声優 宮野真守、ファンと築き上げたYouTubeでの活動スタイル これまでの経験が生んだ独自の表現とは
コロナ禍にはステイホームの流れに対応する様々な動きが生まれた。配信ライブにスポットライトがあたったことや、サブスクリプション型の配信サイトが大きくフィーチャーされたことも、その流れによるものだろう。それに加え、多くの芸能人がYouTubeチャンネルを開設し、自宅でのんびりと過ごす視聴者に向けて様々なコンテンツを提供していったことも忘れてはいけない。
それは声優シーンのなかでも同様。花江夏樹、木村良平、梶裕貴、杉田智和、白井悠介、ベテランでは井上和彦など、多くの男性声優が自身のチャンネルを持ち、ファンと積極的にコミュニケーションを取っていた。
そんな男性声優たちの中でも、宮野真守のYouTubeでの活動に注目。宮野と他の男性声優らとのチャンネルでは一体何が違うのだろうか。
そもそも宮野のYouTube自体、2015年10月末に開設されている。他のアーティストチャンネル同様、ミュージックビデオやライブ映像などをアップしてきており、いわば一般的な使い方をされてきたわけだ。
変化があったのは2020年6月30日に配信された「【#0】動画配信、はじめました。【宮野真守 Road to LIVING!】」から。実際は『宮野真守 スペシャルライブ2020 in メットライフドーム』が開催されているはずだった6月6日には、Twitter上で「動画配信プログラム」の始動をすでに宣言していたわけだが、「アーティスト宮野真守」と「個人としての宮野真守」というテイストでチャンネルを分けるかと思いきや、これまでと同じ装いで配信が始まったのだ。
「ライブはなくなってしまったけども、ファンといっしょに何か楽しいことしよう」と初回の動画で語った宮野は、早速ファンにむけて動画の企画案やアイデアを募集し、動画内で吟味していく。「動画のネタは本人が考えるもの」というYouTuberらしい活動スタイルは、宮野真守本人のファンファーストなマインドを表した動きだといえよう。
投稿されたアイデアのなかから、動画内で一番最初に言及したASMRとパイナップルを合わせた動画を3つ続けて投稿するあたりからも、この狙いはハッキリと分かるだろう。在宅時間が増えたリスナーにむけたストレッチ動画や、「歌ってみた」動画を意識したひとりカラオケなど、ファンのアイデアを汲み取った配信を続けている。
他の男性声優らが「自身のやりたいこと」をやりきることでファンを楽しませている一方、宮野のYouTubeはそれらとは少し違ったテイストだ。加えて、宮野の全身を映し出し、YouTuberと遜色ない形で収録されているところも注目すべき点。その見せ方は、彼がこれまでに積み上げてきたシンガーとしての活動や、テレビ番組への出演も含めた、ひとりのエンターテイナーとしての表現における経験からによるものではないだろうか。その結果、雅マモルというキャラクターを生み出し、またそれがテレビを通じてお茶の間へと届けられる、逆の流れも生み出している。