Believe Again（9thシングル／1988年1月27日発売）
13.C-Girl（10thシングル／1988年4月20日発売）
                
＜アンコール＞                
14.愛の元気主義（15 thシングルのカップリング曲／1989年7月5日発売）
15.コンプレックスBANZAI?（4thシングル／1986年5月21日発売）

＜ファンクラブ限定配信曲＞              
16.夏少女（デビューシングル／1985年6月21日発売）
17.ありがとう（30周年記念曲／『浅香唯 30周年記念コンプリートBOX収録曲/2015年6月17日発売）
                
＜スペシャル・ボーナストラック＞               
18.Remember（風間三姉妹のシングル／1987年10月14日発売）
19.GOAL（3rdアルバム『Rainbow』収録曲／1987年9月23日発売）

■関連リンク
・浅香唯オフィシャルサイト：http://www.yui-asaka.com/
・浅香唯ワーナーオフィシャルサイト：https://wmg.jp/asakayui/
・浅香唯公式インスタグラム：https://www.instagram.com/yui_asaka_official/

＜YouTube生配信情報＞
6月23日（水）19:00～　
Blu-ray発売記念　浅香唯You Tubeチャンネルにて生配信トークライブ
URL：https://www.youtube.com/channel/UCBtCv7mmR9_yrLoDumDuUMQ

■イベント情報
タワーレコード新宿店にて浅香唯ライヴ衣装展示＆パネル展決定！
【期間】6/22(火) ~ 7/4(日)
【場所】タワーレコード新宿店
【詳細】https://wmg.jp/asakayui/news/86418/