Ado、アイナ・ジ・エンド……強い個性とインパクト備えた女性ボーカルが台頭 昨今のトレンドを探る

 近年、Uruやmiletに代表される、高い歌唱力と心地いい声の響きを併せ持つシンガーが広く支持されてきた女性ボーカルシーン。しかし、2020年以降、より強い個性とインパクトを備えた女性ボーカリストが台頭してきている。それは、男性ボーカルに見られる“包容力・優しさ”というトレンドとは対照的だ。それぞれの傾向や特性にスポットを当ててみよう。

Ado「踊」
Ado「踊」

 2020年10月23日に配信リリースされたメジャーデビュー曲「うっせぇわ」が各種チャートを席巻し、一躍脚光を浴びたAdo。サビの〈うっせぇわ〉〈あなたが思うより健康です〉などの刺激的なフレーズが強烈なシャウトをもって次々と投げかけられ、間髪入れずに突き刺さってくる。それは、ゴツッとした剛球のようなパンチ力で、一度聴けば忘れられない中毒性を放つ。さらに、新曲「踊」では、ラテンフレイバーのリズミックなトラックを背景に、地声とファルセットのコントラストをより際立たせ、多彩な歌唱を披露。彼女の表現は、自分自身の存在証明のようでもあり、聴き手を代弁する叫びとも言える。

【Ado】うっせぇわ
【Ado】踊

 BiSHのメンバーとしても活動するアイナ・ジ・エンドは、2月、自ら全曲の作詞作曲を手がけた1stアルバム『THE END』でソロ活動を本格始動。3月には1st EP『内緒』をリリースし、そのハスキーな歌声で振り幅のある表情を見せている。シティポップ風ナンバー「彼と私の本棚」では、かすれがかった高音に愛らしさを覗かせ、テレビ東京系ドラマ『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』のオープニングテーマに起用された「誰誰誰」では、ラウドなサウンドを凌ぐまでの鬼気迫るダイナミズムで圧倒。キュートな天使にも、エキセントリックな悪魔にも姿を変える規格外ボーカリストであり、底知れぬポテンシャルを秘める。

アイナ・ジ・エンド - 彼と私の本棚 [Official Music Video]
アイナ・ジ・エンド - 誰誰誰 [Official Music Video] / TVドラマ「アノニマス 〜警視庁“指殺人”対策室〜」OPテーマ

 ブルースをルーツに持つシンガーソングライター&ギタリストのReiは、2020年に専門学校 モード学園(東京・大阪・名古屋)のTVCM「SEKAI MODE」篇CM楽曲として「What Do You Want?」がオンエアされたことでも話題に。ジャズインストバンド・SOIL&“PIMP”SESSIONSとのコラボ(「Lonely Dance Club(w/ SOIL& ”PIMP”SESSIONS)」)の経験もある実力派だ。線の細いシャープな声質を特徴とし、幼少期から親しんできた、ギター及びブラックミュージック仕込みのリズム感は、孤高の域。グルーヴィーで伸びやかなボーカリゼーションは、ブルージーな演奏に鮮やかに映え、確固たる存在感を示している。

Rei - “What Do You Want?” (Official Music Video)

 2020年後半頃から2021年にかけての、こうした女性ボーカリストの潮流の先駆けになったと思われるのが、LiSA。2019年の「紅蓮華」のヒットに端を発した現在の活躍ぶりは、誰もが知るところだろう。ストレートでポジティブなメッセージをパワフルに歌い上げるその姿は、スカッとする爽快感があり、閉塞感のあるこの時代にも符合したのではないだろうか。それと同時に、「女性シンガーが自分の感情や伝えたいことを思うままに作品にぶつけて、発信していく」というムードやストリームが、LiSA以降、構築されたと考えられる。

LiSA - 紅蓮華 / THE FIRST TAKE

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